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第16話 誰にも渡さない、俺のハイネだ


 腕の中にハイネがいる。小さく震えていた。


「ハイネ、遅くなってごめん」


「……離せ!……いやだっ!」


 俺の腕から逃げだそうとするハイネはジタバタと暴れる。拳が俺の顔に当たった。


「……っ」


「あっ……ごめっ」


 ハイネが俺の顔を見て、徐々に呼吸が荒くなっていく。ハイネの眉間に皺が寄っていき苦しそうだった。ぶつかってしまった手が俺を殴ってしまったと思ってしまっているのかもしれない。


「ハイネ、落ち着け。息を一旦吐け。ゆっくりでいい。うん、上手だ」


 涙をボロボロ流したハイネが俺を見上げる。


「ほら、吸って、吐いて……そう、ゆっくりでいい」


 ハイネの肩を抱き、背中を摩る。本当は勢いでキスをしてしまいそうだった。危なかった。落ち着け、俺。

 ハイネの頬を指で触れ、涙を優しく指で拭いていく。


「ギルバート、どうして……」


「ハイネを取り戻しに来たに決まってるだろ」


 ハイネはゆっくり首を振って、俯いて俺から離れようとする。、


「……無理だ。僕はもうダミアンーー……っ!?」


 ハイネの口から知らない男の名前を聞きたくなかった。

 強引かもしれないが俺は自分の唇で塞ぐ。


「んんっ!……っ」


 突き放されそうになるが、抱き締め、薄い唇の中に入っていく。途中、痛みが走り、鉄の味がしたが俺は離さなかった。

 諦めたようにハイネは俺を受け入れ、背中に腕を回してきた。

 いつの間にかハイネも俺に縋るように強く口付けをし始める。

 時間を忘れて、俺達はキスをする。


 コンコンコンッ。


 部屋の扉がノックされ、俺は名残惜しいが唇を離した。


「ハイネ、俺の所に帰って来てくれ。いや、違うな……家に帰ろう」


 ハイネの頬を優しく包み込み、啄むキスを落としていく。


「ギルバート、僕のこと……好きなの?」


 そうだよな。ちゃんと言って欲しいよな。安心するよな。


「好きじゃない」


「……え」


「愛してる。ハイネ、愛してるよ」


 こんな恥ずかしいこと言えるのハイネを離したくないからだ。

 ハイネは顔を真っ赤にして微笑む。


「嬉しい……ギルバート、僕帰りたい」


 俺はハイネを抱き締めた。そのまま、首元に触れる。肩を揺らすハイネは俺の背中に手を回し、強く抱き締め返す。


「……噛んで、僕をギルバートの番にして」


「ああ、とりあえず今は俺のだって刻ませて」


 舌を這わし、歯を立てた。


「……っ!くっ」


 痛いよな。ごめん。でも、噛まずにはいられない。

 ハイネは俺のだ。他の奴になんて渡せないんだ。

 ゆっくり唇を外す。しっかりと歯型が刻まれていた。


「ギルバートの匂いに抱かれているみたい」


 可愛いな、おい!

 あー、今すぐ押し倒したい。

 外にいるレオニー隊長のノックが少し大きくなる。

 やっべ。怒られる。


「ハイネ、急いでこれに着替えてくれ」


「……これは」


 ハイネは嬉しそうな顔を見せてくれた。







 俺たちは扉の前に立つ。ハイネは俺の瞳の色と同じブローチを撫でる。

 その顔は幸せそうだった。

 可愛すぎる。俺はハイネの頭にキスを落とす。

 扉が開くとざわり、と貴族達の視線が俺たちに降り注ぐ。それもそうだろう。先程までダミアン・キルヴァンスといたハイネは、俺の横で幸せそうに笑っている。

 もう「イシュタルグの悪魔」だ、なんて言わせない。

 上の方で座っているアグニス陛下と目が合う。彼は小さく微笑む。


「ハイネ!どういうこと!」

 

 声を荒上げて来たのはハイネの母親だった。良く顔は似ている。性格は全く違うな。


「僕はギルバートと一緒になります」


「こんの……」


 ダミアンがハイネの母親の前に立つ。アルファのフェロモンを出して俺に喧嘩を売ってくる。

 冷たい瞳がハイネを見下ろし、眉間に皺を寄せていた。


「どういうことですか、これは。ハイネ、貴方は私の婚約者でしょう?」


「恐れ入りますが、貴方の婚約者ではない。俺の妻だ」


「不貞を働いた君が?」


「……不貞?何のことですか?」


 鼻で笑うとハイネの母親がふるふると肩を震わせ、俺に向かって指を指してくる。


「私は知ってるわよ!私の可愛いハイネと離縁して、ルル・ベルトニーと結婚しようとしていたでしょう!?」


「私の可愛いハイネ?……ふざけるのも大概にしろよ。ハイネに躾と称して何年も何年も罵ってきたこと、知っていますよ?そして、今度は金に目が暗み、俺のハイネを監禁しましたよね?」


