第18話 その破壊力、えぐいってぇ…
ハイネの首に刻んだ俺の歯型が薄くなって来た頃。俺たちの生活はだいぶ変わった気がする。
部屋を一緒にした事で、カーテンを締め切った部屋にいたハイネは開いていても平気になっていた。
窓際に置かれた低めの棚には、あのセンスのない花瓶に花が美しく飾られている。
「ハイネ、起きろ……おーい」
「んんぅ……眩しい」
ここ一週間くらい共にしたことで分かったのだが、ハイネは朝が弱い。よくメイドたちは頑張って起こしていたな、と思うくらいだ。
ハイネの足を曲げて、横抱きにしてベッドの端に移動させる。
こんなに動かしてもまだ目を閉じたままだ。
「体起こすぞー」
足をベッドの外に出し、上体をゆっくり起こす。ベッドから落ちないようにハイネの足の間に片足を入れて、寝着に手をかけ脱がしていく。
「寒い」
「そうだよな、寒いよなぁ」
俺はこの時間が好きだ。とっても楽しい。前世の仕事を思い出す。
楽しいなぁ。
迎え袖をしながらハイネの手を袖から出していく。
「……楽しそうだね」
「楽しいからな」
「ふーん」
ハイネはそっぽを向く。その頬は少しだけ赤かった。照れとはまた違うような……熱かな。
そっと額に手を置いてみる。よく分かんないけど、熱い気がする。目も潤んでいる。
「ハイネ、具合悪いか?」
「ん~、なんか体が……ん~……わかんない」
ハイネは何か分かっているようだった。なんだろ。俺に話せないのか?
まだ言えないことがあるのか。
まあ、そうだよな。
「ごめん……ギルバート、そんな顔しないで」
え、俺、どんな顔してたんだ。
ハイネが俺の頬に手を添える。
「たぶん、ヒートが近いんだと思う」
「……そうか。今日、仕事休もうか」
「ううん、たぶんまだ来ないから大丈夫。だから行ってきて」
「分かった。もし来たら使いを寄越すんだぞ」
うん、と頷くハイネはどこか心ここに在らずだった。だが、甘えたように擦り寄ってきて、俺の着ているものを欲しいというように引っ張ったりしてきた。
「本当に大丈夫か?」
「うん」
本当なんだろうな!?
大丈夫そうに見えないけど!?
朝食は部屋で摂り、俺はハイネの様子を心配しつつも時間が来てしまう。俺は、後ろ髪を引かれつつも仕事へ向かった。
「それ、巣作りしたいんじゃない?」
俺とレオニー隊長は、オメガ専門施設の建設予定地にいた。
「……巣作りですか」
「あれ、めっちゃ可愛いよ。もう止まんない」
「何がです」
「大丈夫、巣作り見れば分かるよ。そんなにか~ってなるよ」
両手でハートマークを作る。
ああ、なんとなく分かった。きっと、俺も止まらないな。
理性も一瞬でいくかもしんない。
「そうなると、あれだね。本当に番になれるじゃないか」
「そう、ですね」
俺だけのハイネになるってことだよな。え、やば。もう帰りたい。
いやいや、まだ使いが来ないってことは発情期は来ていない。俺は仕事を頑張らなければ。
そう奮い立たせてレオニー隊長と共に調査を再開した。
あー、早く帰りたい。
屋敷に帰るとハイネはまだ部屋にいるという。部屋をノックし、扉を開けるとフェロンが俺の脳を揺さぶる。
発情期来てるじゃねぇか。
くらり、とくるものを感じながら部屋を見ると俺の服が散らばっていた。それはベッドの上に続いている。
うわ、沢山出したなぁ。俺の服が凄いことになってる。
「……巣作り、か?」
これが、そうなのか。俺は扉を閉め、鍵をかける。自分の中で滾る熱を抑えながらベッドを覗く。
うわー、めっちゃ可愛い。なんだこれ。俺の服を巣に見立ててんのか。しかも抱きしめてるのも俺の服だよな。いや、待て、着ている服も俺のじゃね?
やばい、プッツンいく。
アルファの本能が内側から暴れ出す。
抱きたい。
むちゃくちゃにしたい。
俺だけのものにしたい。
首、噛みたい。
理性はもう引きちぎれる寸前だが、俺はもう少しこの様子を見たくて口元を覆う。
「ん……ギルバート?」
甘く蕩けた顔が俺を見てくる。
ああ、これやばい。まじで。初回の発情期よりもやばいかもしれない。
だって、今回はハイネの首に噛んでもいい日だ。
荒くなる息を抑えながらハイネを見る。
ハイネはそっと体を起こすと、羽織っていた俺の服の下は上半身だけ何も身につけていなかった。
「ハ、イネ」
なんで服の下、なんも着てないんだよ。なんだんだ、このエロさ。もう、無理。巣作り尊い。
「ギルバート……僕のこと、めちゃくちゃにして……くれる?」
ふにゃり、と笑って腕を伸ばすハイネの姿に俺の理性無理矢理引きちぎられた。
「ごめん、優しくできねぇわ」
俺は、ハイネを押し倒して唇にしゃぶりついた。




