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第6話 超気まずいじゃん


 ああ、気まづい。何を話せばいいんだ。

 静寂な空間で食事の際に出る音しか聞こえない。


「あ、あのさ……料理はどうだ?」


「美味しいよ」


 声ちっさ!

 聞こえづらいわ。

 そもそも貴族ってなんで長方形のテーブルなんだよ。長すぎんだろ。

 いや長方形でも四人か六人で座れるぐらいでいいんだよ。ここのテーブル十人くらい座れるぞ。

 俺は絶対家でパーティーなんてしないぞ。だから正方形でいい。なんなら部屋でひっそり食べたい。

 そうだ。俺がハイネの横に座ればいいんじゃね。

 いや、待て。俺が行ったら見た目が良くないか。


「ハイネ、こっち来るか?」


 食器も木の皿にしたし、投げられても痛くない。いや、痛いか。


「いいの?」


「俺がそっち行こうか?」


「いや、僕が行く!」


 ハイネが立ち上がるとメイド達が急いでハイネの食器を俺から見て右側に置いて行く。

 近くなったハイネとの距離に少しだけ緊張した。

 皿を見るとハイネは緑の野菜を残していた。


「苦手、なのか?」


「だって緑って苦いだろ?」


 えー、そうかなぁ。

 俺は緑の野菜を食べてみる。特に苦くはない。むしろ上手い。お前、今までどんな緑食べて来たんだよ。

 俺はハイネのフォークを手に取り、緑の野菜を口元に持っていく。


「え、いやだ、やだって!」


「わかった。じゃあ、小さくしてやるから。ほら」


 親指の爪くらいにまで小さくしてやった。ハイネは少し頬を赤らめながら口に入れる。


「おい、しい」


「だろ。ほら、口開けろ」


「ちょっ、自分で食べれる!」


 フォークを取られ、ハイネは自分で食べ始めた。近くに立っている執事やメイドが微笑んでいた。

 食後にはケーキが出た。なんでも料理長からのプレゼントらしい。なんも祝い事ないだろ。

 面白いことに俺のケーキはオレンジでハイネのケーキはやや黒味がかった青いケーキだった。

 ハイネのケーキ、なんだその色。食べてみたい。

 というか、これ俺らの瞳の色だよな。どう考えても。祝い事ってあれか、ハイネが外に出たことか。

 あー、納得だわ。

 俺はケーキを掬って口に入れる。

 俺のケーキはやっぱり見た目通り、オレンジの味で酸味と甘味が絶妙で美味しかった。中に少しムースみたいなものが入っていた。掬って食べると、それはなんかとても甘かったが、ほんのり苦味があった。


「……美味しいな」


 ハイネも美味しそうに食べていた。気になる、一口くれ。


「ハイネ、一口くれないか」


「え!?」


 え、って、そんなに嫌なのかよ。


「あー、悪かった。そうだよな。ほら、俺のもやるから」


 人から貰う前に自分のをあげた方がいいよな。妹が良く先に寄越せって言ってたな。

 自分のフォークで掬ったケーキをハイネに向ける。


「お、お前それ」


「上手いから食べろって」


 ほら、と口元に持って行く。早く食べろ。そして俺にも食わせろ。めちゃくちゃ美味そうだ、それ。

 ハイネはさっきより顔を真っ赤にして食べる。


「おいしい」


「だろ、じゃあ俺にもくれ」


 顔をケーキに近づけ口を開ける。ハイネの手ががたがたと震え始めた。え、めっちゃ顔真っ赤じゃん。なんで怒ってるの、なんなんだよ。

 ハイネはゆっくりケーキを掬って俺の口元に持ってくる。

 だが、震えてテーブルの上に落ちそうだった。俺はハイネの手を持ってケーキを口に含む。

 ブルーベリーのような味だった。酸っぱいのにクセになる味だった。

 ハイネが俺に食べられたフォークをじっ、と見つめている。そんなに嫌だったのか、とメイドに新しい物を用意して貰おうと手を挙げたその瞬間。ハイネがフォークだけ食べた。

 は、どういうこと!


「どうされましたか?」


「あ、やっぱなんでもない」


 ハイネは少し嬉しそうにまたケーキを食べ始めた。

 俺は自分のフォークを見る。間接キスで喜んでるのかよ。俺も食べるの緊張するじゃねぇか。やめろよ、まじで。

 俺は気持ちを落ち着かせるために頬杖をついてハイネを見た。


「美味しいか?」


「うん、美味しい。僕、人に食べさせるのも食べさせてもらうのも初めてだから……嬉しかった」


 小さく微笑む顔に俺の心臓が跳ねた気がした。

 心を落ち着かせようと思ったのに結局、何も変わらなかったし、むしろひどくなった。

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