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第4話:騎士団と女団長

※冒険は、戦うことだけではありません。

王都に滞在する理由は、自然に生まれた。


盗賊討伐の噂は、思った以上に早く広がっていたらしい。

宿の主人が、朝食を運びながら何気なく言った。


「騎士団が、あんたに会いたがってる」


「……俺に?」


「腕を見たいそうだ。最近は人手不足でな」


断る理由はなかった。

それに、心のどこかで“試したい”と思っていた。


自分が、どこまで通用するのかを。


騎士団の訓練場は、広く、整っていた。

鎧のぶつかる音。掛け声。汗の匂い。


懐かしいわけでもないのに、胸が高鳴った。


「貴方が、噂の旅人?」


声をかけてきたのは、一人の女性だった。

背は高く、姿勢がいい。

短く切った髪と、鋭い目つき。


――この人が、団長だ。


直感でそう思った。


「腕を見せていただけますか?」


挑むような視線。

だが、敵意よりも、焦りが混じっている。


「いいですよ」


木剣を渡され、向かい合う。


周囲の騎士たちが、半信半疑の目で見ていた。


合図と同時に、体が動いた。


一歩。

半歩。

間合いを詰める。


団長の剣は速い。

だが、俺には“見えすぎていた”。


かわす。

受ける。

弾く。


最後は、喉元に木剣を当てていた。


沈黙。


「……私の負けです」


団長は、剣を下ろした。


その瞬間、視線が変わった。

疑念が、興味に。

興味が、敬意に。


「あなた、何者?」


「さあ」


笑うと、周囲がどよめいた。


その日から、俺は騎士団の稽古をつけることになった。

教える、というより、示すだけでいい。


騎士たちは、目を輝かせて剣を振った。

団長も、誰より熱心だった。


夜、訓練場に二人きりになった時、彼女は言った。


「あなたは……ここに来るべきじゃない人だと思う」


「どういう意味で?」


「強すぎる。完成されすぎている」


胸の奥が、少しだけ疼いた。


「でも」


彼女は、視線を逸らす。


「だからこそ、あなたに惹かれている自分がいる」


その言葉に、頭痛が走った。


――まただ。


白い光。

硬いベッド。

誰かが、俺の手を握っている感触。


「……っ」


「大丈夫!?」


団長が、慌てて近づく。


「少し……昔の傷が」


そう言うと、彼女はそれ以上聞かなかった。

踏み込まない優しさ。


それが、なぜか怖かった。


騎士団での日々は、充実していた。

必要とされ、尊敬され、頼られる。


王族の姫は、時折訓練場を訪れ、俺を見つめた。

団長は、その視線に気づいていた。


奇妙な均衡。

だが、誰も壊そうとしない。


俺は、満たされていた。


――間違いなく、満たされているはずだ。


夜、ふと目を覚ますと、胸がざわつく。


(まだ……未練を持ってるのか)


あっちの事を思い出そうとすると、頭が痛む。

思い出さなければ、何も起きない。


なら、考える必要なんてない。


そう、自分に言い聞かせる。


ここは、俺が俺でいられる世界だ。

俺を縛るものは、何もない。


……。

※居場所は、人を救います。

同時に、縛ることもあります。

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