エルムVS赤の決闘士サンドラ2
エルムはふと思った。
タイマン最強のサンドラが、エルムの状況ならどうするか。
数百年前の会話が思い出される。
『なぁ、サンドラ。どうしてお前はそんなに強いんだ?』
『ハハハ、エルム殿。突然どうしたというのだ』
『いや、いつもすごい戦いっぷりだな……と。たぶん俺が戦っても、勝てるかどうかわからない』
『それは謙遜しすぎだぞ、エルム殿。さすがにエルム殿が全力を出せば私は負けるだろう。だが、たしかに状況を限定したなら、私が勝つだろう』
『もし、サンドラのような強敵と限定された状況で戦ったら、どうしたら良いと思う?』
サンドラは、大切にしている赤い帽子を取りながらニヤリと笑った。
『それは〝思い切り〟だろうな』
『えっ?』
サンドラは帽子をエルムの方に投げ捨てた。
大切な帽子だと知っていたのでエルムは受け取ったのだが、サンドラはその隙にレイピアを突き付けていた。
『他の勝負形式と違って、私が得意とするタイマンというのは、目の前の一人を倒せば勝ちだ。何をしても、何を失ってもこの一戦だけ絶対に勝つ……そういう気概でやってみるのだな』
『は、ははは……。俺にできるかな……』
『できるさ。エルム殿は、きっといつか世界を救う救世主になる器だと私は思っているからな』
『買いかぶりすぎだろ……』
『ふふ、それは後々の時代が証明してくれるさ。この赤の決闘士サンドラの眼が正しかった――とな』
懐かしい、あの凜々しい横顔。
エルムはそれを鮮明に思い出して、リアルタイムで目の前にいるサンドラの偽物を見据える。
「そうだったよな、サンドラ。お前にそこまで言われてしまったエルムという男は、この程度で諦めちゃいけないよな」
エルムは覚悟を決めた。
失敗したら、精神世界といえど負けたら永遠に閉じ込められてしまう可能性がある。
それでも、サンドラの想いを受け継いだ者として進まなければならない。
彼の者が唱えるは――使い慣れた極大火魔法。
「詠唱破棄――極大火魔法〝煉獄〟!」
『お兄さん、もうそれは試したでしょう! 無理ですよ!』
「いや、まだこれはやっていないだろう……。自らの身体に放つ……!!」
『なっ!?』
信じられないことに、エルムは自分に向かって煉獄を撃ったのだ。
当然のように全身が炎に包まれてしまう。
『そんな……諦めて自滅するなんて信じられません……。お兄さんがそんなことをするはずは……。いや、まさか!?』
「範囲を広くしてもダメージが通らず、一点集中させても回避される――」
炎に包まれたエルムは苦しげながらも、戦意を失わずにいた。
「それなら! 俺自身が極大魔法をまとって!」
レイピアを素早く突き出してきたサンドラ。
エルムはわざと貫かれながら、サンドラを両手でがっしりと掴んだ。
「俺自身が極大魔法となればいい!!」
さすがのサンドラも避けようがなく、極大魔法の炎に焼かれて跡形もなく消滅した。
『ず、随分と思い切った手を使いましたね……お兄さん……』
「ブレイス、お前も知っているだろう? サンドラならこれくらいやりかねない。それを思い出しただけさ」
極大魔術を解除したエルムは満身創痍だが、それでも勝ちは勝ちだ。
このメチャクチャな戦いはサンドラに捧げることにした。
いつか、まだ寿命的に生きているハーフエルフのサンドラへの土産話にしようと思った。





