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恋は虹色orドブ色?  作者: 黒辺あゆみ
第五話 地味女と眼鏡とコーヒー

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34/50

4

「でも、なんでそんなことを私に暴露してんのさ」

由紀がアイスコーヒーにシロップを入れながら尋ねる。

 別にこんなことを言わなくても、「飲みたかったから」で済む話だろうに。

 近藤が眉をひそめて由紀を見た。

「前に、おめぇは話したくないっぽいことを、俺が聞いたから。そういうのって、俺の方も喋らなきゃ平等じゃねぇだろ」

ボソボソと語る近藤に、由紀は目を瞬かせる。


 ――あの時の事、ずっと気にしてたのか。

 言われた由紀は気にしないでいようと思い、さっさと記憶の端に追いやった事なのに。

 聞いた方が気にしているなんて、意外と繊細だ。

 それに由紀からは結局なにも聞きだせていないのに、自分はまるっと暴露してしまうなんて、男前にも程がある。

 近藤の不器用な優しさに触れて、由紀はホンワカした気持ちになりながら、からかいを口にした。

「で? 朝からコーヒーを淹れるくらい、にゃんこ近藤くんはイライラしていたわけだ」

これに、近藤が急に表情を変えてギロリと睨んできた。


「他人事みたいに言うがな、おめぇも関係あるからな」

「は? 私が?」

由紀が一体なにをしたというのか。「わけがわからない」といった顔をする由紀に、近藤が告げた。

「今度の定休日、俺と出かけろ」

「なんでさ」

由紀は速攻ツッコむ。「イライラしている」から「一緒にお出かけ」までの経緯が全く繋がらない。

 近藤が嫌々ながら説明した内容によると、事の起こりはいつか朝から店に来た近藤のバイク仲間の一人に、気になる女子との相性診断をしてやったことだ。

 田島という名前らしい彼は、なんと永野愛花をバイクに乗せる約束をこぎつけたらしい。


「へー、よかったね」

由紀の無感動な相槌に、近藤の視線の圧が増す。

「問題はここからだ」

その田島は、今まで女子と二人きりで出かけたことがないとのこと。

 なのでいざ愛花とデートの約束をしても、具体的にどこでなにをすればいいのか、さっぱりわからないという。

 そんな悩める田島の前で、なんと近藤が由紀と二人で山へツーリングに行ったことを漏らしてしまったらしい。

 女子の意見を求める田島に「ぜひ西田の意見が知りたい」と強請られたのが、今までの話の流れだ。


「なにうっかり話してんのさ」

由紀に事態が飛び火した原因は、明らかに近藤であろう。

 今度は由紀がジロリと睨むと、近藤はすっと視線を逸らす。

 一応自分が悪いという自覚はあるようだ。

 でもそれが「一緒にお出かけ」の理由になるだろうか?

「そんなの、店に来てもらって話せばいいんじゃないの?」

由紀は手っ取り早い解決方法を提示したつもりなのだが、近藤が不機嫌顔で言った。

「出かけた先のどこでなにしたのかを、なんで親の前で言わなきゃならん」

 ――そりゃそうか。

 仮にも女子と出かけた先で、どこへ行っただのなにを食べただの、細かく話すなんて羞恥プレイかもしれない。

「そんなわけだ、今度の定休日は予定を空けておけよ」

「えぇ~……」

というわけで、近藤との二度目のお出かけが決定となった。


定休日の朝。

 由紀が両親が出勤した後、自宅のリビングでくつろいでいると、エントランスからのインターフォンが鳴った。

 モニターを見に行くと、そこにはやる気のなさげな近藤が映っている。

『おら、面倒だからさっさと行くぞ』

「へぇい」

インターフォン越しに急かす近藤に、由紀もやる気のない返事をして、エントランスに降りる。


 由紀たちが今から出かける先は、ここから車で十分ほどの場所にある大型ショッピングモールだ。

「ていうかさ、なんであそこなの?」

エントランスの前にバイクを停めて待つ近藤に会うなり、由紀は文句を言う。

 休みはダラダラする派としては、夏休みで人が多いであろう場所にわざわざ行く意味がわからない。

 これに、近藤はダルそうに答える。

「俺の家と田島の家の、ちょうど真ん中だからだ」

近藤が告げたのは、夏休みだから遊びたいとかのドキドキワクワク的なことではなく、いたって合理的な理由だった。


 それでもなお納得できないのは。

「でもあのショッピングモールなら、私バスに乗って行ったのに」

そう、どうして近藤と一緒に行くのかという事だ。

 涼しいバスに揺られて行き、ショッピングモールのどこかで落ち合うのが最も涼しい方法ではなかろうか。

 そんな由紀の小言をどう捉えたのか。

「どうせ同じ所に行くんだろう、時間と金の手間が省けるじゃねぇか」

そう言って由紀にヘルメットを放り投げて来た。

 この男、こういう所が気い遣い屋である。

「なんでもいいから、早く行くぞ」

「はぁい」

由紀がヘルメットを被り、近藤の後ろにしがみつくと、バイクは出発する。

 その姿を、道の陰から見ている姿があることに、由紀も近藤も気が付かなかった。

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