3,拒絶
俺はあの後自室に戻り、眠りについた。
俺は、目覚めるとすぐに食堂に移動する。
この王城には来客用の部屋や施設がそろっているらしい。
俺は今日の朝食を給仕の人から受け取ると、どれもいないテーブルにすわった。
この世界の料理は元居た世界と同じようなレベルだ。
しかし、それは食材のレベルがこちらの方がいいというだけで、料理スキルの観点から見ると元の世界の方がレベルが高い。
俺は朝食を食べながら、アリシアをどうやって振り向かせるか考える。
考えていると、気づけば朝食を食べ終わっていた。
俺はそのまま時間に余裕があるが今日の講義のために訓練場に来ていた。
今日の講義はスキルを発動させることらしい。
どうやらこの世界のスキルを使うにはMPを使うのだが、スキルを使うには慣れや特殊な感覚が必要だという。なので、訓練しないとすぐにはスキルを使えないらしい。
俺はこの二日間考えていたことがある。それはこの世界のステータスが補正値であることだ。補正値と言うことはこのステータスに表記される力はすべてステータスなしでも存在するということだ。ただスキルは違うだろう。これはステータスの恩恵な気がする。
何が言いたいのかと言うと、魔力(MP)をステータスの力を使わずに扱えるようになるのではないか。もし可能なら、スキルを再現することができるじゃないかと思った。
ただ、この仮説が正しかったとしてその恩恵を受けられるのは転職したものだけだ。だが、俺はもともと様々な職業を使う予定だったから恩恵を受けられるだろう。この仮説が正しければすべての職業をカンストすれば最強になれるだろう。そうなればすべてのスキルが使えるのだから。
俺がそんなことを考えながらストレッチをしていると、睦月が訓練場に入ってきた。まだ講義まで一時間以上ある。
俺はどうしたのだろうか?おれがそんな疑問を持っていると睦月がこちらに向かって歩いてくる。
「おはよう影宮君。影宮君はどうしてこんな早くに訓練場に来たの?」
どうやら、睦月も俺と同じ疑問を抱いたらしい。
俺は少し考えた後口を開いた。
「ステータスで身体能力が上がっても生身の人間なんだ。なら、少しでも生き残るために強くなろうと思ってね。今から走ろうと思っていたところだよ。そういう睦月はどうしてこんな時間に来たの?」
俺の問いに睦月は、少し悩んだ後口を開いた。
「実は僕にもよくわからないんだけど、影宮君と話してなんとなくわかったよ。昨日、気持ちが変わったからじゃないかな。とりあえず僕も走るよ。」
そうして、俺達は訓練場をぐるぐると走った。
訓練場は縦一キロ横2キロの長方形のような場所だ。俺達はその中で走りつつける。
俺は40分で体力が尽きてギブアップした。
しかし、睦月は体力を切らさなかったらしい。
恐らく、ステータスが上がった影響だろう。
だが、睦月に敗けたことは悔しい。
俺は少し休んだ後、講義まで待つ。
すると、少しずつ訓練場に人が入ってくる。
十分もすればクラスメイト全員が集まった。
その後、クラウンが訓練場に到着した。
そしてクラウンが講義を始めた。
「今日は皆さんに事前に伝えたように自分のスキルを発動できるようになってもらいます。まず、剣士系、魔法系、盗賊系、僧侶系に分かれてください。分類されない人は自分が近いと思うところに入ってください。」
クラスメイトが集団ごとに固まりだした。
俺は魔法系だろう。魔法系だと思う集団の中に俺は入る。
俺達が分かれたことを確認したクラウンは、入り口の方に合図を送った。
すると、そこから何人かの人たちが入ってきた。
恐らく各系統の講師なのだろう。
その中の一人が俺たちの方に歩いてくる。
その男は俺たちの前に立ち、口を開く。
「私は皆さんの講師を務めさせていただきます。フリードと申します。これからよろしくお願いします。早速ですが皆さんには、魔力(MP)を感じるところから行ってもらいたいと思います。」
その男はフリードと名乗った。どうやらこの人物が俺たちの担当の講師らしい。
俺はこいつを見た瞬間に悪寒を感じた。
なんというのだろうか。あいつの目は他人を自分のための道具としか思っていないそんな奴の目をしている。そこは別にいいのだが、あいつが纏っているローブ明らかにおかしい。あのローブがぼやけて見えるのだ。恐らく、特殊なアイテムなのだろう。
この得体のしれない気味悪さに俺は警戒心を強く持った。
俺がそんなことを考えている間も講義は続いている。
どうやらこいつの説明では、魔法系は魔力との親和性が高く。魔力を感じ取ることができないといけないらしい。特に魔力を主体として戦うわけだから魔力に関する能力が高くなければならないらしい。
そして魔力を感知する方法だが、自身の中にある魔力を見つけることだけだそうだ。
簡単に言えば精神統一みたいな感じで、自分と向き合って見つけるモノらしい。
俺は自分の中に意識を集中する。
今までになかった感覚がそこにはあった。自分の血管や細胞に意識を集中するとわかるが、それら一つ一つに魔力が存在している。
俺はそれを意識して動かす。すると魔力が動き出した。
だが、魔力はすぐに元の位置に戻ってしまう。
恐らくこの世界に来て魔力が定着してから一度も動かしていないから、魔力が固まっているのだと思われる。
俺が魔力操作に苦戦していると、フリードが俺の方に近づいてきた。
俺はフリードの方を向くと、フリードが口を開いた。
「君名前は何というのかな。」
俺は名前を聞かれたのでそのまま名前を答える。
「鳴瀬影宮です。」
すると、フリードは俺を見て、笑顔になり話始めた。
「鳴瀬君だね。君はすぐに魔力を動かせるようになったよね。どうだい私の弟子にならないかい。君のように初めて魔力に触れてすぐに魔力を動かせるほどの才能を持った人材をここで見逃すのはもったいない。ぜひ私が君に教鞭をとらせてくれ。」
俺はこの男のその熱意に押される。
もしかしてさっきの悪寒は、こいつ魔法以外に興味がなくて魔法に異常な興味関心がある変態なんじゃないか?そうだったらまずい。このままだったらこれからこいつと付き合わなくてはならなくなる。だめだ。こういうタイプの人種は周りが見えていなくて周りの被害を顧みないタイプだ。俺はアリシアの呪いを解かなくちゃいけないのにそんなことに時間を割いている暇はないんだ。
「ありがたい申し出ですが遠慮させていただきます。まだ私は魔法も使えないのでそのようなお時間を取らせるわけにはいきません。」
俺は遠回しに拒否した。
「おお、そうかなら魔法が使えるようになったら再度勧誘させてもらおう。」
しかし、こいつはそれの意味を間違って理解し、俺のことを再度誘ってきたのだ。
どうする。このまま拒否し続けるより、一度話を流した方がいいよな。
俺がそんなことを考えていると、フリードは他のクラスメイトのところに移動していた。
俺は安堵すると同時に、またフリードに誘われることを面倒に思った。
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