1 今生では彼女が悪役令嬢でしょうか?
どう考えても前世とは違う。メモ帳を捲りながら、わたしは首を傾げる。
アウローラを恨み、貶めることに専念していた前世は、冷静に考えると愚かなことだった。
婚約者を奪われても、わたしには、一人でも生きていける医療茶葉認定医の資格があり、遣り甲斐もあったはずだ。
男で身を滅ぼすなど、あり得ないし、淑女としてあってはならないことだった。
今生では冷静に務めましょう。
三日間眠り続けた殿下は、四日目にやっと目の下の隈もいなくなり、すっきりとした顔を見せた。
「リリアン、世話になった」
「いいえ、わたしは医療茶葉認定医ですので、お加減が悪い殿下を見れば、お世話をするのは当然のことです」
「なんと頼りがいのある婚約者だろう」
あら、婚約者と認めてくれいるのね。
わたしは清々しい笑顔を見せるシェル殿下を見て、久しぶりに素直な気持ちで微笑んだ。
一度は萎んだ好きな気持ちが、また増してくる。
こらこら、好きになったら負けよ。
「秋祭りはそろそろか?」
「そうですね、あと一週間ほどですよ」
「長引いた風邪だった」
詳細は殿下に話してはいない。
兄から殿下と国王陛下には伝えると言っていたが、殿下の反応は如何なものか?
「王宮に戻ってもいいかと思います。体調に異変があったら、呼びつけてくださいませ」
部屋がノックされて、兄が入ってきた。
「起き上がれそうですか?」
「平気だ」
殿下はベッドから降りて立ち上がった。
ふらりとした体を兄が支える。
「まだ目眩がしますか?」
「久しぶりに立ったからだろう。気分はすこぶるいいぞ」
「では着替えをして、ダイニングに向かわれますか?」
「ああ」
「それでは、わたしは退席いたします」
わたしは礼正しくお辞儀をすると、部屋から出て行った。
殿下に召し上がっていただく、滋養のある茶葉を組み合わせ、飲みやすい味に工夫する。
調合した茶葉を持ち、ダイニングに降りていくと、殿下は既にテーブルに着いていた。
「お先に召し上がってください。すぐにお茶を淹れますので」
キッチンに入っていき、お湯を注ぎ、カップも温める。
ワンピースに白衣を羽織ったわたしは、時間を計り茶葉が開いて効果が出た頃に、カップのお湯を捨てて、ダイニングに出て行く。
「殿下、こちらのお茶はお薬ですので、召し上がってくださいね」
「ああ、わかった」
琥珀色の紅茶をカップに注ぎ、殿下の食事の邪魔にならない場所に置いた。
わたしは殿下の横に座ると、侍女が食事を運んでくれる。
「今日も美味しそうね」
「ありがとうございます」
「いただきます」
侍女は微笑むと、キッチンへと戻っていく。
「白衣のリリアンは、いつものリリアンではないように見えるな」
「同じリリアンですよ」
わたしは優しく微笑む。
「リリアン、秋祭りにはダンスを踊ろう」
「はい。楽しみにしています」
食事を終えて、殿下は兄を連れて家臣と共に宮殿に戻っていった。




