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恋は虹色orドブ色?  作者: 黒辺あゆみ
第四話 地味女と「ハルカ」

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7

「今の弘兄ぃしか知らなかったらピント来ないかもしれないけど、あの頃はホントにすごかったんだから。なにせ小学生だったアタシに耳にも噂が入ったくらいだし」

春香曰く、当時近藤は学校では教師にも怖がられ、道を歩けば通行人が道を譲ったりと、『ザ・不良!』という様子だったそうだ。

「中学で不良をやってた弘兄ぃを知っている人は、あの頃はギラギラしていて格好良かったって言うんだぁ」

「ほぅ、ギラギラとな」

由紀は面白そうな言葉を聞き、眼鏡の奥の目を輝かせる。


 不良を引退して一年以上経っている近藤に、あれだけ軍団が集るのだ。

 近藤が多くを語らずとも、クラスに集まる近藤軍団の話を聞いていれば、現役時代に結構なヤンチャだったことは想像できる。

 きっとはっちゃけた中学時代を送っていたことだろう。

 不良には当然女子もいるわけで。

 度が過ぎるお転婆な女子たちに、あの強面な近藤はきっとモテたに違いない。

 そして近藤にはいつのまにか、付き合っている相手ができていたという。


 さすがの新開会長も、不良女子まで管理できなかったらしい。

 不良の集まりに突撃するほど無謀ではなかったようだ。

 そんなある程度の距離を保った状態に、ある日変化が起きる。

 近藤の両親が離婚することが決定し、二人は引っ越しのため学校を転校することになったのだ。

「確か、中二の夏頃って聞いたけど」

「そうよ、私は小学六年生だったわ。それにママが離婚したのって、実はアタシのモデルの話がきっかけなの」

当時家族は喧嘩が絶えずにギスギスしており、家の中の雰囲気は最悪だったそうだ。

 そんな家に帰りたくない近藤は自然と夜遊びが増え、悪い仲間ができて、不良と呼ばれるようになったというわけだ。


 小学六年生だった春香も、結構夜遅くまで遊び歩いていたという。

「といっても、せいぜい街灯や照明で明るい表通りをウロウロする程度だけどね」

けれどそこには春香と同じ境遇の子供たちが結構いて、自分だけじゃないという気持ちになれたという。

 そんな時に、春香はモデルにスカウトされたのだそうだ。

 春香がモデルをしたいと言えば、父親は大反対した。

 元々「女は家にいるべし」という古い考え方の人だったらしく、春香にも「恥ずかしい恰好をしてまで稼ぎたいのか」と言って来たという。


「うわぁ……」

由紀は父親の意見になんと言うべきかわからず、ただ呻いた。

「今時読者モデルとか普通にいるのに、そういう言い方って引くよねー」

春香は怒るでもなく、あっさりと告げる。

 彼女の中で、もう整理がついている事なのだろう。

 子供の意見を鼻で笑った夫に怒った由梨枝は、結婚生活に見切りを付けて離婚した。

 当時、近藤が家に帰らず祖父が経営するこの喫茶店に入り浸っていたこともあり、実家に帰ることにしたという。

 それから由梨枝は頑張って調理師免許を取得し、祖父と一緒に喫茶店をやり始めた。


 こうした流れで生活が激変したのだが、当時の春香は両親の離婚による引っ越しで友達と離れる寂しさより、新開会長との縁が切れることにホッとした気持ちの方が、正直大きかったという。

「中学に上がると、またあの人がいるのかと思うと憂鬱でさぁ。だからこれで平和になるとおもったワケ」

それがまさか、兄の進学した高校にいるとは思わなかったらしい。

 本人も言っていたが、近藤は新開会長と成績に大きな開きがあり、しかも不良だったというマイナスイメージもある。

 当然進学先の選択肢だって全く違うはずだった。

 それなのに入学式で新開会長に会ったことを教えられ、春香もずいぶん驚いたそうだ。


 高校でも近藤に気がありそうな女子に、釘を刺しに行っているかはわからない。

 けれど人気者の新開会長がそんなことをすれば噂になるはずで、今のところそういった話は聞かない。

 近藤に群がるのは相変わらず不良グループばかりだし、不良女子になびきそうにない近藤の様子に、安心しているのかもしれない。

 ――それに、私はむしろ新開会長に紹介された形だもんね。

 あの時近藤にプリント持ちを勧められなかったら、たぶんアルバイトなんてしていない。

 新開会長は由紀のことを近藤のクラスメイトだと知らなかったのか。

 少なくとも彼女にとって恋のライバルとして眼中になかったのは間違いないだろう。


 その判断は正しかったのだが、近藤と距離が近づいた途端に敵視してくるのだからたまらない。

 これでは近藤はうかうかと女子に話しかけられない。

 案外近藤の学校での無口っぷりは、新開会長対策でもあるのかもしれない。

 不良だった中学生時代はともかく、小学生の頃はそれなりに苦労があったのだろうか。

 ――にゃんこ近藤だって、普通に恋愛くらいしたいだろうにさ。

 今だってせっかくの夏休みを家の手伝いで費やすなんて、男子高校生としては正しいのかなんなのか。


 ちょっとは青春する余地くらいあっていいのに、新開会長が見張るように店に日参しては、窮屈ではないだろうか。

 ここで、由紀はふと思って尋ねてみた。

「新開会長って、去年の夏休みはどうだったの?」

今年は腰を悪くした祖父のピンチヒッターで店に出ている近藤だが、去年は普通に高校生らしく遊んでいたであろう。その時は、何事もなかったのだろうか?

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