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03 世界で一番可愛いヒロインは私のことよね?

「皆〜、よぉぉぉく聞きなさいっ。私に戦闘能力って言うのは期待しないで頂戴!! だから前線に立つのは貴方達で頑張りなさい」


 ……。さて、ルシス・トーナに悲劇があってから5年後。ダンジョン街になんと、学校が出来た。その学校とは冒険者を養成する学校。

 やはりと言うか、ダンジョンというのは驚異的で何時地上に魔物が溢れ出てくるか解らない。今でこそ、ダンジョンに有る財や名声を求めて冒険者が増えてはいるが……それも何時まで続くか解らない。


 職だ、もう冒険者は此の世界にとって1つの世界を回す経済の歯車に必要な職となっている!! それ故に若い内から冒険者になる術を教えようと言う考えから。


 冒険者育成学校、通称メイズスクールを設立したのだ。……さて、前置きは長くはなったが、序盤に明らかに高飛車で有り自分勝手な言葉を誰かが言った所から話しは始まる。


「でも、だからと言って私は何もしないって訳じゃないわよ? 戦闘以外の事は大概の事はしてあげる。って、あぁいけない、ら名乗り遅れたわね。私の名前はリンゼ・スープレイ。いつか必ず豪華な家を買って悠々自適に生活をする其の人よ!! お〜ほほほほほほ、って、う゛ぇ、噎せた。ゲホゴホ、ケホンッ!!」


 その娘のお名前は、リンゼ・スープレイ。年齢は15歳。此の学校の制服を纏った彼女の見た目は縦ロールのロングヘア金髪姫カットの髪型。

 体格で目を引くのは15歳にしては珍しいたわわに実ったお胸だろう。その割には身長140㌢と言うチンチクリンな身長をしている。


「わぁ〜……何あの人。自己紹介であんな事を言う? 引くわ〜」

「じ、自分勝手過ぎる……個性尖ってるなぁ、あのチビロリ」


 まぁ、そんなリンゼの評価は散々なものであった。今は始まった冒険者学校の授業の一発目、自己紹介の時間で盛大にアピールは失敗してしまったようだ。


(おほほほ。まぁ、ものの見事に私の事を悪い風にみくれちゃってまぁ……。ほんっと信っじらんない。まだ私の全てを知らない癖に)


 だがしかし、リンゼはそんな他人からの評価なんてなんのその。低い身長を大きく見せるようにムンッと胸を張った。その時に実ったお胸はたゆんっと揺れて、男子はそれに魅了されて女子は舌打ちをした。


「話したい事は以上よ、私と一緒に冒険したいのなら、直ぐに声を掛けなさい。私とレッツ冒険者ライフをエンジョイするわよ!!」


 リンゼは、お〜って感じに右手を上げて気合いを入れた所で教師らしき人が教卓の前へと立って皆に話してきた。


「はい、此れで皆の自己紹介は済んだかなぁ。えと、それじゃぁ早速授業を……」


 さぁ、その後に普通に授業が始まった訳だが……その合間にリンゼはニタリと微笑みながらこんな事を考える。


(おほほ、おーほほほほっ。此れで皆の脳に私という存在が刻み込まれた筈よ)


 うん、それはもう充分に刻み込まれたとも。凄く変わった女の人だなぁ、と言う感情だけだろう。まぁ、それはさておき……少しだけリンゼについてを話さなければならない。

 彼女は貧相でも裕福でもないごくごく普通の家庭に産まれた。ソコから彼女は兎にも角にも一二を置いて家族や親戚一同からとことんまで可愛がられたのだ。


"さぁ、ご覧。僕達の可愛い可愛い娘だよ〜"

"きゃぁ〜、ステキッ。可愛い〜、この娘は天使だわ〜"


 リンゼの事を褒める言葉をあげたら本当に切りが無い程に"可愛い"と褒められて育った彼女は過度なほどに自信満々で、天真爛漫……あと序でに可愛く育ったのだ。さて、そんな可愛い彼女には夢が有る。

 それは……ッ。


(挨拶はコミュニケーションの第一歩。此れで私という可愛い存在を誇示出来た筈。後は……おほほ、おーほっほっほっ。冒険者になって成果をあげて老若男女犬猫鳥鼠その他もろもろ全ての生命体から、リンゼ様ステキ、可愛い〜と言われるだけッ!!)


