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心残り

作者: 草薙香里

「…お前の髪、ふわふわだな」


「もう触れなくなるかと思うと寂しいな」


「また遊ぼうって言われても、気軽に呑みに行ったり出来なくなるし」


「カット始めるよ」


「お前は髪の毛長く伸ばしてから一気に短く切るから、毎回アルパカの毛を刈るってこんな感じなのかなって思って切ってたよ」


「酷い?そんな事無いだろ」


「今日は長さを揃えるだけでいいんだね」


「ん、じゃあカット始めるね」


「俺達、社会人になってまた会えるとは思わなかったよな」


「学生の頃、お前なんて言われてたか知ってた?」


「姫だぜ」


「いや、オタサーの姫とかじゃ無く」


「ふわふわの髪の毛…くせっ毛なんだよな。それがお姫様みたいだったから姫って呼ばれてたんだよ」


「特に痛い意味は無いんだ。ただみんなの憧れの姫っていう意味」


「成績も優秀だったしさ」


「本当にケチ付ける所が無かったんだ」


「まあ、その容姿と、男共にちやほやされていたから、女友達は少なかったみたいだけど」


「今でも連絡取ってる女友達いる?」


「そっか、良かった。居るんだ」


「ちょっと心配してたんだぞ俺」


「男友達は?」


「あんまり居ないのか…。まあみんな家庭持ち始めてるから、連絡取りにくいよな」


「カットこの辺で。シャンプー台に移動してくれる?」


「お湯、かけるよ」


「ああ、この店のシャンプー良い香りだよな。俺も好き」


「だが入手先は店長しか知らないんだ」


「わざわざ容器まで詰め替えてご苦労な事だよな」


「毎回思ってたんだけど、こんだけお湯かけてるのにあんまりぺちゃんこにならないんだよな」


「どこまで凄いんだお前のくせ毛」


「家族皆そうなの?」


「お母さんだけ…か。逆にお前のお母さん見てみたいわ」


「パーマいらずで助かってる?前向きなお母さんだな」


「お前、ここ、十円ハゲ出来かけてるから気を付けたほうがいいぞ」


「いや、心配しなくてもまだ大丈夫。今からストレス減らしていけばハゲない」


「はい、髪の毛まとめるよ」


「じゃ、さっきの席に戻って」


「ドライヤーの前に、ちょっと頭に薬品かけるよ」


「これもいい香り?匂いフェチなのお前」


「うん、俺も嫌いじゃないけど」


「肩揉むよ」


「凄い凝ってるね…今一番忙しいもんね」


「いい感じにいきそう?」


「そっか、楽しみにしてるから」


「首も凝ってる。まあ大体肩凝ってたら首も凝るよね」


「ここどう?痛い?ここは眼精疲労のツボ」


「目、ちゃんと休めてよ。ここは?」


「痛いのか。ここは睡眠不足のツボ。本番でクマ作ってたら恥ずかしいぞ」


「マッサージ終わり」


「じゃ、ドライヤーで乾かしてくね」


「ここの店のドライヤーは風量が凄いけど、音も凄いんだよなあ…」


「会話聞こえる?」


「そうだよね、鏡に映ってる口が動いてるから何か喋ってるってわかる程度だよね」


「…愛してる」


「ううん、何でもない。明日は晴れかなって」


「またふわふわが凄いことになってきた」


「ストレートパーマかける気無いの?」


「そっか一度やってみたんだ。どうだった?」


「…駄目だったか。流石にそこまで強いと太刀打ち出来ないんだな」


「くせ毛恐るべし」


「でも簡単に乾いて良いよな。そこは羨ましい」


「いや、男がくるくるだと髪型限られてくるから大変だけど」


「はい、乾いたよ。鏡持って」


「後ろはこうなってる。どう?」


「オッケーだね。じゃあ、仕上げするね」


「飛び出してる毛を切って…」


「スプレーかけるよ」


「いつもお前はスプレーの時目、つぶるよな」


「小動物みたいで可愛い」


「はい完成」


「どう?満足?」


「ん、じゃあお会計ね」


「ん?外で手振ってる人いるけど、お前の知り合い?」


「はい、確かに。お釣りこれね」


「ああ、あれが噂の」


「ありがとうございました」


「結婚式楽しみにしてる」


「幸せになってね」

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