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6・リサの告白 ~リサ視点~

今回はリサ視点でお送りします

エリアスさんに『騎士さまにお話ししたいことがあるので少し出かけて来ます』と言って私はナース服のまま、外へ飛び出した。右を見ても左を見ても騎士さまの姿はない。


でも、私はエリアスさんから教えてもらった透視する魔法で半径1キロメートルを見た。透視魔法をこんな事に使うのは違うと思うけど、でも、今はそんなことを考えている場合じゃない。


「いた!」


騎士さまを見つけた私は筋肉の細胞を活性化させ強化する魔法で自分の足を強力にして駆ける。寒さなんて関係ない、私はただ全速力で走る。


しばらくすると私は騎士さまを見つけて大声で名前を呼ぶ。すると、私に気づいてくれたみたいで、立ち止まってくれた。そんな、騎士さまに私は自分の思い出した記憶を話そうと伝える。


「騎士さまに大切なお話しがあります」


本当はまず先にエリアスさんに言わないといけないのかもしれないけど、今はまだエリアスに言えない。と言うか言いたくない。言ったらきっと…


「分かった。外は冷えるからどこか店の中で話そうか?」

「いえ、出来れば一目につかないところでお話をしたいのです」


私の異様な空気に気付いた騎士さまは、それなら良い場所があると言ってどこかへ歩き出しました。私の突然のお願いを聞いて下さった騎士さまには申し訳ない。しかも、そんな寒い空の下で話すだなんて相手のことを考えてないよね。


「話すなら、ここが良いだろう」


連れられて来たのは大きな橋の真ん中。もちろん、橋の下には大きな川が流れていて辺りは畑や田んぼしかない。


「ここなら、誰か来てもすぐに分かるし」


安心して話してくれ。そう、騎士さまは仰いました。そして、私はまず記憶が戻ったことを言い、次はゆっくりと自分の過去を騎士さまに話します。




* * *




これは、これは私が生まれた時のお話。

私は親から生まれた人ではなく黒の反逆者によって人工的に造られた人造人間。目を開けた時にはもう既に透明な液体が入った筒の中に白いワンピースを着て入っていて四肢、目鼻口には細い管がどこかに繋がっていた。


「まだ、魔力が少ないんじゃねぇか?」

「そうだな」


外で喋る黒いマントを着た人達の声がよく聞こえる。下卑た笑いに嫉妬、憤怒、そんな暗い感情が彼らを取り巻いていて筒の中にいる私は怖かった。一体、私を何に使うの?そう問いかけようとしても液体の中だから、声は届かない。でも、暫くすると私が知りたかったことが分かった。


「この膨大な魔力が入った人形が完成したら我々のリーダーが操ってリスファリア国の城を攻めるそうだな」

「あぁ。って、その前にこの人形には自我があるのか?」

「人造人間だからあるだろ」

「オレはずっとないと思ってたけど」

「どっちなんだろうな」


ありますよ。ちゃんとあなた達の声も聞こえて自分で考える事も出来る。だから、私をそんなことに使わないで!大声で叫びたいけどこの声は届かない。

そんなある日。


「くそっ!王国の犬めがっ!」

「なんで、ここに来た!」

「逃げろ、まだ、私たちは捕まる訳にはいかない」


外が騒がしい。目を瞑っていた私が目を開けると黒いマントを着た人達は右往左往している。そして、私の目の先にあるドアが開くと黒いマントを着た人達じゃなくて鎧のような服を着た男の人達が勢い良く入ってきた。


もう、そこからは杖から光が伸びて鎧を着た人達を後ろへ飛ばしたり、黒いマントを着た人達が捕まったり。ただ見ていることしかできない私は目を瞑った。でも、それは一瞬の出来事で。


「奴らに渡すな!」

「フィローチェ、頼む!」

「分かった!」


私が入っている筒がフィローチェと呼ばれた人によって叩き壊される。当然、中の水は外にこぼれ、水量がなくなるごとに私も下に降りて行き、管を抜かれフィローチェに抱きかかえられた。


「う…ぁ…」


初めて声を出したのはその時で、話し声と言うか呻き声だった。私を抱きかかえたフィローチェはどこかへ走り出す。その後ろを見ると黒いマントを着た人達が鎧を着た人達に取り押さえられているのが見える。と、同時に鎧を着た男の人達、数名が私たちを追ってきた。


「ぁ…あ」

「うるさい!」


パンッ!

