天界
あぁ、惨めだなぁ。いやいや、惨めですとも。あの人に付いていくと決めた時点でこうなる覚悟もできていましたし。今更どうとか言いませんよ。
後悔もするのも無駄だってわかってますしね。だから後悔なんてしてませんの。いや、一つだけ後悔したかな?もう、あの人には会えないのかなぁ
私、絶対もう死んだかなぁ。萃香さんの本気の攻撃を食らってあの高さから落ちたんなら助かりませんよねぇ。まぁ千年も生きたならもう満足ですよ。
あなたの自由。空から見守っていますよ。必ず自由になってください。
「…文。目を、覚ましてくれよ…あやぁ…」
「まだ眠りから覚めないかい…。鼓動はするから生きてはいるんだろうけどねぇ。」
「文…お前だけは失いたくないんだ…頼むから……頼むから目を覚ましてくれよぉ…あやぁ…」
「どうやら今日も目覚めそうもないねぇ。仕方ない、この子はここで寝かせておいて私らは仲間を萃めるかい。」
「…文を置いてくことはできない」
「ここに私の分身を置いておく。それに、疎める能力も使ってるんだしこいつが天魔達にバレることもないさ。だから私らは仲間を萃めるよ。いいかい?」
「わかりました、伊吹萃香さん。」
「私のことは萃香でいい」
「わかりました、萃香さん」
「お硬いねぇ。」
呟きながらも萃香さんは自分の分身を作り上げた。まるで力を半分に割ったように二人の萃香さんから感じる妖力の高さは同じほどでものすごく強力なものだった。
「それじゃあ、まずは天界に行こう。」
「天界で助けを求めるって、もしかして永江衣玖さんのことですか?」
「違う違う。どこぞやのナイトフィーバーやろうではなくて比那名居天子の方を訪ねるのさ」
「あぁ、てんこのところですか」
「てんしな」
「てんこのところですか」
「うん、もうそれでいいや」
萃香さんはどこか諦めたように肩を竦めて天界の方へ向けて飛び立った。
結構前までは天界に行くには妖怪の山の山頂からでしか行けなかったが、今はどこからでも空を飛べば行けるようになっていた。真っ直ぐ、本当にただひたすら真っ直ぐと上へ上へと飛んでいく。萃香さんの能力で僕らの存在は疎めてある。天狗たちにも見つからずに簡単に天界へたどり着くことに成功した。
「さて、たどり着いたねぇ。天界。ここに来るのも久しぶりだし、どうだい?今日は宴会でもするかい?」
「文の様態もやばいし失った仲間がいる中で宴会なんて楽しくもなんともありません。僕のために命を捨ててくれた仲間の為にもこんなところで無駄足はとってられません。」
「はぁー、そこはちゃんとしているねぇ。いいよ、そういうところ好きだよ。だからまぁ、天子を見つけるかい。」
〜博麗神社〜
「…萃香め、どこかへ逃げたなぁ?ったく、天狗二匹の世話は私がしなきゃならないじゃない。」
「おぉ〜い、れいむ〜」
「あら、魔理沙じゃないの。どうしたの?」
「実はな………」
この幻想郷で運命の歯車の最後のピースがはめられた。そんな音が幻想郷に響きわたった。
――聞こえたものは一匹もいなかった。