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5日目・手探りの中で

リサが診療所『グローニャ』に来てから5日程経った。その頃、リサを助けた騎士はと言うと。


「…はぁ」


リスファリア国の城内にある記録室に1人でいた。記録室と言うのはリスファリア国が創立してから今の今までに起きた事件事故の記録をまとめた書類が保管されている所である。


なぜ、騎士がこんな所にいるのかと言うと、それはリサの親族を探す手掛かりを探しているため。もちろん、仲間の騎士と一緒に聞き込み調査などを行って来た。しかし、そればかりではなく、こうして記録室を漁ったりしている。今のところ、リサについての有力な情報提供者はおらず、先が見えない状況だ。


「行方不明者の記録を探しても見つからない」


現在、騎士はここ最近の行方不明者についての記録を読み漁っている。記録にはどんな微細なことも丁寧に書かれているため、きっとリサの手掛かりになるものが見つかるのでは無いかと考えていたが、そうでもない。


「視点を変えるか」


そう言って次に本棚から取り出したのは、ここ最近の事件事故について。騎士は分厚い資料の塊を何個か持つと机の上に置いて1つ1つ、余すところなく読み漁る。


「あー、懐かしいな」


騎士の目が止まったのは、リスファリア国の北部にあるサーシャン山の洞窟に住まうレッドドラゴンの討伐した記録。この時、騎士は騎士軍の最前列に立ち果敢に戦った。だが、今はこんなのを読んでいる場合じゃないと我に返り、また次のページを捲る。


「ふーむ?」


次の紙には、ここから5キロ離れた場所にあるフェンチェルという田舎町の近くで起きた『黒の反逆者』による事件が書かれてあった。そして、ふと、この事件に自分は関与していないが仲間の2人がこの事件に関わったなと思い出していた。


「確か黒の反逆者討伐だったはず」


仲間から聞いたの内容は、国の諜報部がフェンチェルという田舎町の片隅にある古びた城の中で黒の反逆者の一部が何やら怪しい動きをしているという情報を手に入れた。そして、大勢いる騎士の中から選ばれた数十名達は国の命令で黒の反逆者討伐へと向かったのだ。


簡潔に言うと、黒の反逆者たちはその城で兵器を造っていたらしい。兵器と言うのは爆弾や魔剣などではなく膨大な魔力を詰め込んだ人造人間。しかし、人造人間を造っている最中に不意を突いて騎士達が突撃した為、黒の反逆者達は全員捕まり、その人造人間も処分されるはずだったのだが。


「仲間の一人が人造人間を持ち去り城に火を付け行方をくらました」


報告書の最後にはそう書かれてあった。そして、持ち去った仲間の一人は後日、リスファリア国の騎士、数名により取り押さえられ今は牢獄の中にいるが人造人間はまだ見つかっていない。


その出来事が起きたのは騎士がリサを助ける2日前。


「(いや、不完全な人造人間ならば、言葉をまともには喋らないし。これは、関係ないか)」


そう思って騎士は次のページを捲った。




* * *




リスファリア国の大きな時計塔の針が夕方の6時を指す頃。今日も騎士はエリアスとリサがいる診療所『グローニャ』に向かう。助けた女の子が記憶喪失で膨大な魔力を保持している。正義感が強い騎士は放って置けないのだ。


「失礼する」

「騎士さま、こんばんは」


出迎えてくれたのはミニスカートのナース服に身を包み髪をお団子にしたリサだった。騎士はいつものように入口の近くにある木製の椅子に腰を掛け、薬草を擦っているエリアスに報告する。


「こっちも手掛かりは無くてさ」

「エリアスさん。もう一度、リサに記憶を戻す治療をしたらどうですか?」



なぜか、神妙な顔で黙るエリアスに騎士は首を傾げた。それに、記憶喪失の張本人であるリサは急に目を伏せる。この重い空気はなんなんだと心の中で叫ぶ騎士は空気を変える為、別の話題をふった。


「そう言えば、リサは街では有名人になっているそうだな」

「そうでしょうか?」


苦笑いだか、さっきの伏せた顔よりかは断然良くなったと騎士は思う。空気の流れがある程度、変わった所で騎士は頭を下げて診療所から出て行った。外は真冬の為、雪がちらほらと降っている。


「早く、リサの親族を捜さないと」


エリアスのようにいつも笑顔でいるリサだが、きっと、心の奥では不安や戸惑いがあるだろうと騎士は思う。だから、そこ早くリサの親族を見つけて安心して欲しい。それが、今の騎士の願いだ。


騎士が診療所を出てから数分。もうとっくの昔に診療所は見えなくなっているはずだが、後ろの方から自分の名前を呼ぶ声が聞こえる。振り返ると、そこには手を振り大声で叫びながら駆けてくるリサがいた。


「はぁ…はぁ」

「どうした⁉︎」


息を切らしたリサに騎士は問う。すると、深呼吸をしたリサが騎士の目を真っ直ぐ捉え。


「騎士さまに大切なお話があります」


辺りには人がいて騒がしいはずが、今の騎士の耳にはリサだけの声しか入ってこない。そして、リサのお願いに騎士は頷く。

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