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恋は虹色orドブ色?  作者: 黒辺あゆみ
第五話 地味女と眼鏡とコーヒー

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9

ショッピングモールでの眼鏡ぶん投げられ事件の後、由紀は田島が買って来てくれた百均の伊達眼鏡でとりあえずを危機を脱することができた。

 由紀に眼鏡はマストアイテムだと気付いてくれた近藤はグッジョブである。

 新開会長が投げた眼鏡も近藤が拾ってくれていて、手渡されたのだが、割れたレンズがフレームから外れて散らばっていた。

「あーあ、レンズが綺麗に割れちゃったし」

由紀はそう零すとため息を吐く。


 レンズにそう耐久性のあるものを入れていないので、こうなるのも仕方がない。

 だがフレームは大して傷ついていないので、レンズ部分だけを入れてもらえば使えそうである。

 今時は紫外線やパソコン対策での需要が増えているので、度無し眼鏡でも対応してくれるのだ。

 由紀にとってはありがたい時代である。


「で? もう帰るか?」

フレームだけになった眼鏡を仕舞う由紀に、近藤が聞いてきた。

 けれどせっかくショッピングモールに来ておいて、話だけして帰るのはどうだろうか。

「買い物して帰るかな」

ちょうどサマーセール中なことだし、洗濯し過ぎてよれてしまったTシャツの代わりを買うのもいいだろう。

 意識が買い物に移る由紀に、近藤が呆れた調子で言った。

「おめぇ、メンタル強ぇのな」

「なにが?」

首を傾げる由紀に、横から田島が告げた。


「あんなイジメのようなことをされたら、普通は心が挫けるんじゃねぇの?」

要は「怖いから帰る」と言うかと思ったらしい。

 これに、由紀はヒラヒラと手を振って言葉を返す。

「いや、むしろ挫けて逃げ帰ったのは向こうだし」

面倒な人がいなくなったし、代わりの眼鏡も手に入ったので、由紀としては困ることはなにもない。

 由紀としてはあのドブ色が怖かっただけで、あれさえ見えなくなれば平常通りである。


 それにしても新開会長は捨て台詞を吐いて走り去ったのだが、行動がまんま悪役だ。

 本人はそこのところをどう思っているのだろうか。

 ――後で恥ずかしくなったりして。

「まあ、おめぇが気にしないならいいけどよ」

そう結論付けた近藤も半袖のシャツを買うと言うので、有名な衣類の量販店に直行する。

 近藤も服はお洒落ブランドではないようだと知り、由紀はちょっとだけ安心したりする。


 ちなみに田島はというと、「俺用事があるし、お邪魔虫だし」と言ってフードコートで別れることとなった。

 彼には本当に用事があるのかもしれないが、由紀としては一つだけ言っておきたい。

 断じてこれはデートではない、ついでの買い物だ。

 二人してそれなりのものを買った後は、ついでにお昼まで食べてから帰ることにした。

 近藤と二人でピザ専門店に入って、それぞれ好きなピザを選んで注文する。

 ピザが来るのを待つ間、近藤がふと言った。

「アイツ、おめぇの家を突き止めたみたいだから、気ぃ付けろよ」

アイツというのは、新開会長のことだろう。


 近藤の言うことももっともで、彼女のあの様子だとなにかしらしてきそうだ。

 由紀のメールアドレスを知らない上に家がばれたとなれば、こっそりと嫌がらせをする手段は手紙だろうか。

 だとすると、郵便受けに不幸の手紙くらい入れるとかあるかもしれない。

 由紀の両親がそんなものを見たら、大笑いしそうな気がする。

 ――郵便受けをマメにチェックするか。

 そんな会話をしていると、ピザが運ばれて来た。


「お待たせしましたー」

そう言って店員がテーブルに置いたのは、由紀のはマルゲリータ、近藤のは肉々しいピザだ。

 ――あっちも美味しそうだな。

 由紀はそう思うものの、いつかのアイスクリームの時のような失敗はするまいと考え、黙っていると。

「……欲しいなら一切れ先に取れ」

近藤の方から提案された。


 進められたら受け取るのが礼儀だろう。

「欲しいです、いただきます!」

速攻で返事をして一切れ貰い、お返しに自分のマルゲリータを一切れ渡す。

 シェアを終えたところで、まずはマルゲリータから食べる。

「うん、美味しい!」

「……だな」

近藤も由紀があげたマルゲリータを食べた。

 由紀と違って、あちらは一口だ。

 男子の食べ方は豪快である。

 それから二人で口周りをベタベタにしながら、ピザを美味しく食べた。


 ピザを食べ終えたら、由紀は行き同様に近藤にバイクで自宅マンションの前まで送ってもらう。

「まあ、気ぃ付けろよな」

「そっちこそ、帰りに事故らないように」

そんなことを言い合った後、近藤がバイクで走り去るのを見送った由紀は、誰にともなく言いたくなった。

 繰り返すが、これはデートではない。

 だから通行人は「このリア充め!」という視線を向けるのは止めてもらいたい。


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