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伝説の竜装騎士は田舎で普通に暮らしたい ~SSSランク依頼の下請け辞めます!~  作者: タック@コミカライズ2本連載中
第十章 六百年の憧れ

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エルムVS青の人魚アナスン2

 エルムは一か八かの賭に出た。

 両手を前に突き出して、魔法ではなく、直接的な魔力だけを放つ。


(くっ、うまくいかない)


 一度目は振動が現れるも、水に阻まれてダメージを与えられるようなものではなかった。

 すぐにそれをフィードバックして調整する。

 魔力自体は水に影響することはわかったので、次は水を抵抗としてではなく、水を味方に付けるためにコントロールする。


(水は敵ではない……味方だ……むしろ自分の手の延長線上にあると考えた方が良い……)


 手の平から小さな渦が生まれた。

 そのキッカケをイメージして、増幅、調整を超高速で繰り返す。

 それは普通の魔術師なら数十年、それだけに費やして辿り着くような境地だろう。

 エルムの秘められていた天才的センスと、暴力的なまでの魔力で、強引にそれを実戦に耐えうる極地へと導いていく。


(水禍よ、いけ!!)


 魔力の流れは、巨大な水流となってアナスンを飲み込んだ。

 それは海底の砂をも飲み込んで、周囲の視界を奪うほどだった。


『土壇場でやりますねぇ、お兄さん。でも――』


 どこかから聞こえてくるブレイスの声は、余裕が見え隠れしていた。


『モンスターならこれで十分に倒せたでしょう。しかし、アナスンは最強の人魚です。これくらいの水流では全く効きません』


 ブレイスの言うとおりだった。

 アナスンは多少体勢を崩して、視界を奪われていたが、ダメージ自体は食らってはいない。

 エルムが放った一撃は攻撃にすらなっていなかったのだ。

 ――しかし、それでよかった。


(俺は攻撃として放ったんじゃないからな!)


 アナスンの視覚をすり抜けて、エルムはその場から移動していた。


『おや、お兄さん。空気を吸いに海上へ移動しましたか……? いや、違う!? なぜ海底の方へ移動しているんですか!?』


 エルムは答えだと言わんばかりに、海底にある巨岩に魔力を注ぎ込んだ。

 そして、水を操ったときと同じ原理で、巨岩をアナスンに向けて大砲のように放った。


『もしかして、最初は目くらまし!? 本命はアナスンが苦手とする土属性の攻撃ですか……!?』

(アナには悪いが、その通りだ)


 アナスンは巨岩に潰されて、その幻影は霧散した。


「ふぅ、もう青モードなしで水の中はこりごりだな」


 エルムは心底面倒そうな表情だった。

 どうやらアナスンを倒したことで、息ができる陸地にステージが変化したようだ。


「たぶんアナはまだ現代でも生きてるだろうし、今度会ったらこれを土産話にでもするか」


 そう言いながら、エルムは次の戦いに備えるのであった。

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【書籍情報】
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『伝説の竜装騎士は田舎で普通に暮らしたい ~SSSランク依頼の下請け辞めます!~』カドカワBOOKS様書籍紹介ページ
エルムたちの海でのバカンスや、可愛いひなワイバーン、勇者の隠された過去など7万字くらい大幅加筆修正されています。
二巻、発売中です。
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よろしくお願いします。
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