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伝説の竜装騎士は田舎で普通に暮らしたい ~SSSランク依頼の下請け辞めます!~  作者: タック
第五章 ようこそ! ダンジョンのある村へ!

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低ランク冒険者たち、Fランクの竜装騎士をパーティーに入れてしまう

 ボリス村に冒険者パーティー第一号がやってきた。

 Dランク聖騎士のガイ、Dランク女魔術師のオルガ、Fランク戦士のマシュー。

 三人は村に到着するなり、のどかさに驚いていた。


 リーダーの聖騎士ガイが、重鎧をカチャカチャ震わせながら怒りの声をあげた。


「おいおいおい、なんだこの村は。Sランク防具がドロップするダンジョンがあるって聞いてきたのに、ただの田舎くせぇ辺境村じゃねーかよ!」


 それに同意する女魔術師オルガは、ローブに包まれた大きな胸をプルプル揺らしながら頷いた。


「そーねぇ。そんなすごいダンジョンなら、今まで知られてなかったのもおかしいし……。やっぱ騙されたんじゃないのぉ?」


「くそっ、おいマシュー! てめぇのせいだぞ!

 実家と取引していた、信用できる商人からの情報とかホラ吹きやがってよぉ!!」


 ガイとオルガの目が、一人の気弱そうな少年に向けられた。

 彼はマシュー。

 短い金髪で、チェーンメイルを装備した、まだあどけない13歳。

 小さな身体をビクリと萎縮させながら、謝罪の言葉を絞り出す。


「ご、ごめんなさい! ごめんなさい!

 でも、あの商人さんは嘘を吐くような人じゃないし、持っていたSランク武器も素晴らしくて……」


「あぁ!? 黙れ、口答えするな!

 テメェみてぇなFランクのザコを入れてやってるだけ感謝しろボケッ!!」


 聖騎士ガイの平手打ちが、マシューの顔面に当たった。

 マシューはヨタヨタとよろけるが、声をあげずに我慢した。

 これは特別なことではない。

 普段からこうなのだ。

 マシューは、逃げずに踏ん張り続ければ、きっとわかり合えるという人の善性を信じていた。


「もー、ガイ~。マシューなんて叩いても時間の無駄よ。疲れたし、さっさと宿屋でも探しましょうよぉ」


「おぉ、そうだな。オルガ。宿屋でしっぽりと……」


「はいはい。とりあえず、ご飯も食べたい~。

 こんな田舎でも食べ物くらいはマシなのがあるでしょ」


 パーティーは、村の唯一の宿屋であるウリコの店へと向かったのであった。




 ウリコの酒場──。

 部屋を取って、テーブルに座る三人。

 なぜか神妙な顔で、口数が減っていた。


「……なぁ、オレの見間違いかもしれないが、畑仕事してるゴーレムがいなかったか?」


「アタシもそれ気になってた……。

 しかも、村人の中にやたら高そうな装備を持ってる奴らも……」


 この村の異様さに少しずつ気が付いてきたのだ。

 内心、もしかしたら本当に、とてつもないダンジョンがあるのでは……と考える程に。

 しかし、マシューへの謝罪はしない。

 本人たちは、殴るのも別に悪い事ではない、むしろ愛のムチに感謝しろとか思っているのである。

 古典的なクズ人間。


「お、ダンジョンの攻略法とか書いてある張り紙があるぜ? うさんくせぇなぁ」


 ガイは掲示板に貼られていたエルム式攻略法を発見するも、疑いを持っていた。

 普通、飯の種となるようなダンジョン攻略情報なんて、ライバルである冒険者に無料で開示したりしないからだ。

 情報屋から買うか、ギルドで共有するものである。

 だが、署名に気が付いた。


「……げっ、勇者がこれを作ったって本当かよ!? すげぇな……」


 本当はエルムが作成したのだが、冒険者へのネームバリューが強いのは勇者なので署名をしてもらったのだ。

 エルムの名前は隠してある。


「こ、こりゃSランク装備のお宝は、本当に本当かもしれないぜ……へへ……。

 どうやらお荷物Fランク戦士がいて、いまいち活躍できなかったこのパーティーにも、やっと運が回ってきたらしいぜ」


「でもぉ~、ヒーラーいなくて大丈夫? アタシ、攻撃魔術しか使う気ないしぃ」


 このパーティーはバランスが悪い。

 盾役である聖騎士のガイ、遠距離アタッカーである女魔術師のオルガ、近距離アタッカーである戦士のマシュー。


 実はオルガは回復魔術が使えず、回復手段がないのだ。

 短期戦ならともかく、ダンジョンの1階層はそれなりに複数回の戦闘が行われるため、ヒーラーか回復薬の類を仕入れなければいけない。


「そうだな……ヒーラーでもパーティーに誘いたいところだが……。

 どこかに手っ取り早く、外見でヒーラーとわかる奴がいれば──お!?」


 ガイの目に、ひとりの人物が映った。

 金属杖のようなものを持つ、紫色の法衣を着た男。


「あら、イケメン」


「おい、オルガ……。チッ、まぁいい。

 アイツをパーティーに誘ってみるか。

 おい! おい! そこのお前!」


 ガイの声に反応した法衣の男。


「俺か?」


「ったく、お前以外にいるかよ。察しろよ。

 でさぁ、オレたちのパーティーに入れてやるよ?」


「パーティー……? ああ、そうか。冒険者がきたのか」


「ん? 後衛職のテメェも冒険者だろう?」


 法衣の男は、少しだけ考えたような仕草をしたあとに、にっこりと柔和な笑みを見せた。


「うん、まだこっちの大陸に出てきたばかりでね。Fランクだと思う」


「かーっ、Fランクかよー。ハズレか~!

 こっちは新進気鋭のDランク二人と、お荷物のFランク戦士のパーティーだ。

 で……回復魔術は使えるのか? 初級のヒーリングくらいはいけるよな?」


「大丈夫だ、問題なく使える」


「じゃあ、それだけでいいから、オレたちのパーティーに入れよ。

 寄生で美味しい思いをさせてやるからさぁ?」


「そうだな、とても興味がある。

 俺は竜装騎士のエルムだ。

 よろこんでパーティーに入れさせてもらおう」


「竜装騎士? 聞いたことのない職だな?

 ま、いっか。回復役なんて脇役だ、それなりに空気としてがんばってくれればいいぜ」


 法衣の男──エルムは、ガイたちのパーティーに加入した。

 ガイとオルガは気が付いていなかったのだが、帝都にある老舗武器屋の息子であるマシューだけは感じ取っていた。

 その手に握られているのはただの杖ではなく、人間業では作れないような槍だと。

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【書籍情報】
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『伝説の竜装騎士は田舎で普通に暮らしたい ~SSSランク依頼の下請け辞めます!~』カドカワBOOKS様書籍紹介ページ
エルムたちの海でのバカンスや、可愛いひなワイバーン、勇者の隠された過去など7万字くらい大幅加筆修正されています。
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