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4   国王と老婆

 

「長老、体に不自由をしていないか?」

「いつもリリアンさんが、様子を見に来てくださいます」

「そうか」


 部屋には国王陛下と国王の側近、王子殿下と騎士、ツールスハイト公爵と兄とリリアンと老婆がいる。老婆の付き人が老婆の隣に一人座った。

 側近は国王陛下と王子殿下を守るように左右に並び、老婆の近くにも騎士が控えている。


「孫は禁術を使い、この国を乗っ取ろうと考えています。孫を宥めましたが、この老いぼれは、村にはいらぬと数人の付き人をつけて村から追い出されました」


 老婆は背中を丸めて、ずっと頭を下げている。


「先日、村が変な焼け方をしていたようだが」

「私が焼きました。屋敷の中にリリアンと特殊文字で書かれた人型を見つけました。足に釘が刺されておりました。呪いの一種でございます。それを魔術で破棄しました。まだ呪いの品が残っているかもしれないので、すべてを消し去りました。魔術が残っていても消えるでしょう」


 老婆は益々頭を下げる。


「アウローラは、寄宿舎で過ごしておりました。その場所といつも入り浸っていた生徒会室と教室を見ていただくことはできますか?」


 恭しく兄が声を上げた。


「お役に立てることがあるなら、できる限りさせていただきます」

「長老、頭を上げよ。苦しいであろう」

「・・・・・・はい」


 付き人が老婆を支える。


「せっかくいただいた子爵の名を汚して、申し訳ございません。ザクリナーニネ子爵の名は返上させていただきます」

「まずは、話を聞かせて欲しい」


 国王陛下は老婆を見た。

 老いぼれていても目は、精力を持ち、魔術師特有の漆黒の瞳をしていた。


「我が子、シェルとの子を産んだと言うのは本当か?」

「はい。禁術を使いアウローラは、子を宿し産み落としました」

「まだ幼い子だと思うのだが」

「禁術を使いそちらにおられる王子殿下にそっくりに体を作り替え、アウローラと同じ魔術の力を与えました」

「この国を乗っ取るつもりと聞いたが」

「王子殿下に近づき、結婚を考えているのだと思います。これは私が想像した事ですが、結婚をした後、本物の王子殿下を殺し、我が子を王子にすげ替えるつもりでいたのではないかと・・・・・・」

「なんと恐ろしいことを・・・・・・」


 騎士たちがざわめいた。


「静かに!」


 国王陛下は慎重に聞き出していく。


「アウローラとアウローラの子は失踪した。どこへ向かったかわかるか?」

「見当もつきません。村はすべて焼き払いましたので、行く場所はないかと思います。リリアンさんの術を解いたので、術返しがあったはず。足を傷めているはずなので、それほど遠くへは行ってはいないと思いますが、子が、もしや抱き上げる力があれば、それもわかりません」


 老婆はまた深く頭を下げた。


「アウローラは、私の次に力を持っておりますが、この老いぼれの言うことは聞きません。どうぞ処罰をなさってください」


 国王陛下は頷いた。


「老婆はツールスハイト公爵家で保護して欲しい。アウローラと戦えるのは、この老婆しかいないかもしれない」

「畏まりました」


 父が深く頭を下げる。





 騎士が老婆を背負い、寄宿舎に入り、部屋の中を探ると魔術の品がたくさん出てきた。


「王子殿下とリリアンさんのわら人形とこの国の滅亡を・・・なんと恐ろしい子だろう」


 老婆は部屋の中を探り、人型や呪術の品を集めて、燃やした。机の上で燃やしたのに机には燃やしたかすまで消えてなくなっている。

 生徒会室では王子殿下の札が出てきた。それを燃やすと、シェルは目覚めたように、体をしゃっきりさせた。


「僕はやはり操られていたようだ。急に気分が良くなってきた」


 老婆は頷き、「少し触れても良いですか?」と訊ねた。シェルは頷いた。そっと額に触れ、意

味のわからない言語を口にすると、王子殿下の体から離れた。


「王子殿下への直接な呪術は解けました」

「体が楽になったぞ」

「孫が迷惑をかけました」


 老婆は頭を下げて、また騎士におぶさり、教室に移動する。

 アウローラとリリアンの席を見てもらった。

 リリアンの机の奥に友達ができない魔術がかけられていた。その他にもリリアンの気持ちを不安定にさせ攻撃的にする魔術がかけられていた。

 アウローラの机からは恋愛成就の護符が出てきた。

 アウローラは、心から殿下を好きになってきたのかもしれない。

 長老はすべての魔術の品と護符を燃やし消し去り、学園から邪悪な気配を消し去った。


「お婆さま、大丈夫ですか?」

「歳は取りたくはないな。こんなわずかな事で、疲れてしまう」

「お父様、これ以上はお婆さまの負担になります」


 リリアンは老婆の手首を取り脈拍を診る。


「胸は痛くありませんか?」

「リリアンさん、大丈夫だ。少し疲れただけだ。他はどこを見ればいいかな?」

「今日のところは、これで大丈夫かと思います。どうもありがとうございます」


 殿下は長老に頭を下げた。


「王子殿下に頭を下げさせては、勿体ないことです」


 長老はまた深く頭を下げた。


「馬車まで運んでください。我が家へお連れいたします」


 父が騎士に指示を出した。


「はっ」


 老婆をまた背負い、今度は馬車へとつれて行く。

 老婆はリリアンの家の客間で休んでもらった。長老の家に置いてきた、長老の付き人も迎えに行き、いつもと変わらない生活状態にした。


 長老の家には見張りが付いた。

 戻る場所がなくなったアウローラが、この小さな家に来るかもしれない。


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