 レオニー隊長がそっと渡してきた宝石を目の前に投げ捨てる。


「これに見覚えがありますよね?この資金は誰が出したんですか?ダミアン・キルヴァンス。貴方ですよね?イシュタルグ家と繋がり、彼らの借金を片側する代わりに保有している土地に眠る金脈の話でも取り付けたのではないですか?貴方達の方がどう見ても不貞を働いていますよね?」


「…くっ」


「こっちだって証拠あるわ!ハイネ!首を見せなさい!貴方は妻といいながら番の印がないじゃない!」


 俺はハイネを抱きしめ、首元を見せる。くっきり付いた歯型に俺のフェロモンが溢れ出ている。


「……印、ありますよ?」


「な、なんですって!ベルトニーは!?居るわよね!」


 名前を呼ばれ、ルルは嫌そうに前に出てくる。


「あなた!そいつに結婚約束されたわよね!?」


「えー、ボクわかんないですー。だってー、ボク犬派とか猫派とか色々言ってるー、キモイ男なんて興味ないですもん」


 ルルはそっ、と頭を下げて俺を見る。すごい形相だった。

 一芝居やったんだからボクの家を守れよ、と言いたげだった。

 あの顔、めっちゃ怖いじゃん。バカっぽいことしてるのに、なんか頭良さそうに見える。こわっ。


「な、なんなの!?でも、離縁してるはずよ!」


「……できていませんよ?」


 ハイネがバッと俺を見上げる。

 うわ、めっちゃ喜んでる。可愛い。そうだよ。ハイネはまだ俺と離縁なんて、してないよ。

 そっと頬を撫でて、その額にキスを落とす。


「俺は王命でハイネと結婚しました。お分かりですか?離縁するには王の許可が必要ですよ?」


「なっ!」


 ハイネの母親がアグニス陛下の方を見る。

 にやにやと頬杖を付き、俺たちの様子を眺めていた。


「ふざけないで下さい!私はちゃんと離縁の承諾証を見ました!そうですよね!イシュタルグ夫人!」


 ハイネの母親は青ざめ、下を向く。


「なんだと、ふざけるな!私は許しませんよ!そのオメガは私のだ!」


 俺のだよ。お前にやるつもりはない。

 体が沸騰するようだ。それが体の外にまで広がっていくようだった。

 ハイネを守るように抱き締め、目の前に立つダミアンを睨めば無様に尻もちを付く。


「お前のではない。俺の、俺だけのハイネだ」


「……そこまでだ」


 パンパン、と乾いた音が会場に響く。アグニス陛下が手を叩いた音だった。ゆっくりと階段を下がり、ダミアンとハイネの母親の前に立つ。


「衛兵、彼らはオメガを不当に扱ったという余罪もある。牢に連れて行け」


「陛下!そんなのあんまりです!たかがオメガですよ!」


 ダミアンが衛兵の手を振り払いアグニス陛下の元へいく。


「たかが、オメガだと?私がオメガを大事にしていることを知っていて、言っているのか?今度同じことを発してみろ。その首が胴体と分離するぞ」


 低く、唸る声にダミアンは呆然とし、引きずられるように衛兵に連れて行かれる。

 また、隠れていたハイネの父親も引きずられるように会場の外へと消えていった。


「さて、改めて私は誓おう。アルファやベータにオメガ。皆が幸せに暮らせる国にして見せる」


 アグニス陛下の言葉に貴族達から拍手が起こる。

 オメガを迫害してきた貴族もこの件で少なくなるだろう。

 アグニス陛下、首と胴体分離って他の貴族にも言ってんだろうな。ほら、皆の顔青いし。


「アグニス陛下、色々とありがとうございました。俺たちはこれで失礼します」


「ああ。ハイネ……オリヴィアが早く会いたいと言っていた。是非、近々また来てくれ」


「は、はい」


 アグニス陛下に頭を下げ、レオニー隊長と目が合う。彼は指ハートをして、手を振っていた。俺は深く頭を下げてハイネと共に会場を出た。




 


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