復活
「文はまだ目を覚まさない、か…」
「まぁ子鬼にやられたから1日そこらでは目は覚まさないと思うけどね。」
「おいてんこ、お前いい加減私を子鬼って言うのやめようか?」
「じゃああんたもてんこって言うのやめなさいよ!」
「ほぉ?やろうってのかい?」
「やってやろうじゃんかよ」
「あ?」
「お?」
「やめろアホ鬼とアホてんこ。ここでやりやっても何も得られないんだから無益な争いはよしてくれや」
ったく、文も目覚めないしてんこ達はすぐ喧嘩になるしこれからどうするんだろうなぁ。……てんこと萃香さんの協力を得られたのは正直これからの戦いを大きく左右する。もしかしたらこのメンツだけでも勝てるかも知れないけど、準備は万全にしとかなきゃだからもう一人、強くて協力な味方が必要になるかな。
「…他に力を貸してくれるとしたら、誰いるかなぁ」
「地底だね。勇儀ならわたし達に喜んで力を貸してくれるさ!天狗と喧嘩できると聞いたら他の鬼どもも助けてくれるさ!」
「ちょっと、もう少し考えなさいよ子鬼。あんたが五年前に起こした百鬼夜行を忘れたの?そんなに鬼が出てきたら間違いなく霊夢とか紫が敵に回るわよ。そうなったら勝てる可能性なんて減っちゃうわよ。」
「まぁそうだなぁ、そうなるわな。勇儀さんに力を借りれれば確かに勝率は格段に上がるだろうけどそれはもう不可能に近いほど無理だからな。」
うーん、どうしたもんかな。天狗を倒すとなれば鬼に力を借りるのが一番早いけど、問題の鬼たちがみんな地底にいるから不可侵条約にも引っかかるし妖怪の賢者にも止められてしまう。そんなことになったら僕らには敗北の二文字しかなくなってしまう。
「うっ…」
「あ、文!?目が覚めたのか!?」
「ぅー…うるさいですよぉ…。」
「あっ、すまん。それより、大丈夫か?」
「大丈夫…とは言い難い…ですねぇ……。ですが…その様子ですと、萃香さんにめ天子さんに力を借りれたみたいですね…。」
「まぁ、なんとかな。それよりも、まだ寝てろ。萃香さんの攻撃くらって体ボロボロなんだぞ?ちゃんと休んで体を治すことに努めなきゃ。」
「いえ、これ以上寝てるわけにはいきません。ここまで来たならあとは天魔を倒すだけです。ですから…もう心配いりませんよ」
…頼むから無理しないでくれよ、言葉には出せなかった。見るからにボロボロになって立つことでさえキツいのにそんな笑顔を見せられて寝てろなんてもう言えない。だから、本当に無理しないでくれ…
「ふふ、天狗もなかなか可愛いわね。初々しいって言った方がいいかしら?」
「ちょっと黙ってくださいね?それ以上言ったら空の彼方まで吹っ飛ばしますよ?てんこさん?」
「ちょっ!あなたまでてんこって言うのやめてよ!私には天子って言う名前があるの!てか、あなたさっきまで私のこと天子って言ってたじゃない!」
「知りません、聞こえません、わっかりーませーっん。」
「このぉ…!」
「落ち着けてんこ。怪我してるんだぞ?お前のせいで文が悪化したら僕は君を許さないよ?」
「…もういいよ」
「あっはっはっ!いじけんなよぉ、てんこぉ。ほれ、酒を飲むぞー!射命丸の復活とてんこの仲間入りを記念して!」
おいおい、てんこの仲間入りはわかるけど文に酒は飲ます気なのか…?病み上がりのやつに、てか現在進行系で怪我負ってる文に酒を飲ますのはまずいだろ…。
「酒飲みは勝手にしててくれ、僕と文は飲まないから」
「あやや?私は飲みますよ?」
「お前、その体で飲んだら怪我の悪化とかあるだろ?頼むからゆっくりと休息をとっててくれ」
「あややぁー?私の心配ですか?天狗は酒豪ですから問題ないですよ?それとも早くに眠った私にイタズラしたいとか?」
「違うし!あぁもう!本気でしんぱいしてやってるのに!もう好きにしてろ!」
「あやや?柊斗行ってしまいましたねぇ?天魔達に見つからないといいんですが。」
「からかいすぎさ、射命丸。まぁ私の能力でわたし達みんなの存在を疎めてるからバレやしないよ。だからほら、早く飲むぞ!」
「はいはい、飲みましょう。ほら、文。あなたも飲みなさい。」
「ありがとうございます。…やっぱり柊斗呼んできますかね?」
「ふふ、あなたってば柊斗にぞっこんねぇ。」
「な!?違いますよ!!三人だけで飲んで柊斗をはぶいたら可哀想と思っただけです!他に思ってることなんてありません!絶対に!」
「わかったわよー」
あははー!と愉快な声が魔法の森へと響き渡る。無論、この音を聴こえるものなど誰一人としていなかった。一匹の鴉天狗を除いて。
「そこまで否定しなくたっていいじゃんかよ…。ここまで聞こえる声で言われるとか、少し傷つく…。」
惨めな鴉天狗の声は魔法の森に響く事なくただ消えていっただけであった。無論、この声を聴こえるものなど誰一人としていなかった。
「…ここは?」
「あら、目覚めたのね。」
「あなたは霊夢さん…。てことはここは博麗神社ですか…。って、私生きてる!?」
「うっさいわねぇ。そこの鴉天狗も生きてるわよ。」
「はたてさん!」
「うぅー…なにー…?あさぁ…?」
「よ、よかったぁ…。もしかして、あなたが助けてくれたんですか?わたし達の事を」
「えぇ、そうわよ。博麗神社で殺しなんてあったら人間が余計に来なくなるじゃない。まったく…」
「…相変わらずですね。」
「うっさい。それよりも、私は貴方達が目を覚ますまでずっと面倒見てたのよ?で、素敵な賽銭箱ならすぐ近くにあるわよ?」
「…今お金もってませんので、後日改めてお礼に参ります。」
「あっそ。」
…私、私達生きてるんだ。きっと柊斗さんも文さんも生きている。
待っていてください。今すぐに貴方達を助けに行きます。ですから、まだ死なないでいてください…。
「何をしておる!?あれからもう1日経つというのに、未だに柊斗の居場所を明かせておらんのか!?」
「も、申し訳ありません!天魔様!今すぐにでも見つけ出して必ずや首を跳ねますがゆえ、もうしばしお待ちくだされ!」
「あら、困っているのね、天魔。」
「ぬ?おぬしは…!」
「柊斗の居場所、教えてあげても良くてよ?」
「ほぉ…そうか。貴様が何を企んでいるかはわからんがまぁよい。教えてくれ」
「えぇ、よろしくてよ。その代わりに……」
「……ふむ、良いだろう。その手に乗った。」
妖怪の山に二つの不気味な嗤い声が混じりあった。
運命は、動き出す。
この『物語』の終幕へと