5 学校をお休みいたします(2)
はて、今生のわたしは足をなくしてしまうのでしょうか?
首を切り落とされるよりはマシだが・・・・・・。
ズキズキ痛む足は、気を滅入らせる。
体はモリーとメリーが綺麗に拭いてくれたから、ベタベタはしていないが、お風呂に入りたい。髪も洗いたい。
ベッドにずっと横になっているのも退屈だし、モリーに医学書を持ってきてもらって、薬学の勉強をしていても、実際に触れなければ、実験はできない。
扉がノックされ、モリーが部屋に入ってきて、お客様ですと言った。
「リリアン、なんて可哀想なのかしら・・・・・・」
入ってきたのはマリアンヌ先生だった。
「マリアンヌ先生、お願いがあるの。お薬を調合していただけませんか?」
「どんな具合なの?」
「足が痛くて、夜も眠れません。作り置きした痛み止めを飲んでいますが、少し精神安定剤と眠れるようにしていただきたいの」
「ええ、いいわよ」
「食欲はあるのかしら?」
「あまり食べたくはありません。寝ているのでお腹は空きません」
「それはいけないわね。ケーキを作ってきたのよ。お茶を淹れてケーキを食べない?」
「体を動かすと、まだまだ痛くて、起き上がれませんが」
「私が食べさせてあげますわ」
メリーが小さなテーブルを持ってきた。その上でマリアンヌ先生は、バスケットの中からポットを取り出すとお茶の道具をテーブルに並べた。ポットから茶器にお湯が注がれると、いい香りがしてきた。
「カモミールを摘んできたの。新鮮なお花だからいい香りね」
「私のお庭にカモミールを植えましょう」
「少し株分けをしてあげるわ。すぐに増えるから綺麗だし美味しいわよ」
お皿を置くと、その上に切り分けたシフォンケーキを置いてくれた。
「イチゴジャムをこして、ストロベリーソースを作って、マーブルにしてみたの。綺麗よ」
マリアンヌ先生はケーキが見えるように、近づけてくれた。
「綺麗だし、美味しそうな香りがします」
フォークを一つ出して、シフォンケーキを一口大に切り分け、口の中に入れてくれる。
「美味しいわ」
カモミールの花が沈んだところで、カップに注いでくれる。
「少し冷ましましょうね」
「マリアンヌ先生にケーキの作り方を教わりたいです。いつも美味しくて」
「動けるようになったら、教えてあげますよ」
「はい」
マリアンヌ先生はいつも優しい。
こんなに心配してくれるマリアンヌ先生がいたのに、前世のわたしは、殿下に執着して前が見えなくなっていたのかしら?
嫉妬に狂った姿を思い出すと、嫌気が差してくる。
せっかく生まれ変われたのだから、幸せを満喫したい。
だが、この足では、どこまで望みが叶うのだろう?
魔女のアウローラは、復讐が足りなくて、わたしを転生させたのかしら?
歩けなくなり、殿下に捨てられるところを見せたかったのかもしれない。
復讐って、怖いわ。
でも、大丈夫よ。
婚約破棄されても、わたしにはわたしを想ってくれる人がたくさんいることを気付かせてくれた。
醜く斬首刑にされた前世より、ずっとマシだわ。
一生ダンスを踊れなくても、秋祭りに殿下と踊った思い出だけで生きていけそうです。
そっと体をマリアンヌ先生とモリーが起こしてくれて、飲み頃になったお茶を飲ませてくれた。
「おかわりはいるかしら?」
「残っているのなら、もういっぱい飲みたいです」
「モリーさん支えてあげていて」
「はい」
マリアンヌ先生は冷ましておいたお茶を、飲ませてくれる。
そっと寝かされて、リリアンは痛みに目を閉じる。
「リリアンの調合室を借りるわよ」
「はい。鍵はわたしの机の引き出しに入っています」
メリーが引き出しを開けて、鍵を出してきた。
「これでしょうか?」
「そうよ」
「では調合してきます。退屈しのぎに本を持ってきたの」
バスケットの中から小説を出して、手渡してくれる。
「いい子で待っていて」
マリアンヌ先生はわたしの調合室に向かった。




