幕間 竜装騎士VS極小の災害級モンスター
再び新しい書き方を試してみました。
今度は大ベテラン作家さんのスケジュールを真似てみたのですが、かなり執筆が捗りました。
ただ出力された文章は完全に客観的に見ることができないので不安……!
〝それ〟は帝国の宰相ガヴィルのコレクションの一つが流出した物だった。
黄色がかった半透明の物体――琥珀。
樹液と同時に宝石としても有名である。
とある魔術師はその琥珀を入手したのだが、琥珀自体には興味がなく、目的は中身だった。
封じ込められていた古代の〝それ〟は、何か力あるモノの血を吸っているかもしれない。
クヌピと名付けられた〝それ〟を研究し始めたのだが――その後、魔術師は行方不明となった。
***
ここはボリス村。
いつもと変わらない平和な日常が続いていた。
エルムも畑仕事を終えて、充実した気分で帰り道を歩いていたのだが――
「え”る”む”ざぁ”~ん”!!」
背後からウリコの半泣きの声が聞こえて、振り返った。
「うおっ!?」
「蚊に刺されちゃいましたぁぁぁ~~~」
エルムは、ウリコの顔を見て驚いた。
蚊に刺されて赤く膨れあがっていたからだ。
それもまんべんなく。
「ど、どれだけ蚊に刺されたんだ……それ……」
「いや~、村育ちなんで蚊くらいどうってことないや~と放置してたら、今年の蚊はパワフルすぎてですね……。さすがに痒すぎて仕事に差し支えるので、何か良いお薬とかありませんか?」
「あ、ああ。簡単なものを作るから待っててくれ……」
丁度エルムは〝緑〟モードだったので、そのまま痒みや腫れを抑える薬を調合し始めた。
見た目のインパクトはある。しかし、実際の症状はただの蚊による虫刺されのようだ。
普通に出回っている薬の効果を少し高めた物で問題はないと判断した。
「うちの酒場のお客さんも刺されている人が多いんですよ~」
「災難だな……」
「それでロリオバちゃんに蚊を倒してくれって言ったんですけど『建物の壁も吹き飛ぶが良いのであるか? わはは~!』とか言っちゃって~! もう、刺されない体質だからってノンキですよ~!」
「ははは……。さすがに蚊くらいで建物の壁を吹き飛ばすとかはありえないだろう。蚊くらいで」
「も~、エルムさんまで! 蚊のうっとうしさを実際に経験すればわかりますよ!」
その後もウリコの愚痴を聞きながら、薬を完成させるのであった。
***
その夜、エルムは家のベッドで眠りにつこうとしていた。
しかし、部屋の中に複数の気配を感じる。
同じく寝ようとしていたはずの子竜が声をかけてきた。
「エルム~。なんだか今日は蚊が多いね」
「ああ、ウリコも言っていたな……」
「ボクもウリコのヒロインらしからぬ顔面を見たかったな~。一生ネタにしてやるのに~」
「ははは、それはさすがに可哀想だ。さてと、それじゃあ夜も遅いし……おやすみ」
「おやすみ、エルムぅ」
本当は睡眠すら必要ないエルムの身体だが、精神的に安定するために夜は擬似的に寝ることにしている。
寝付きは良い方なので、目をつぶるとすぐにでも――
『プゥゥゥ…………ン』
羽音が聞こえた。
エルムは気にしないようにして目をつぶり続ける。
根気強く待てば眠気が襲ってくるはず――
『プゥゥ……ン』
羽音……はギリギリ我慢できたが、肌に体当たりしてきてビクッとなってしまう。
どうやら血を吸おうとしているようだ。
しかし、エルムの身体から血を吸うことはできない。
加護の効果もあるし、そもそも普通の人間の身体よりは神霊のような作りになっているため、蚊程度では無理なのだ。
それはバハムート十三世も同様であり、蚊など無意味で――
「……んぁぁぁああ!! うざったーい!!」
子竜は大きな姿に変身して、その長い尻尾で蚊をはたき落とそうとした。
当然、サイズ的に蚊だけではなく、部屋の壁もろとも吹き飛ばしていた。
