表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説の竜装騎士は田舎で普通に暮らしたい ~SSSランク依頼の下請け辞めます!~  作者: タック
第九章 勝負! 日替わりダンジョン弁当!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/129

異界の災害級、ダンジョンを喰らう

 ――これは数十分前の出来事。

 ボリス村ダンジョン七層目。

 エドワードとシャルマ、それと数人のパーティーメンバーがいつものように休憩していた。


「くくく……待ちわびたぞ。今日はついに、この村に来た目的の一つ。我が友の料理を食べられる」


「シャルマさん、友達なら普通に会えばいいんじゃないですか?」


「たわけが……! 余が軽々しく顔を合わせては、勿体ないではないか!」


「えぇ……」


 いつものように隣り合って座り、荷物から弁当を取りだしているシャルマとエドワード。

 今日は普段より、シャルマのテンションが高めだ。


「あの、もしかして弁当を拙僧に買いに行かせていた理由は……」


「ふん! 語るまでもないわ!」


「……恥ずかしくて語れない、の間違いでは。もうさすがに面倒くさいので、直に会いに行っちゃってくださいよ」


「まぁ、其方(そなた)がそこまで言うのなら、そうしてやらないこともない。余がボリス村に来たもう一つの理由も、運命が逸れた(・・・・・・)ようだしな」


「運命が逸れた……?」


 そのとき――地響きがダンジョンを大きく揺らした。

 尋常ではない震動に、エドワードは弁当を落としそうになりながらも周囲を警戒する。


「こ、これはいったい……」


「ちっ、このタイミングか。無粋な奴め」


 逆にシャルマは、まるでこうなるのを知っていたかのように落ち着き払っていた。

 まだ開けていない弁当を惜しみながら、エドワードに手渡した。


「準備体操を終えてから食べることにする。それまで預かっておけ」


「な、何が起こって……?」


 シャルマ以外のパーティーメンバーも、落ち着き払った様子で武器を構え始めた。


「陛下、援護致します」


「ふん、良きに計らえ。デイム」


 ダンジョンで見せていた冒険者の顔とは違い、全員が何か一国を背負っているかのような気迫。

 シャルマを中心に、訓練された隊列が作られていく。


「来るぞ……!」


 その前方斜め上、ダンジョンの天井が轟音と共に砕けた。

 どんな攻撃でも砕けないとされるダンジョンが、砕かれるという異常事態。

 この世界の常識的にありえない。

 過去に起きた、例外を除いては――


「あ、アレはまさか……」


 エドワードは幼い頃の記憶がフラッシュバックしていた。

 人間はおろか建物すら一飲みできそうな巨大なワームの体躯、口内の至る所から生えているギザギザの鋭い歯、ゴツゴツした土色の皮膚に見える一本線の傷、そしてもっともたる特徴は――どんな壁でも囓って己が身とする能力。


「そうだ。冒険者エドワード――いや、追放されし法国の王子エドワードよ。アレは以前、其方の法国を襲った“異界の災害級・ダンジョンイーター”だ。まったく、普段は的中しない未来視が当たってしまうとは」


「シャルマ……あなたは……。いえ、貴方様はもしかして……」


「法国の王子エドワード、其方に勅命を下す。ここから全力で生き延びて、このことを我が友エルムに伝えてこい。――まぁ、余が倒してしまって無駄足になると思うがな」


「は、はい!」


「ああ、それと……余の名前は伝えなくていい。エルムのことだ。立場など関係なく世界を救ってしまうような――大馬鹿者だからなッ!」


 戦闘が始まった。

 ダンジョンの広い通路を、ダンジョンイーターの巨躯が這いずる。

 シャルマが飛び込み、その手に持つ斬鉄剣を振るうも、異常な強度の皮膚に弾かれてしまう。

 そのまま、他のパーティーメンバーの一人が無慈悲に一飲みにされる。


「くっ、拙僧は自らの役目を……!」


 勝てない戦いだと悟ったエドワードは、ダンジョンを共に冒険してきた仲間たちに背を向けた。

 逃げるという意思ではない。

 仲間達が託してくれた、エルムへの連絡のために苦渋の決断なのだ。

 本当ならヒーラーとして今すぐにでも戦闘に加わりたい。

 しかし、それでも反対側にある転移陣の出口まで向かうことを選択した。


「戻るまで無事でいてください、シャルマさん……!」


 背後からダンジョンイーターの射出された牙が飛んできて、エドワードの肩を抉ったが、痛みに耐えながらそのまま走った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の評価欄☆☆☆☆☆をポチッと押して
★★★★★にしてくれると応援になります!

いつも読みに来て頂き、ありがとうございます!

「ブックマークに追加」も便利なのでオススメです!



【新作です! タイトルを押すと飛べます!】
『星渡りの傭兵は闘争を求める』



【書籍情報】
j0jdiq0hi0dkci8b0ekeecm4sga_101e_xc_1df_
『伝説の竜装騎士は田舎で普通に暮らしたい ~SSSランク依頼の下請け辞めます!~』カドカワBOOKS様書籍紹介ページ
エルムたちの海でのバカンスや、可愛いひなワイバーン、勇者の隠された過去など7万字くらい大幅加筆修正されています。
二巻、発売中です。
ガンガンONLINEで連載中のコミカライズは、単行本四巻が10月12日発売です。
よろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