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8   まさかの魔術?(1)

 

 リリアンは生徒会室に近づくのを止めた。

 これでお茶もお菓子も、美味しい物は何も出てこなくなる。

 兄には「もう生徒会室に参りません」と告げた。兄はゲンナリした顔をしたが、リリアンの噂を聞いているので了解してくれた。


 茶葉は同じだけど、わたしはお茶のプロよ。高校生などしなくても、もう働ける資格を持っているので、高校を辞めてしまうのも手だと思っている。

 ただ、両親が高校くらいは出ておきなさいと言うので、高校に通っているだけだ。

 授業のギリギリに登校して、すぐに帰宅をする。放課の時間は教室から出て、アウローラと会わない場所に移動する。


 ここ数日は穏やかに暮らしている。

 家に植えられたハーブの世話をして、美味しいお茶を作るために配合を考える。

 自宅用の常備薬が切れていたので、解熱用のお茶や腹痛のお茶、痛み止めのお茶、下痢止めのお茶を作っているうちに、心臓の薬、腎臓の薬・・・薬局ができそうなほど、いろんな薬を作ってみる。せっかく身につけた技術だから、忘れないように練習するのも大切だ。

 せっかく時間ができたので、調合室にこもって薬を作っていく。


「リリアン」

「お兄様、お帰りなさい」

「そんなに薬を作ってどうするつもりだ?」

「病院に寄付でもしましょうか?」

「学校を辞めるつもりなのか?」

「辞めてもいいわ。毎日、アウローラの嫌がらせと変な噂の中で過ごすくらいなら、自宅でお店を始めてもいいし、師匠のところで働かせてもらってもいいと思うの。せっかく医療茶葉認定医の資格を持っているもの」


 ワンピースに白衣を羽織って、リリアンは薬を袋に入れる。


「殿下が寂しがっていたよ」

「アウローラはいたでしょう」

「ああ、鬱陶しいほど殿下にべったりだ」

「殿下は嫌がっていないのでしょう?」

「ああ、確かに嫌がってはいないな」

「婚約破棄されてもいいのよ。わたし資格を持っているし、自立できるわ。瞳の色や髪の色で結婚相手を決めるなんて時代錯誤よ。好きな人と一緒になる方が幸せだと思うのよ」

「リリアンは殿下の事を好きではないのか?」

「お慕いしておりましたけど、今の殿下に魅力は感じません。婚約者の前でアウローラにへばりつかれている殿下は、紳士的ではありません」


 屋敷の呼び鈴が鳴り、使用人が表に出て行く。

 ガヤガヤと外がやかましい。

 侍女が駆け込んでくる。


「殿下がおいでになりました。リリアン様にお会いになりたいと」

「わたしは眠ったとおっしゃって」

「リリアン、会って来なさい。なにか急用かもしれないだろう」

「お兄様もいらっしゃいますか?」

「僕は行かなくてもいいだろう。リリアンと殿下は婚約をしているのだから」

「では、わたしは寝たとおっしゃって」

「リリアン、こっちに来なさい」


 兄が手を掴んで、階段を降りていく。

 応接室をノックして、兄が扉を開けた。そのまま部屋の中に押し込まれる。兄は扉を閉めて出て行った。


「この頃は顔が見られなくて、寂しかったんだ」

「殿下の隣にはアウローラがいたのではありませんか?」

「ああ、いたが。リリアンのお茶が飲めなくて」

「お茶でしたら、今淹れて参ります」


 リリアンはソファーに座る前に、部屋から出て行こうとすると、慌てた殿下が突然立ち上がり、リリアンの手を握った。


「どうか、少し一緒にいてくれないか?」


 手を引かれて、ソファーに座る。


「薬を作っていたのか?」

「はい。わたしは医療茶葉認定医ですので、薬を作れます。定期的に練習をしなければ忘れてしまうと大変ですので」

「高校を辞めてしまうのか?」

「殿下はどうして欲しいですか?」

「一緒に高校生活を送って欲しい」

「アウローラがいるのに?殿下は欲張りですね。わたしはハーレムには入りませんので」

「リリアンが好きなんだ」

「それなのに、アウローラと過ごしていらっしゃるのですか?」

「僕にもわからないんだ。とても不安で」

「不安なのですか?」

「あの子が側に来ると頭がぼんやりしてしまう」

「お兄様!」


 扉が開いて兄が入ってきた。


「アウローラの家庭調査はしてありますか?」

「いや、していない」

「王立図書室の文献では漆黒の髪と瞳は魔女だと言われています。魔術などかけられてはいませんか?魔方陣とかありませんか?」

「描くならどこに描くだろう」

「生徒会室ですね。絨毯の下とか?」

「明日の朝、確認しよう」


 二人は相談して、シェルの顔をよく見ると、目の下に隈が3匹ほど居座っていた。


「お兄様、少しお相手をお願いします。お茶を淹れて参ります」

「ああ、頼むよ」





 はて、これは黒魔術でも行われているのかしら?

 殿下は目の下に隈を3匹ほど飼っていらっしゃったということは、眠れていないと思われる。ベースはカモミールに少しだけ眠くなる茶葉を加えて、精神安定の茶葉も投入。


「殿下、今夜は我が家に泊まっていかれますか?」

「この頃ずっと、眠れなくてね」

「眠るまで、お話をしていましょう」


 殿下にだけお茶を淹れて、その間に、使用人にベッドの用意をしてもらう。


「美味しいお茶だ」

「ゆっくりお飲みください」


 殿下はカップを口に運ぶと、ゆったりと飲む。


「おかわりももらえるか?」

「ええ、どうぞ」


 ポットの中のお茶をすべてカップに注ぎ込むと、殿下は美味しそうに飲み干した。


「お部屋に参りましょうか」


 左右に分かれて、殿下の手を取り、部屋まで送ると、兄が着替えを手伝いベッドに横にさせる。

 着替える最中は、わたしは部屋の外で待つ。


「リリアン」

「はい」


 扉を開けて、ベッドの横に椅子を置いて手を握る。


「いつから不安だったのですか?」

「彼女が来てからだ」

「気付かなくて申し訳ございません」

「いや、グラナードは悪くはない。いつも世話になっている。親友なのに・・・」


 殿下は目を閉じて眠った。

 手を離して、掛け布団を掛ける。

 静かに部屋の外に出る。


「お兄様、馬車を帰してください。あと数日お預かりすることは可能でしょうか?」

「今から王宮に出向いてくる。国王様に殿下の状態を説明してくる」

「お願いします。かけられた魔術から遠ざけてみましょう」


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 全体的に文書のセンスが、、、 好きゲージっていう言い方も気になる
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