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恋は虹色orドブ色?  作者: 黒辺あゆみ
第五話 地味女と眼鏡とコーヒー

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35/50

5

バイクを走らせてショッピングモールに到着すると、二輪用の駐車スペースにバイクを停める。

 そして建物の中に入れば、そこは人ばかりだった。

「平日でこれなら、土日は地獄だなここ」

人ごみにうんざりしながら愚痴る由紀に、近藤が周囲を見渡しながら告げた。

「サマーセールと物産展があってるってよ。だから多いんじゃねぇの?」

なんと、集客イベントのダブルパンチの結果らしい。

 別々に日にちをずらして開催すればいいのに。

 ――というか、こんな日に呼び出した田島を呪おう。

 こんなに人がわんさかいる場所で眼鏡を外したら、絶対に酔うどころではない気がする。

 眼鏡をきっちりかけ直した由紀は、近藤に尋ねる。


「で、どこにいるのよ、その田島くんは?」

「二階のフードコートだ」

 ――フードコートって、二階の端っこじゃんか。

 今いる場所とは真反対の場所を言われ、由紀はげんなりする。

「じっとしてても、むしろ人が増えるだけだぞ」

「へぇい……」

近藤に促され、由紀は渋々歩き出す。

 ガタイの良い近藤を盾にしながら人ごみをすり抜け、フードコートにたどり着いた。

 まだ昼時には早い時間なので、人はあまりいないかと思いきや、買い物途中の休憩をしている人が結構いる。

 アイスクリームやスイーツ系のショップも入っているので、休憩に持って来いなのだ。


 そんな場所で、テーブルに一人座る男子がこちらにブンブンと手を振っているのが見えた。

「なんか、無視して通り過ぎてやりたくならない?」

「……可哀想だからやめてやれ」

ちょっとした悪戯心が疼く由紀だったが、近藤に窘められたので、素直に寄っていく。

「やーやー、わざわざ悪いねお二人さん!」

会って早々テンションが高い田島は笑顔全開で、まさにこの世に春が来たという様子である。

「今日は奢っちゃうよ、俺。なんでも頼んで!」

そんな太っ腹なセリフが飛び出すのも、ハイになっているせいだろう。


 しかし、由紀はここで遠慮なんかしない性質だ。

「そう? なら遠慮なく」

由紀は早速パフェ専門店のカウンターに向かい、一番お高いパフェを頼んだ。

 財布を持った田島はなにか言いたげな顔をしつつも、結局なにも言わずにいる。

「簡単にあんなことを言うからだ、馬鹿が」

そう言う近藤も、具沢山の豪華盛りなホットドックを買っていた。

 こちらも友人に気を使ったりしないらしい。

「お前らさぁ……」

「「ゴチです」」

財布の中身を切なそうに見る田島に、由紀は図らずも近藤と声を揃えて礼を言った。

 今日は「口は禍の元」ということわざが、田島の心に刻まれたことだろう。


 テーブルに三人で座り、田島は水を飲み、由紀は近藤と二人で口をモグモグさせながら、話を促す。

「で? 永野愛花ちゃんを誘うの、成功したって?」

すると項垂れていた田島は、たちまちテンションを蘇らせた。

「そうなんだよ! 勇気出したんだぜ俺も」

それから近藤にざっと聞かされた話を、田島の口から再び聞くことになる。

 同じような内容だったが、「愛花ちゃんがその時どれくらい可愛かったか」がちょいちょい挟まれるので、話が無駄に長い。

「……というわけで、西田に聞きたいわけだ!」

そう田島の話が完結した時には、由紀はパフェを食べ終わっていた。


けれど田島は、由紀に自慢をしたくて呼び出したわけではないらしい。

「愛花ちゃんをバイクに乗せるのに、なんか気を付けてあげた方がいいことってあるか?」

これが聞きたかったのだという。

 自分だと慣れもあり、そういったことが浮かばないとのこと。

 そういった苦情めいたものならば、一つある。

「お尻が痛くならない乗り方を、出発前に教えて欲しかった」

由紀がジトリと視線を向けると、近藤が眉を寄せる。

「……根に持ってんのか。忘れてたんだから仕方ねぇだろうが」

近藤も田島と同じで、慣れのせいで注意すべきことが抜けていたらしい。

 けどこれは、一番抜けてはいけない注意点ではなかろうか。


 あと、服装も長袖長ズボンを要求するなら、かなり事前に伝えておくべきだろう。

 お洒落そうな愛花はきっと服装もこだわりたいに違いない。

 なにせデートなのだから。

「ふんふん」

田島がスマホにメモを取るのを横目に、近藤が由紀を見た。

「おめぇ、着替えにたいして時間かけなかったじゃねぇか」

「だって私はお洒落な服なんて持ってないから、悩みようがない」

女子にもいろいろな人種がいるのである。

 女子皆お洒落族だと思うことなかれ。


「逆に春香ちゃんみたいな人を急に誘うと、きっとすっごくキレられると思うけど」

『そういうのは事前に行っときなさいよね、女子には色々準備があるんだから!』

こんなことを言って相手に噛みつきそうだ。

 由紀の例えに、近藤は「確かに」と頷く。

 愛花のことも、春香くらいのレベルだと考えて行動すると、失敗しないのではなかろうか。

「なるほど、春香ちゃん基準と……」

田島はそんなことまでいちいちメモった後、次の質問にうつる。

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