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22話 謝罪


 「やったか! 」

 「いいえ、まだですわ! 」


 その声は———


 「セレーネ、居たのか! 」


 危なかった。

 謎空間で危険な魔法を使ったら巻き込んでしまう可能性は高かった。


 だから、無事で良かった。

 髪も服もびしゃびしゃで、無事とは言い難いが、まぁ怪我も無いしやっぱ無事、無事ったら無事、大丈夫!


 「ええ、ですがそれどころじゃないですわよ、私既に囲まれてますの。唐突に水が噴き出て屋根まで登ってきた連中は流されましたけど。」


 口元を隠しながらセレーネは辺りをキョロキョロと見回した。


 確かに衛兵らしき人間が大勢いる。

 幸い俺の魔法に委縮して動けない様だが。

 

 「セレーネ、今はこの状況をなんとかしよう。」


 「ですわね。最も、私に出来る事はもうないでしょうけど……」


 瞳を伏せて、そう零すセレーネ。


 「らしくないぜセレーネ、公開処刑は怖かったか? 」


 俺ならちびっちまいそうなぐらい怖いだろうな。


 「ええ、ウェットパークで置いてかれた時は割とマジでヘコみましたわよ。」


 セレーネの額に青筋が浮かんでいる。


 本当に悪いことをした、謝ろう。


 「セレーネ、ごめん。完全に120パーセント俺が悪い。」


 非の打ち所しかなかった。


 「あっさり謝るんですのね。」

 「まぁな、こういうのは引きずりたくないし。」


 それを聞くと、セレーネはニカッと笑った。


 「まっ、王都を抜け出せたら許してあげますわ。」


 「そうか……なら、その時はお前に言いたい事がある。聞いてくれるか? 」


 ウェットタウンで問われた質問の答え、今なら言える気がするんだ。


 するとセレーネは顔を赤くして、無言でコクリと頷いた。

 

 これでもう憂う事はない。

 気兼ねなく最後の戦いに挑めるぜ!




 「待たせて悪かったな」


 「ふふっ、私は男女の語らいに水を刺す様な、無粋な女ではございませんわ」


 言いながら、ピスティは屋根上の氷像に視線を向けていた。


 「そうかよ、で、兵士さん等はどうした? どっか行ったみたいだけど……」

 

 「彼等なら暇を取らせましたわ、貴方相手じゃあんなのものの数にもなりませんもの。」


 命は粗末にするものではないですからね、刺し違えられるなら別ですが。———なんて怖い呟きの後に、俺とピスティの最終局面は始まった。




 セレーネが俺の背に隠れている以上、俺は動けない。


 謎空間での戦闘で、殴り合いに勝ち目が無い事は分かってる。


 ———なら、奴を近づけさせちゃダメだ。 


 「ヴォルカニックスピア! 」


 炎槍を放つ。

 それは轟音を上げながらピスティに迫るが———


 「来ると分かってるものに、そうそう当たりやしませんよ。」


 ピスティはそれを難なく躱した。


 「クソっ、ならこれでどうだ! 」


 ヴォルカニックスピアを加工魔法で三又の槍にする。

 これで多少は当たり易くなった筈だ。


 ———そして、それを三本同時投射だ!


 空気をチリチリと焦がしながら進化した炎槍は放たれた!


 「ふふっ、手緩い! 」


 にこやかな笑みを浮かべたピスティは、体操選手を思わせる華麗な動きで三又の炎槍、その全てを躱した。


 「そんなのアリですの!? 」


 セレーネが俺の後ろで驚愕の声を上げた。


 「それはシュレイドさんに一番言うべき言葉だと思いますけど……」


 言われてみればその通り、ピスティの言葉に俺はぐうの音も出なかった。


 なんて納得している場合じゃねぇ、もうピスティの拳が届く間合いに入っている。


 ———だが、掴みや関節技はまだ打てる距離じゃない!


 「今こそ解き放つぜ、俺の魔王スキルに眠る超絶の魔法を! 」


 もう余裕は無い、切り札の一つ、ゴーズフレアを使う!


 火系魔法の頂、ゴーズフレア。

 端的に言うとめっちゃ強い火が出る魔法だ。


 そのめっちゃが本当にはちゃめちゃで、その効果範囲は帯状に半径1キロ、そして火力も鉄を一瞬で溶かす程高く、そして消えずらい。


 適当な場所で打つと森は砂漠るし、街は滅ぶ。


 魔法が発動し、紅蓮の炎が全てを焼き尽くす。


 これでピスティは丸焦げだ!———な訳がないんだろ?


 「ヴォルカニックスピア! 」


 セレーネにギリギリ当たらない場所を狙って炎槍を放つ。


 「ビャア! な、何ですのいきなり!? 」

 「あれ、違った? ピスティいない? 」


 杞憂だったか、杞憂ヴォルカニックスピア。


 「俺のシナリオだと、ゴーズフレアを掻い潜ったピスティが、俺が庇うセレーネの居る俺の後ろに回り込んで攻撃を仕掛けてくる筈だったんだが……」


 「作戦の殺意が高すぎますわよ……」




 目の前を見ると、真っ黒に焦げて顔も性別も分からない焼死体と、炎に包まれた王都があるだけだった。


 ———ピスティは倒した。

 だが、俺はその事実を認識するよりも前に、目の前の光景に全てを奪われていた。


 これ、俺がやったのか……

 吐き気がした。

 その理由は、人を殺した罪悪感か、それとも煙の匂いか———

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