 以上の様な、それはそれはビックリする位にゆるくて軟派な考えが煮詰まった夢である。こう思った切っ掛けは……。


「えぇ〜、知っての通りダンジョン内は危険が沢山あります。それに、君達が当たり前のように使っている風呂、トイレ、寝具に至るまで何もかもがありません。とてもシビアな環境です。此れに耐えうる精神も必要であるからして生半可な気持ちでは務まりません」


 そう、いま先生が言った言葉の中に有る。リンゼはそんな先生の言葉を静かに「フフンッ」と鼻で笑った。


(今ある当たり前の物が無い、ですって? おほほほっ。信っじらんないわ。ダンジョンが出来てから何十年と経つのにソレすら出来ていないんだもの)


 改めて言おう。リンゼはとても可愛い。勿論、その可愛さをリンゼは自分自身で自覚している!! だから……。


(私が生み出してあげようじゃぁ無いの。いま当たり前に使っている物は、私の可愛さを保つ為に必要な物ッ!! それを将来生み出す私はすごぉぉぉくチヤホヤされるに違いないわ。あ、序でに冒険者パーティの優秀なサポートなんかした日には……おほほ、お〜ほほほほほ〜)


 こう思ったのだ。

 まぁ、ご覧の通り私欲……いや、失礼。無いものを作り出すという輝かしい意欲に満ち溢れた気力に満ちた夢である。そんな夢を知らないクラスメイト達(主に女子生徒)はリンゼを稀有な目で見つめている。

 ……男子は言うと、低身長ながら大き過ぎるお胸を持つリンゼに"変な娘だけれど付き合いたいなぁ"なんて事を思っていたりする。



 と、まぁ……そんな思いを抱き、リンゼは自分なりに夢の為に自らがするべき行動を頭に思い描きながら時は進み…………授業は戦闘訓練となった。

 教室から移動し庭にある木偶人形に攻撃を行う所謂"疑似戦闘訓練"なる授業で事件は起きた。


「……リンゼ。すまんが、もう一度今の言葉を言ってくれないか?」

「はい先生。お望みなら何度でも言うわよ。良い? よぉぉぉく聞きなさい。私は食器以上の物は大概重たくて持てないの。だからね? 私は武器を持つ授業はやらないわ。やるなら皆で勝手にやりなさい。おわかり?」


 …………あぁ、彼女は言った、言ってしまった。言えば確実に怒られるであろう言葉を平然と。当然先生は青筋を浮かべ、低い声音でリンゼに言った。


「そんな自分勝手が通るとでも?」

「自分勝手ぇ? おほほほ、違うわ先生。私はね、良い? 私は……我が儘なのよ!! 間違えないでちょうだい」


 けれどリンゼは、半身立ちになり右手の人差し指と親指をピンッとおっ立てて自身の顎の下に起きキメ顔を晒した。……その直後。


 ゴッッツゥゥゥゥゥゥンッ!!!!


「ふんぎゃァッ!?」


 リンゼの頭上に凄まじいゲンコツが落ちて彼女は見事にひっくり返ってしまった。……純白の白パンを自身のクラスメイトに見せ付けて。


「おぉ、ナイスパンツ」

「良い、良いね。今日はこれで良いや」

「見事なまでの調子乗りムーブ。お手本のようだ」


 男子生徒はえっちな光景に静かに拍手をして、女子生徒は「ふんっ、いい気味」だとか「ざまぁみろ」だの色々な陰口を叩いていく。

 どうやらリンゼは学生生活早々に人気が男女で二分する形になってしまった。だが……ひっくり返ったままリンゼは痛そうに頭を押さえ涙を浮かべて……。


(お、おほほほ。あったま痛い〜。で、でも言ってやったわ。先生相手に自分の意見を!! そうよ、そうなのよっ。此れが大事なのよ!! 私は自分の夢を叶える為なら……自分の為にならない事は絶対にやらないと決めたのっ。此の決意で私は成るわ!! 私が目指すべき可愛い冒険者にっ。そして……冒険者の中のヒロインになってお姫様みたいにチヤホヤされるのよ〜!!)


 めげる事無くこんな事を思ってしまう。なんと言うかこう言う娘を意志が強い……と言うのだろうか? はたまた見通しが甘いと言うのだろうか?


