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3   秋祭り(2)

 

 目映いパーティー会場に入ると、皆がダンスを踊っていた。壁際にはペアのいない者やペアで話している者もいる。

 兄が壇上に上がっている。

 目が合うと、兄は微笑んだ。


「リリアン、やはり美しい」

「ドレスがですか?」

「ドレスもリリアンも美しい。よく似合っていて嬉しい」

「・・・・・・殿下」


 本当は、優しい人だった。前世でも優しい人で、誰にも殿下を渡したくなくて、必死にその手を追いかけて、・・・・・・自滅した。


「もう一度踊ってくれるか?」

「・・・・・・はい」


 殿下の手に手を重ねて、殿下の手が腰を支える。演奏が新しくなり、音楽に合わせて、くるくる回る。

 みんなの輪の中に入り、いつの間にか中心で踊っていた。

 とても気持ちいいし、幸せだ。

 夢なら覚めないで欲しい。

 曲が終わり、礼をする。手を繋いだまま端に寄る。

 誰かが走ってきたかと思ったら、いきなり突き飛ばされて、わたしは転んだ。

 床に倒れて、わたしは顔を上げた。アウローラは恐ろしい眼差しを向けていた。

 漆黒の瞳を見開き、口を歪めて、漆黒の髪は長いまま下ろされている。


「この泥棒猫。恥ずかしくないの?私のシェル様と手を繋ぐなんて、しかもダンスまで踊って」


 まるで過去の自分の姿を見ているようだ。


「リリアン、大丈夫か?」


 床に盛大に転がって、わたしは痛くて動けない。

 そっと起こされるが立ち上がることはできない。


「似合わないのよ。そのドレスを脱ぎなさい」


 確か彼女は子爵令嬢のはず。

 わたしは公爵令嬢よ。あまりに無礼よ。


「アウローラ。君の家は子爵。リリアンは公爵令嬢だ。不敬罪にあたるが、その言葉は訂正するつもりはないのか?」


 殿下が低い声を出した。

 聞いたこともない声だと思ったが、違う。聞いたことはある。前世で私を叱りつけた声だ。


「訂正はしません。私のドレスを駄目にして。私のシェル様を奪った悪党です。死ねば良かったのに」


 兄が壇上から降りてきた。


「リリアン、足を見せて」

「いけません。人前で見せてはツールスハイト公爵家の恥になります」

「起きられるの?」


 リリアンは首を振る。


「痛くて動けません」

「どこが痛むの?」

「右足首です」


 兄が抱き上げようとしたとき、殿下が「僕が連れて行く」と声を出した。

 皆の視線がわたしとアウローラと殿下に向いている。

 殿下はわたしを抱き上げると、「アウローラ来なさい」と命令した。

 兄は生徒会の役員に指示を出して、殿下の後を付いていく。





 医務室に連れて行かれ、医師に診てもらう。


「捻挫だといいが、私の見立てでは骨折に見える。腫れが酷いので病院で検査をしてもらった方がいいだろう。骨折の場合、今の技術では治せないかもしれない」


 わたしは足を固定され、ベッドの上に座っていた。

 治らないかもしれないと言われて、これが落とし穴だったのかと、項垂れる。


「罰があたったのよ。いい気味」


 アウローラは声を上げて笑い出した。


「アウローラ、君を不敬罪と傷害罪で訴える」


 兄が言い放った。


「友人でもないのに、下級の者が上級者に対して名前を言い放つことは、ツールスハイト公爵家としては、許されない。しかもいきなり突き飛ばし怪我を負わせた。リリアンはこのまま歩けない体になるかもしれない」

「訴えればいいわよ。呪ってやるわ」


 アウローラ楽しそうに声を出して笑い続けている。


「やはり君が魔術を使ったのだね?」


 殿下が冷たい眼差しでアウローラを見つめる。


「何の話かしら?」

「生徒会室に魔方陣が見つかった。僕は君を知らない。いつ生徒会室に招いたのかも知らない。君といると、思考が停止する」

「魔方陣なんて知らないわ。殿下との出会いは、運命的だったわ」


 アウローラは目を輝かせて、胸の前で指を組んだ。


「早駆けでいらしたとき、たまたま雨が降ってきて、我が家の扉をノックしたのはシェル様よ。我が家で一晩お泊まりになり、年齢が来たら王立学園へ来るといいと誘ってくださいました」

「社交辞令に決まっておるだろう」

「あの時の家の子か?」


 兄が叫び、殿下は呆れた。


「あの晩、シェル様の血をいただき、血の交換をいたしました」

「した覚えはないが」

「私が勝手にいたしました。私の一族の婚礼の儀式です」

「勝手にされたものに、責任など取る必要はない」

「私かシェル様が生きている限り、この約束は生き続けます」

「気味の悪い奴だ」

「私が死んでも私の一族が生きている限りロタシオン王国に繁栄はありません。いずれ滅びるでしょう」

「この魔女が!」


 殿下は叫んだ。

 アウローラは微笑む。


「だから、王国のためにも私と結婚をいたしましょう。リリアンはもう不自由な身になったのですから」

「殿下、国王様に相談いたしましょう」

「それしかないか」

「アウローラ、逃げ隠れはするな」

「私は寄宿舎におります」


 アウローラはピンク色のドレスに着替えていて、優雅にお辞儀をした。


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