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第10話:最後の冒険

※これは、最後の冒険です。

世界が止まった翌日――

いや、翌日という概念すら曖昧だった。


空の裂け目は消え、時間は再び流れ出した。

だが、どこか様子が違う。


人々の動きは以前よりも滑らかで、

会話は噛み合い、

街は「正常」に見えた。


――修復された。


そう直感した。


女神が現れたのは、王都の城壁の上だった。

羽は、以前よりも小さい。


「世界を、安定させました」


「あなたが選び続ける限り、ここは存続します」


俺は、城下を見下ろす。

人々は、いつも通りの生活をしている。


「代わりに」


女神は、続ける。


「あなたの“現実”との接続は、ほぼ遮断されました」


「頭痛も、記憶の侵食も、もう起きません」


それは、救いのはずだった。


なのに、胸が少しだけ冷えた。


「最後に、一つだけ」


女神は、俺を見る。


「この世界は、あなたが“動かなければ”静止します」


「英雄が必要なのです」


俺は、笑った。


「つまり……最後まで、俺が主役ってことか」


女神は、微笑まなかった。


その日、大陸規模の脅威が現れた。

魔王。

あるいは、それに類する存在。


詳細は、どうでもよかった。


重要なのは、

「俺が行けば、必ず勝てる」という確信があったこと。


姫は、涙を浮かべて止めた。


「行かないで。あなたがいなくなったら……」


団長は、剣を差し出した。


「必ず、戻ってこい」


俺は、どちらにも、はっきりと頷いた。


――戻る。


その言葉に、嘘はなかった。

勝利することが、前提の世界だからだ。


戦いは、壮絶だった。

魔法は極まり、剣は冴え渡る。


敵は強く、だが――

俺に勝てるようには、作られていなかった。


最後の一撃を放つ瞬間、ふと思った。


(……これでいいのか)


だが、考えは、刃と共に振り払った。


勝利。

歓声。

世界は、救われた。


姫は、泣きながら抱きついてきた。

団長は、静かに肩を叩いた。


人々は、俺の名を呼んだ。


英雄。

救世主。

必要不可欠な存在。


その中心に立ちながら、

俺は、初めて“空虚”を感じていた。


――終わってしまった。


これ以上、盛り上がりようがない。


夜、城の自室で、一人になった時、

女神が現れた。


「これで、異世界としての物語は完結です」


「あなたは、永遠にここで生きられる」


俺は、窓の外を見る。


星は、綺麗だった。

だが、どこか作り物めいていた。


「なあ」


俺は、聞いた。


「向こうの世界で……俺は、今どうなってる?」


女神は、少しだけ間を置いて答えた。


「意識は、戻りつつあります」


胸が、跳ねた。


「……何?」


「ご家族の呼びかけが、届き続けています」


「あなたが遮断を拒否したため、完全には閉じられませんでした」


頭の奥が、微かに疼いた。


久しぶりの感覚。


「もう一度、選び直すことは?」


女神は、首を振る。


「選択は、すでに行われています」


「ただ……」


女神は、静かに続けた。


「“終わり”は、まだです」

※物語は、ここで終わりません。

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