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恋は虹色orドブ色?  作者: 黒辺あゆみ
第六話 恋はなに色?

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8

本日は二話連投しますので、ご注意ください。

それから由紀は残ったポテトを食べ終えて、ファミレスを出た。

 時刻は昼前、ジリジリとした暑さが押し寄せている。

 出来るだけ日陰を選んで歩きながら家に帰っていると、途中で店の前を通ることになる。

 ――近藤って今、家にいるかな?

 せっかくなので新開会長との話の結果を伝えてあげようと、店の裏にある自宅の方を訪ねてみた。

 由紀は近藤とメールアドレスなどを交換していないので、突撃するしかない。


 ピーンポーン

 インターフォンを押したら、出て来たのは由梨枝だった。

「あら西田さんじゃないの」

由紀を見て、そう言って驚いた顔をした後に告げた。

「弘くんなら、さっき出かけたわよ?」

こちらは近藤に会いに来たともなんとも言っていないのだが、真っ先に言われるというのもどうだろうか。

 いや、確かに近藤に用事だったのだけれども。

 ――なんか、この瞬間が気恥ずかしい……。


「いないならいいです」

居たたまれなくなった由紀は、由梨枝にそう断って立ち去る。

 別に今日でなくても、明後日のバイトで会うだろし、その時に話せばいいのだ。

 その後、真っ直ぐに家に帰っていたのだが。

「……暑い」

由紀は途中でバテてしまった。

 季節はお盆を過ぎたというのに、一向に秋の気配はしてこない。

 お盆を過ぎたら少しは涼しくなると近所のおばさんは言っていたのに。

 ――嘘じゃん、全然涼しくないじゃん!

 内心で文句を言っても、涼しくなるわけでもなく。

 暑さにへたれた由紀は、涼を求めて日陰の多い公園に足を踏み入れた。

 いつかも同じ行動をした気がするが、暑さには勝てないのだ。


「あー、少しは涼しい……」

木陰のベンチに座った由紀は、先程自販機で買ったスポーツドリンクを一気に煽り、「プハー」と息を吐く。

「どこかに『どこでもドア』とか売ってないかなぁ」

そうすれば暑い思いをせずに出かけられるのにと、由紀がそんなしょうもない愚痴を垂れ流していると。

「んなところで、なにしてんだよテメェは」

背後から聞き覚えのある声がしたので振り返ると、なんと背後の茂みに座った近藤が猫と遊んでいた。

 いつかと全く同じ構図である。


 ――家にいなくてここにいたのか。

 「なにしてんだ」はこっちのセリフである。

 あちらこそ休みの日にこんなところでなにをしているのか。

 バイク仲間と出かければいいのに、何故に猫と戯れているのだ。

「そっちこそ、暑い中なんでここにいるのさ?」

木陰で日向よりは涼しいとはいえ、冷房の効いている場所の方がより涼しいに決まっている。


「なんでって……」

由紀の疑問に、近藤は一瞬きまり悪そうな顔をしたものの、ボソボソと答えた。

「……おめぇが昨日、母さんにアイツの家の住所を聞いていたから。もしかして行く気かと思ってな。アイツ最近なんかヤバいし、変なことになってるんじゃねぇかって気になって」

それで昼を過ぎたら由紀の家を訪ねてみようと考え、早めに昼食を食べて出かけたところ、猫を見かけたので寄り道していたという。

 ――やっぱりにゃんこ近藤だな。

 暑さよりも猫を選ぶなんて、筋金入りである。

 それとも猫が好んでいるくらいだから、そこの茂みは案外風が通って涼しいのかもしれない。


 それにしても、やはり近藤は気遣い屋だ。

 由紀が勝手にお宅訪問しただけなのだから、放っておけばいいのに。

 こうした近藤の優しさが由紀の心をくすぐり、思わず口元が緩む。

「そっちの予想通り、新開会長の家に行って来たの。いやぁ凄いね、写真の威力って」

そうとだけ告げた由紀は、詳しくは語らないことにした。

 終わったことを蒸し返すのは良くないだろうし、こういうことは本人同士で話すのがいいに決まっている。

 きっと新開会長が気持ちの整理がついた時、自分で語るだろう。


 ただ、新開会長がしばらく一人で考えるから、店には来ないと言っていたとだけ伝える。

「そうか。アイツもいい女なんだから、俺なんかに構っていないで、ちゃんとした相手を見つければいいんだよ」

猫を撫でながらそんなことを言った近藤の顔は、若干ホッとしているようだった。

 ――お節介を焼いてよかった、かな?

 近藤の様子に由紀までホッとしたら喉が渇いたので、スポーツドリンクを一口飲んだ。

 そんな由紀を猫を構いながら見ていた近藤が、尋ねた。

「おめぇ、なんでそんなお節介を焼いたんだ? なんの得にもなりゃしねぇのに」

こちらを真っ直ぐに見る近藤の視線に、由紀はドキリと胸を鳴らす。


「どうしてって……」

『お節介が性分なのよ』

いつもならそう言ってごまかす場面だ。他にもいくらでも言い様はあるし、煙に巻くことだってできるだろう。

 けれどこの時由紀が紡いだ言葉は、別のものだった。

「見える色は、綺麗な方がいいじゃん」

由紀はそう言うと眼鏡を外す。

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