耳をつんざく様な音が響く。そして、私を抱きかかえていたフィローチェが低い呻き声を出すと背中から赤い液体が飛び散った。それが、何かが私には分からないけど、とても痛そう。


「くそっ!仕方が無い『******っ!』」


フィローチェが何かを叫ぶと鎧を着た男の人達は石の様に固まった。その隙にフィローチェは痛そうな顔をしながら走る。でも、フィローチェが走ってきた後ろには背中から流れる赤い液体が白い地面の上に落ちていて。


「まて!」

「逃がさないぞ!」


すぐに鎧を着た男の人達が追って来た。私を抱きかかえるフィローチェの息はもう絶え絶え。それに、走る速さが遅くなって、ついにはその場に倒れた。


「い…たい」


フィローチェが倒れた時、私は目の前に放り投げ出され冷たくて白い地面の上に叩きつけられたけど、そのあと、のろのろと立ち上がってフィローチェの近くに寄る。


「なんだ、お前、話せる上に歩けるのか」


その声と共に遠くの方から野太い声が聞こえた。私にはこの状況が分からない。誰が味方で誰が敵なのか。


「くそっ、ここまでか」

「いた…い…の?」


フィローチェは口から垂れた赤い液体を親指で拭うと不敵に微笑む。


「俺たちの最高傑作を奴らには渡さない」


遠のくの方では誰が何かを叫んでいる。


「あの黒い女も捕らえろ!」

「いや、処分だ」

「排除!」


すると、鎧を着た人達の1人が長ったらしい言葉を喋ると視界には眩しい光に包まれた弾丸のようなものが数個、飛んできた。思わず目を瞑ってしまった私とは違ってフィローチェは何かを喋る。そして、フィローチェの目の前に青い弾丸が現れ鎧を着た人達の方に向かって行く。案の定、お互いにぶつかり合いその衝撃で突風が吹き荒れ私は後ろに飛ばされてしまった。


そこで、私の記憶は途絶えた。しばらくすると私は歩いていた。なぜ歩いているのか、どうしてここにいるのかもわからない。多分、無意識に歩き続けていたんだと思う。


体力も限界に近づき、ついに私は疲労により冷たくて白い地面の上に倒れて眠った。




* * *




ついでに、魔力切れで自分の過去について思い出したと騎士さまに伝えると、神妙な面持ちで私を見てきた。そうだよね、だって私は。


「黒の反逆者に造られた人造人間。本来なら消されるべきの存在なのですから」


自虐的に微笑む。すると、騎士さまは薄く口を開けて『これで、ピースが揃ったか』と言った。何のことだろうか?気になった私は騎士さまに聞こうとすると。


「なぜ、エリアスさんには言わなくてオレに言ったんだ?」

「それは、騎士さまは私と出会ってからずっと私の親族を捜してくれていて、優しい騎士さまですから、このままずっと言わないでいると、ずっと捜してくれます。だから、その、優しい騎士さまを縛りたくはないと言うか、えーと、上手く言えないのですが」


しどろもどろの私に騎士さまは黙って聞いてくれています。そして、次はなぜいの一番にエリアスに言わないのかと聞かれた質問に答えました。


「私が黒の反逆者に造られた人造人間って分かれば、きっと、エリアスさんに嫌われる。ううん、違う。私は」


フィンさんの薬草店に行った時、エリアスさんは黒魔女と言われた私のことを絶対に違うと言ってくれた。だから、その裏切りたくなかったんだ。それに、私はまだエリアスさんの隣に居たかった。でも、私が黒の反逆者に造られた人造人間ってバレたら隣に居られなくなるかもしれないって思って。


「エリアスさんの優しさに甘えてずっとあそこに居ようとしたんだ。卑怯だよね」


ボロボロと涙がこぼれる。声も上ずって自分でも何を言っているのか定かじゃない。


ーーーだから、私は背後にいる人の気配に気づかなかったんだ。


「リサ」


聞き慣れたあの優しい声、でも、今はいないはずなのに、だから聞こえないはずなのに。ねぇ、なんで今ここにいるのですか?


「エリアス…さん」


騎士さまが側にいることも忘れて私はエリアスさんの声がする方を向く。そして、ぎゅっと強く抱きしめられた。



リサは鎧を着た人達とフィローチェとのバトルに巻き込まれ、弾のぶつかり合いの時に生じた衝撃波で記憶を失ったと言うことです

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