4 お金が木の葉になる問題
「父上、長老が転生したアウローラに殺されました」
「なんだと!」
「生徒会室にアウローラが訊ねてきたのです。それで長老に相談しようと思い訪ねたら、長老ではなくアウローラがおりました。小さな子供も一緒に転生したようです。子供の相手をさせたら死んだと」
「転生の魔術も自分で行ったと言っておりました」
グラナードも口添えする。
リリアンは、部屋の中にいるが、ずっと黙っている。
「魔女は死なぬのか?」
「わかりません。村人はおりませんでした」
「調査をしてみよう」
「お願いします」
扉がノックされ、側近が出た。
「陛下、町から遣いの騎士が来ております」
「入れ」
騎士が一人入り、国王の前で跪いた。
「また商店のお金が木の葉に変わる事件が頻発しております。商店の店主が、店じまいしなければと泣きついております」
「またか」
秋祭りの時も、ドレス店の店主が泣きついてきた。
伝票を調べたらアウローラに、シェルがデザインしたドレスを発送したことがわかった。
犯人は、またアウローラだろう。
木の葉をお金に見せかけることくらい、何の悪気もなくやってみせるだろう。
「アウローラですね」
シェルが国王に訊く。
「以前の時もアウローラしか犯人になり得なかった。さて、どうするか」
「火で焼いても残っていた魔女だ。長老が殺された今、どうやって殺そうか?」
国王の側近が、難しい顔をする。
「町中で被害が出ております。洋服店や貴金属店、食料品はほぼ毎日のように。このままでは経営が難しくなる店も出て、経済が不安定になります」
「山に食べ物がなくなった熊と同じではないでしょうか?食べるために木の葉をお金変えて、買い物して食事を食べる」
シェルがぽつりと口にした。
「だからといって、お金を与えて済むことでもない。相手は魔術を使う。人を操り、罪を犯しても罪だとは思っていないだろう」
「・・・・・・そうですね」
「しばらく好きなようにさせて、暗殺するのはどうでしょう」
側近の一人が声を上げた。
「一週間様子を見よう」
国王陛下は判断した。騎士が頭を下げて、出て行った。
「シェル、グラナード、リリアン。気になるだろうが、近づくな」
「はい」
三人で返事をすると、陛下は部屋から出て行った。
「僕たちが太刀打ちできる相手ではない」
「また操られたら、今度は魔術を解いてくれる長老はいない」
「怖いですね」
リリアンは転生をして今、こうして生きている。
人生を生き直している。
間違いを起こさないように気をつけながら。
アウローラは、変わらないのだろうか?
お金があったら、おとなしく暮らしてくれるのだろうか?
訊いてみたいが、また呪いをかけられたら、やはり怖い。
背中の痣はまだ残っている。剣に鞘が付いていたから生きているが、鞘が抜かれていたら、今度こそ死んでいた。
「殿下、今日は妹を連れて帰ります。殿下はできるだけ一人にならないように、お過ごしください」
「リリアンを頼む」
グラナードは微笑み、リリアンの肩を少し押すと、殿下の腕の中に包まれた。
「殿下」
「リリアンは僕の婚約者だ。僕が学園を卒業したら、お嫁に来ないか?」
「殿下」
「返事はすぐでなくていい」
「はい」
そっと拘束を解かれ、リリアンは兄の元に戻された。
頭の中で花が咲き乱れる。
斬首刑にされて、人生をやり直し、婚約破棄されてもいいと思っていたが、殿下はわたしを妻にと思ってくださる。
婚約破棄はしなくていいのでしょうか?
ずっと医師として生きていてもいいと思っていたのに・・・・・・。
いつの間にか馬車に乗せられ、自宅に戻っていた。
「お嬢様。背中の痣はなかなか消えませんね」
「まだそんなに目立つ?」
「痛むでしょうに」
お風呂に入るとき、背中を洗われ、「いたたあ」と声を上げる。
鞘が付いていて本当に良かった。
心臓のちょうど後ろあたりだし、一刺しで死んでいたかもしれない。