 それはさておき、リンゼはこんな自分勝手……いや、我が儘だと己で言い切る行動でヒロインになる事を夢見て行動をする。そう、自分は可愛いからこそ"そうなるべきだ"と強く心の中で思って……。




 ◆




 そんな決意から3年後。リンゼは18歳となり学園を卒業し、無事に冒険者になった。卒業した者たちは学園生活内で親しくなった生徒達とパーティを組み、いざ冒険者になる訳だが…………。


「お、おほほ、おほほほほ……。あ、あれぇぇ……? な、なんで、なの〜? ど、どどど、どうして? 私ってば人っ子1人だ〜れもパーティに入れてくれないのよぉぉぉぉ〜ッ!! あぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜んッ!!!!」


 リンゼは、やはり生徒達には"自分勝手"だと認識され、こんな人とはパーティを組めない。組んでも絶対に無理難題を言われそう、と言うイメージを擦り付けられて……ボッチで冒険者デビューとなってしまった。


「う、うぅ。ぐすッ。し、信っじらんない……こんな事になるなんて……。私は超可愛いのにぃぃぃッ!!!! 1人ぼっちになるなんて!!」


 リンゼは今、冒険者ギルドに居るわけだが。彼女以外、皆がパーティを組んで楽しそうにしている最中。彼女はポツネンと1人取り残されている。そんな状況に悔し涙を流しギリギリと歯軋りをした。

 正に想像すらしていなかったアクシデント。可愛い冒険者になると言うリンゼの夢の冒険者ライフに大きな壁が出来てしまった。だって、ソロでのダンジョン探索は自分一人で何でもしなくてはならない為に困難だからだ。


(いや、いやいやいや。落ち着きなさい私っ。今悔しがっている暇は無いわ。なにか、何か策が有る筈よ…………ん?)


 リンゼは焦りながら周りを見渡していた時。あるものを見掛けた。それは……。


「良いかい、ゲペル。あぁゲペル。良ぉく聞きなさい。君は今、冒険者となってダンジョンに潜り我々の神事しんじをしてくれる訳だが……」

「ン。気をちゅ、ちゅけ、る……よ」

「うん、そうだね。そうだ。充分に気を付けなさい。あぁ、でもどうしたものか。君を送り出すのは心配でならないよ」


 背中に∞マークが描かれた白い修道衣服を着た、かなり背が低くくて目を隠す位に前髪が長いツインテールの女の子が目に入った。人よりも肌が白い"ゲペル"と言われた少女の前には。


 同じ修道衣服を着た、スキンヘッドで堀の深い顔付きで大柄な体格の老齢の男に何やら子供にお使いを頼むかの様に丁寧に話しをしていた。


(あの衣服、授業で習った事があるわ。……ダンジョン内の死体を回収して埋葬をする活動をしてるリィジオス教の人だわ。それにあのスキンヘッドの男の人……此れも習った事があるわね。確か名前は……)


 そう、リンゼが目にしたのは魔物である事を隠し人に化けているゲペルとリィジオス教の教祖であるペアッケ・ワイルズだ。

 此の人の存在は"とても素晴らしい御方"として深く知れ渡っている。何故ならば誰しもがやりたがらない死体回収を率先して始めた人だからだ。


 いつしか彼の周りには彼の行いを手伝う者達が集い。死者を輪廻の輪に戻す宗教、ダンジョンを死体まみれになる事を防いでくれた尊き御方として授業で何度も教わった。

 もちろん、彼等が世にも知られていない秘密裏に行っている"儀式"を除いて、だ。


(……ッ!! ひ、閃いたわっ。おほほほ、私ってば天才ねッ!!!! 此れが成功すれば私はボッチからコンビ冒険者になれるっ。おほほほ〜、私ってば信っじらんない位の天才ね。後で自分で自分を褒めなきゃ〜)


 リンゼは自分でも自覚出来ない程に口角を上げてニタニタ笑い2人に近付いた。そうして開口一番にこう言ったのだ。


「そこの叔父様、序でに隣りのお嬢さん。話しは盗み聞きって形になるんだけど聞かせて貰ったわ。突然だけれど、私がその神事を手伝ってあげても良いわ。その代わり……私とパーティを組みなさいっ。いえ、組んであげても良いわ。有り難く思いなさい!!」


 さぁ……いきなり初対面の人相手にこんな事を言っちゃったリンゼはどうなる事やら。そして、ゲペル……そう、ゲペルは何故にリィジオス教の神事を手伝う事になったのか? お話しは後に語られる。


 もちろん悲劇を背負った、いつか主人公と成るルシスの事もだ。3人娘(1人は?だが……)は己が夢の為に歩みを進めた。


  ーーーー此の物語は……こんな3人娘(1人?)の活躍を描く冒険譚。そうして此の世界の人々は知り脳裏に焼き付ける事になるだろう。


 最強で正義心を宿した勇者の誕生に……。

   

 

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