鳴り響く轟音、もくもくと上がる砂ぼこり。
真顔のエルムと、やってしまったという表情のバハムート十三世の目が合った。
「……さ、さーて。ボクも寝ようかな……」
「……おやすみ」
風通しの良くなった部屋で再びエルムは眠りにつこうとした。
だが、外から蚊が入ってきて、羽音や、ペシペシとアタックしてくる感触が倍増していた。
それでも温厚なエルムは数時間粘った――粘ったあとに、全力のエーテルを漲らせて神槍を握りしめていた。
***
深夜、ボリス村近くの森の中――最凶の災害級〝蚊〟型モンスター〝クヌピ〟は巣を作っていた。
それは蜂の巣サイズに満たない小さなものだが、人間の血からDNAを研究してクローンモンスターを生み出すという恐ろしいラボである。
血を集めるために、ただの蚊たちを操り、世界中に放ったのだ。
時間はかかるが、全人類のクローンモンスターを無限に生み出し、世界を支配するのも時間の問題だろう。
故に、数千年前に神々と戦い、琥珀に封印されていたのだ。
それほど危険な存在が愚かな魔術師によって解き放たれたということは――世界の破滅を意味する。
(まずは人間や動物のクローンモンスター。その後に蚊の針を通せなかった魔族を……人間や動物を使って吸血する。さらに魔族を使って、上位の存在を……ククク。いつか憎き神々にも手が届く――)
世界破滅の序曲を奏で始めたクヌピだったが、何者かの気配を感じたときは既に全てが手遅れだった。
「其は地獄を越え、第一天へ駆け昇る、永久誘う処女の囁きを謳歌する神曲。
至るべきは天動宇宙、白神御座す天国胡蝶。
七つの刻印刻み、金と銀の鍵を以て、大罪清めんペテロ門へと突き進め――」
その極大なる詠唱の意味を知っているクヌピは恐れおののいた。
(そんな!? こっちは完全な偽装でただの蚊と判断されるはず!? 蚊に対して〝コレ〟を放つ奴なぞ存在するはずがない!? 何かがバレていたとでもいうのか!?)
「傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲。
彼の罪人に代祷を、言霊による清めを、神による浄化の炎を!」
(や、止めろ!! 数千年にわたる悲願が! 世界の支配が! 神々の討滅が! 消え――)
「今ここに極大の魔法紡ぎ織りなす――“煉獄”!!」
神槍を構える〝紫〟モードのエルムは火の極大魔法を放つ。
限界まで凝縮された炎の奔流が渦巻き、蚊のコロニーを中心に舞い踊る。
森の局所を焼き払い、地面を赤熱化させながら、最凶の災害級モンスターを消滅させた。
大気がユラユラと熱で揺れ、そこに立つのは寝不足のエルムただ一人だけだった。
「よぉぉ~しぃ、蚊を退治したぞぉ……。これで明日からは安眠できるだろう……」
呆れ顔の子竜がツッコミを入れてくる。
「ただの蚊相手にちょっとやりすぎじゃない~?」
「……実は、ちょっと反省している」
その後――蚊に向かって極大魔法を放ったとして、ウリコから大笑いされるも、結果的には知らないところで世界を救っているのであった。
というわけで、皆様も蚊にはご注意ください。
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『【連載版】追放後の悪役令嬢ですが、暇だったので身体を鍛えて最強になりました』
あらすじ
第二王子トリスに婚約破棄された、悪役令嬢のジョセフィーヌ。
彼女は人里離れた山の中に追放されるが、メチャクチャ暇を持て余していた。
「ま~、これからは自分のために生きてみますわ~」
やる気を無くしていたジョセフィーヌが見つけたのは、落ちていた20kgの鉄球だった。
暇だったので瀕死になるレベルで筋トレすることにした。
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