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恋は虹色orドブ色?  作者: 黒辺あゆみ
第五話 地味女と眼鏡とコーヒー

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6

「でさぁ、二人はどこに行った? あ、近藤は黙ってろよな」

あの時由紀たちの巡ったコースを尋ねた田島が、なにか言いかけた近藤を片手で制した。

 たぶん以前近藤に聞いても、適当に答えられたのだろう。

「えーっと、私の家まで迎えに来たから、そっから出発して、休憩がてらコンビニに寄りながらチマチマ進んでー。途中のアイスクリームの屋台くらいじゃない? 行きの道で寄ったのって」

「アイス? そんなんあったのか?」

メモ代わりのスマホから、田島が顔を上げる。

 どうやら近藤からの聴取では出てこなかったワードらしい。

 情報収集でいかに近藤が戦力外だったかが窺える。


「可愛いキッチンカーの屋台だったよ、結構お客がいたかな」

「どのあたりだった?」

思い出しながら言う由紀に田島が地図を写したスマホを出すが。

 ――地図の見方がわからん。

 悩む由紀の横から近藤が手を伸ばしてきて、無言で地図を動かしてその場所を示す。

「へぇ、ここかぁ。いつもいるのか曜日で決まっているのか、調べとこう」

田島がとりあえず地図に印を入れた。


 あとはハンバーガーに驚いたことや、お土産を買いに行って試食巡りをしたりしたと話すと、田島は一々頷く。

「よっしゃ、これを参考にプランを練るぜ!」

「まあ、頑張って」

握りこぶしを突き上げる田島に、由紀は一応声援を送る。

「女の前で空回りすんなよ」

近藤はそんな忠告めいたことを言う。

 確かに、田島は愛花の前で舞い上がってしまいそうな雰囲気ではある。

 その気にさせた由紀としては、失敗して心の傷を負われては責任を感じるところなので、もう一つ助言をした。


「バイクってさ、カッコつけなくても乗っているだけでカッコよく見えるから。いつも通りがいいんじゃないの?」

あの強面近藤もヘルメットを被ってバイクに乗れば、そこそこイケメンに見えてしまう不思議現象が起こるのだから。

「……そうか?」

目を瞬かせる田島に、由紀はさらに続ける。

「そうそう。だからいつもツーリングしている風に乗っていればいいんだって」

これに、田島も大きく頷いて近藤を見た。

「なるほど、いつも通りな。確かにコイツに上手く女子を連れまわせるとは思えんしな!」

「ほっとけ」

しかめ面でツッコむ近藤に、由紀は小さく笑う。


 ――いつも通りにしているからこそ、素の表情が見えるっていうのもあるけどね。

 ああして一日近藤と一緒にいて案外気疲れしないというのは、新発見であった。

 きっと愛花も、初めて見る田島の姿を発見することだろう。

「愛花ちゃんも、きっといつもの田島くんを見たいんじゃないの? せいぜいデートを楽しむがいいさ」

きっとあのアイスクリーム屋台のお姉さんやハンバーガー屋の店員さんが、由紀の時同様に「デートを楽しんでくださいね!」と応援してくれることだろう。


 知りたいことを知れた田島が、由紀に向かって手を合わせた。

「マジ神様西田様だ! 土産買ってくるからな!」

「拝むのをやめれ」

田島とそんなことを言い合っていた時。

「……やっぱり、あなただったのね」

女性の低く唸るような声がした。

 由紀は驚いたあまり、肩を跳ねさせて声の方を振り向く。するとそこにいたのは――

「新開、会長?」

「あれって、生徒会長か?」

由紀の呟きに、田島の声が重なる。


新開会長はこちらから二つテーブルを挟んだ位置に仁王立ちしている。

 ――偶然居合わせた、って雰囲気じゃないな。

 由紀と近藤はヤバそうな雰囲気に視線を交わすが、田島がどういうことかわからずに戸惑っているのがわかる。 

「あー、どうしてここに?」

このまま黙っているわけにもいかないと、近藤が口を開く。

 なにせ周囲には他に客がいるのだ。

 こんないかにも「修羅場ってます!」という状況を放置していたらロクなことにならない。

 学校関係者に目撃されるリスクが高くなり、変な噂を流されてしまう。


 近藤の単なる挨拶程度の問いかけに、新開会長が答えた。

「だって弘樹がどこかのマンションの前で、ショッピングモールがどうのって言ってたじゃないの」

とんでもないことを暴露された。

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