表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/21

第10話 なにそれ、知らない


 あれからハイネの発情期が落ち着き、俺は一週間ぶりに騎士団に来ていた。


「ねえ、ラブラブして来たはずなのになんで暗いの!?」


 そんなに暗いだろうか。とりあえず、触れないで欲しい。


「いや、俺……もしかしたらサレ夫になりそうで」


「サレ夫?なにそれ」


「さあ?」


 俺はため息をついた。

 ハイネを泣かしたし、アルファっていうせいなのか、独占欲がすごいし。

 記憶戻ってからこの世界、生き辛すぎる。異世界ってもっと楽しいものじゃなかったか?

 アニメとかだと、ハッピーライフ送ってる奴とかいるじゃん。

 妹よ。助けてくれ。

 お兄ちゃん、せっかく可愛くなってきた嫁に捨てられるかもしれん。

 それにハイネが俺を避けてばかりいるんだ。嫌われたかもしれん。


「まあ、よく分かんないけどさ。はい、これ」


 レオニー隊長から一枚の手紙を渡される。誰からだ。ひっくり返して封蝋を見ると太陽に3つの剣が添えられた王家の紋章が刻まれていた。


「え!?は!?なんで!」


「いい反応するじゃないかー!王様が君たちに会いたいんだって!私がこの間、話してしまったからかなぁ」


 レオニー隊長は嬉しそうな顔で頷く。

 何を話したんだ。やめてくれ。王様に会うとか無理だって。


「イシュタルグの悪魔がわざわざギルバートのこと健気に迎えに来て、二人でデートして~、ラブラブしたって」


「は!?」


 この人、なんつーことを王様に話してんだよ。有り得ないだろ!

 今日何度目か分からないため息をついて、手紙の封を開ける。

 中を開くと綺麗な文字で日時と茶会を開くからハイネと二人で来るように、とだけ書かれていた。


「断っては」


「ダメに決まってんじゃーん!王様の命令は?」


「ぜったーい」


 なんで俺たちのこと気になるんだよ。そんなにイシュタルグの悪魔ってずっと言われてた奴がどう変わったのか見たいのか。

 見せたくないなぁ。

 いや、でもちょっと自慢したいかも。








 「久しぶりだな、ギルバート・ゾルディアス副隊長?」


 俺とハイネは王宮の庭園にいた。

 馬車の中はかなり気まづかった。今日までハイネとは顔を合わしていなかった。王様からの招待状の件もメイドに頼んで伝えて貰ったぐらいだ。


「お久しぶりです。アグニス・ファイネルド陛下。本日はお招き頂きありがとうございます」


 中央に設置された高そうなテーブルにはケーキや紅茶が置かれて行く。

 こっわ。相変わらずこっわ。確か会ったのは王命の時に一度だけだよな。


「アグニスでいい。俺も君のことはギルバートと呼ぶ」


 この物語のヒーローのイケメンがすごい。妹の推しが輝いてる。こんなに背景薔薇が似合う男がいるのかよ。

 その横には綺麗な人がいた。この漫画のヒロインだ。確かハイネと同じようにオメガで、あまりいい家庭の出ではなかった気がする。彼女もまた家族から迫害されて来ていた……気がする。


「ああ、そうだ、彼女は私の婚約者のオリヴィアだ。彼女から申し出があったんだ。ハイネ・イシュタルグに会いたいと」


「はじめまして。ギルバート・ゾルディアス様。そしてお久しぶりです。ハイネ」


「久しぶり……です。オリヴィア、様」


「いやだわ、前みたいにオリヴィアって呼んで欲しいわ。私たち、お友達じゃない」


 え、この二人、友達なの?

 俺知らねぇ。漫画のどこかに書いてあったか?

 適当に読み過ぎた。そんな場面あったか。わっかんねぇ。笑っとこ。


「さて、二人の邪魔をしないように私達も少し話さないか?ギルバート」


 アグニス陛下が立ち上がる。

 ハイネがそっと俺の服の裾を掴んで俺を見上げてくる。

 こういう時は俺を頼るのか。可愛いな、おい。

 俺はハイネの手に触れる。大丈夫だと、手を握る。

 不安だよな。いきなり久しぶりの友人と一対一とか。大丈夫だ。俺も不安だ。何せ、物語の中でハイネはヒロインを虐めて斬首されている。

 何もするなよ。絶対に怒るなよ。何があっても。

 俺は笑ってハイネの頬を撫でて、側を離れた。

 アグニス陛下は面白いものでも見るような顔をしていた。

 二人の場所から少し離れた所で俺たちは歩きながら話をする。


「レオニーからお前が変わったと話は聞いていたが、確かに変わったな。まさか、あのイシュタルグの悪魔と呼ばれていた男がお前を頼るなんて」


「彼は環境が悪かっただけですよ。そこから抜け出せばあのように変わるのです。いつか、イシュタルグの悪魔というあだ名なんて遠い昔の話になるのも近いかもしれませんよ」


 知らんけど。

 ただ、一つ言えるのはそのあだ名はきっとこのまま行けばきっと忘れられていくはずだ。


「はは、そうだな……では、気をつけるといい」


 アグニス陛下が真剣な顔で俺を見てくる。


「イシュタルグ家が何やら水面下で動いている。気をつけろ。レオニーにも伝えてあるが、お前たちにとって良くないことになるかもしれん」


 まじか。また面倒事かよ。

 勘弁してくれよ。

 いや、待てよ。本来、この時点でギルバートとハイネ離縁していたはず。あんま覚えてないけど。こんな茶会にも呼ばれていなかった。ギルバートはこの時、何をしていた?

 誰と結婚した?

 妹よ。助けてくれ。


「承知しました。気をつけ」


「きゃーーーーー!!」


 オリヴィア様の声が庭園に響いた。

 ハイネ、何をしたんだ!?

 俺とアグニス陛下は顔を見合せ、急いで走ってハイネ達の元へと向かった。


 頼む。斬首されるようなことはしてないでくれ!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