冬の蝉。
あの茹だるような季節ではなく、どうして鳴くのか分からなかった。
じゃわじゃわ、ぎぃぎぃ。
みーんみーーーん、みーん。
額から溢れつつある汗を拭う。
「はぁはぁ……はぁはぁ……」
とにかく重い荷物を抱えて歩くこと二時間ほど。
山道に慣れていなかったのが苦痛でしかない。
朝早く……誰とも顔を会わせないように出掛けたというのに。
「こんにちは~」
全く見知らぬ登山客と出会した。
ともあれ挨拶せざるを得ない。
「こんにちは」
至って端的に済ませる。
爽やかさなど、微塵も感じられなかったかもしれないが。
それでも、せいいっぱいの笑顔だったと思いたい。
傍らにより待機して、登山者を優先した。
ただ、翻せば良いだけの話である。
やがて過ぎ去るを待ち、ようやく目的地へと辿り着く。
懐からスコップを取り出した。
柔らかな土を掘り起こすために。
ざく、ざく、ザクと――
「せめて、七日間は保ってくれよ……」
と―― 目立たないように、埋めた。
しばらくして、とある報道番組で。
「身元不明の遺体が発見されました」
――と。
映し出されたモニター。
メッセージから情報から暴露される。
「死後……七日間は経っているというのに……」
得たいの知れない、丸まったサナギのような。
奇妙な塊が……唇を噛み締めていたようだった。
キ――キキキキ、ジャアジャア。
埋められた地中から鳴く声。
幼虫のままで。
軋んだ、骨の溶ける音。
わたし。