2,告白(2)
今更ですが名前は適当です。
アリシアside
私は鳴瀬さんと別れてから、自室で先ほどの話を思い出していた。
まるで本の中のお話だ。
呪われた姫に少年が恋をした。言葉にすると恋愛小説か何かと思う。
しかし、これは事実なのだ。
彼は私に一目ぼれした。
それであんなことを言い放った。
本当に何なのだろうか。
普通なら、初めて知り合った人物の告白に答えるなんてありえない。
そのまま断って終わりだ。
だが、私は人との関わりが薄い。
そのせいで私は今まで呪いのせいでろくな恋愛経験がない。
そのため、頭ではどうすればいいのか分かるのに行動に移せない。
「「君に惹かれてしまった」か。よく惜しげもなくあのような恥ずかしいことが言えますね。」
そう悪態をつきながらも、先ほどのことを思い出し、顔が赤くなる。
告白されるというのはこうも恥ずかしいものなのだろうか。
先ほども言ったが彼の告白に答えるのなど普通はありえない。
しかし、彼の眼は本気のそれだった。
彼のそんな気持ちに自身の軽い気持ちで返していいのだろうか。気づけば、私の中にそんな葛藤が生まれていた。
私はずっとそのことを考えながら眠りについた。
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影宮side
俺は、今日も講義を終えて約束通り図書館に来ていた。
講義の内容は昨日の内容より、この世界についての物が多かった。
すると、そこには椅子に座っているアリシアがいた。
「そこの席に座ってください。」
俺は、促された席に座った。
そしてアリシアの方を向いた。
するとアリシアは口を開いた。
「まず前提として私はあなたのことを何も知りませんし、好きでもありません。しかし、あなたの真剣さを考慮し。私を振り向かせて見せたのなら、その時に返事をしましょう。私は基本図書館にいますので私に会いたいのでしたら図書館にいらしてください。」
ひとまず保留と言う形になった。
まあ、よかったのかもしれない。これでもしフラれていたら立ち直れなかったかもしれないし、仮に成功してもそれはそれで彼女が心配だ。
「よかった。この前は勢いで告白まで行ってしまったけど、告白するならちゃんとしてやりたかったから。」
俺が安堵していると、今度はアリシアが険しい表情になった。
どうしたのか?疑問に思っていると。
「鳴瀬さんもそういうところの常識がないわけではないのですね。初対面でいきなり告白をしてきたので異世界だと違うのかと思いました。」
なんと、俺は常識がない奴だと思われていたらいい。
俺はショックを受けて、ダメージを食らった。
好きな人から常識がないと言われるのは堪えるな。
その後俺達は雑談をした。主に俺のいた世界の出来事を。アリシアは俺のいた世界に興味が湧いたのか、興味深い様子でその話を聞いていた。少し話をすると俺達は解散した。
俺が部屋に戻っていると睦月が部屋に戻っているようなので、俺は睦月に話しかけた。
「やあ、睦月」
睦月はこちらに振り向いた。
しかし、その表情は青ざめていた。
「どうした」
俺はそのまま、睦月を睦月の部屋に連れて行った。
そして、俺は睦月にどうしたのか尋ねると。
睦月は震えながらも口を開く。
「僕が殺した・・・あああああああああああああああああああああああ゛ああああああああああああああああああああああああああああああ゛あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ゛ああああああああああああ゛ああああああ」
睦月は発狂しだした。
どうやら言動から察するに、何かを殺したことでとてつもない罪悪感に苛まれているようだ。
恐らく魔物を倒したのだろう。
何人かはすでに魔物を狩りに行ったと聞いている。
護衛は居たのだろうが精神的苦痛まで守れるわけではないからな。
今はこの睦月をどうするかだな。
こういう時は・・・
俺は睦月の瞳を見るめる。
そして、口を開く。
「睦月はどうしたいんだ?」
俺はそう問いかけるが睦月は答えない。いや、発狂していて考えられないのだろう。
だけど苦し紛れに言葉を吐きだす。
「僕が殺したんだ。なら僕も自分で償うしか・・・」
睦月はそんなことを口にする。
俺は睦月に歩み寄る。
そして、腕を上げる。
そのまま、睦月の顔にビンタする。
パンッ!!
睦月は一瞬何が起こったのか分からず呆ける。
俺は呆けている睦月に対して口を開く。
「何を殺したのか知らないが、殺したのならその覚悟を持つべきだと俺は思うし、殺したという事実を背負うことは殺した者の責任だろ。睦月がしているのは、その責任から逃げているだけだ。殺したのなら堂々としていろ。お前が決めたことだろう?なら、それを背負って生きるべきだ。」
俺は睦月のその態度が気に入らなかった。
殺した側がなにをほざいているんだと、殺したなら責任を負え、殺した事実と向き合えと俺はそういう憤りを感じていた。
それに生きるということは何かを殺したうえで成り立っている。
殺すのが嫌なら死ぬしかないのだ。
うまく伝わらなかったかもしれないが、俺は殺したのならそれを背負って生きろと言いたいんだ。
睦月は呆けていたが、いつしか意識を取り戻していた。
睦月は泣きながら怒りながら嗚咽を漏らすように俺に対して口を開く。
「影宮君に何が分かるのさ。僕の苦しみが痛みが分かるわけないでしょ。君は魔物を殺したことなんてないんだから。わからないくせにそんなこと言わないでよ!!」
俺はその発言にまた怒りを覚えた。
俺は怒気を孕んだ声で睦月に心の内の言葉を吐く。
「ふざけるなよ!!!!。俺がその苦しみが分からないとでも思っているのか。罪悪感だって途轍もないし、その後の周りの変化だって怖いものだ。でも、俺は今生きている。屍の上に立っているんだよ。分かるか、生きるってことは誰かを殺した上に成り立っているんだよ。それなのにお前はその事実から目を背けやがってふざけるなよ!!」
睦月は俺の過去を思い出したのか。ハッとした顔になり、どんどん顔色が蒼くなっていた。
それから、沈黙が続いた。
何分経ったか分からない。
頭が冷えてくると、今のこの気まずい空気をどうしようかという思いがこみ上げてくる。
だが、自分の発言に公開はない。
すると、睦月は俺の目を見て、頭を下げた。
「ごめん、影宮君のおかげで冷静になれたよ。ありがとう。僕が殺した事実は変わらないし、あの肉を抉る感覚が消えたわけでもないけど、僕は生きているから、屍の上に立っているんだね。僕は殺した命の分まで生きるよ。そうしないと僕は逃げるだけだから。」
俺は睦月のその覚悟を認めた。それと同時に言い過ぎたことを睦月に謝罪しようと思った。
俺は睦月に頭を下げる。
「俺もさっきは言い過ぎたごめん。」
俺の謝罪に睦月は笑って答える。
「いいよ、むしろあれくらいじゃないと効果なかったと思うし。」
俺は仲直りした後、どうして魔物を殺すことになったのか問いただした。
どうやら光琉がクラスの大半を誘って、皆で魔物を狩りに行こうと言い出したようだ。
その流れのまま、魔物を狩りに行ったらしい。
何人か護衛もついていたようだ。
ついでに俺は他の転移者の現在のできることや強さを聞いていった。
俺は話を聞き終わると自室に戻った。
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