2,告白
朝日が俺の顔を突き刺す。
俺は目が覚める。
知らない天井だ。
そう言えば、異世界に来ていたんだな。
俺はベットから起き上がり、身支度をしエントランスに移動する。
エントランスには何人かの生徒が集まっていた。
さて、これからどうなるのかな。
俺はこの後の展開を予想しながら、時間をつぶした。
すると、王女がエントランスに来た。
「皆さんお集りのようですね。ちょうどいいのでここまま今日の予定を説明します。皆さんにはまず転移者がどのような存在なのか知ってもらいたいと思います。その講義を予定しています。その後は自由に過ごしてもらって構いません。」
王女曰く。この世界の住人と異世界からの転移者とでは色々違いがあるらしい。
この発言は別に疑う必要もないな。
俺達はそのまま、使用人に案内され講堂に移動した。
その間は特に何事もなかった。
俺達は講堂に着くと、少しすると教師役の人が来るので待ってほしいと言われた。
その間、様々な声が講堂を飛び交う。
俺は睦月達のところに行き、俺の持っていた疑問を尋ねる。
「睦月達はどんな部屋だった。」
俺は、昨日から違和感を感じていた。
確かにいい部屋だったのだが、これを国の要人たちが使うのかと思うくらいの部屋であった。
そして、睦月達の話を聞くと俺の部屋より少しランクの上の部屋に泊っているようだ。
恐らく、特殊な職業を持つ転移者と持たない転移者で意図的に差を作っているな。
まるで早く処分したいみたいな雰囲気を感じる。
特殊な職業があるのとないのとでは大きな差があるのだろう。
俺達が会話をしていると講堂のドアが開き、一人の男性が入ってくる。
そしてその男性は講堂の机に荷物を置き、皆に話しかけた。
「この度皆様の教育係になりました。クラウン・ウォッカと申します。これからよろしくお願いします勇者様たち。」
そうしてそのクラウンと名乗る男は笑顔で挨拶してきた。
俺はその笑顔の裏にある悪意が見え、警戒する。
しかし、光琉はそのことに気づいていないのか、クラウンのことを警戒していない。
警戒心が足りないと言わざるを得ない。
地球にいる状態でも気づけるだろ。
そうして、クラウンが俺たちに対して講義を始めた。
「では講義を始めたいと思います。まず、あなた達異世界人の特異性について説明いたします。」
俺達の特異性?
通常の人種とは何か違いがあるのだろうが、違いを感じ取れない。
「異世界人の特異性は主に二つ。一つは特殊な職業です。本来勇者様たちのような職業を上級職や称号職を獲得するには、条件を満たしたうえで転職しなければなりません。その際新しい職業になるとレベルは一からとなります。なので転職をする人は少ないのです。しかし、勇者様たちは最初から特殊な職業に就くことができるためそのデメリットをないものとできます。」
なるほどな。つまり特殊な職業は上級職や称号職と言うもので、それを最初から入手できる転移者は転職しないから本来のデメリットをかき消せるということか。
確かに強力だがそれなら他の職業の高レベルを使うだけでもいいはずだ。
「そして、職業によりステータスの初期値や上がり幅が違うためこの世界の住人より強くなりやすいということです。」
なるほどな。最初から高い成長率を持っているいい職業に就き、それを国家主導で育成する。確かにこれならば強敵に対応できるだろう。
恐らくこの話は嘘じゃない。これは自分たちの有用性とそれに伴う義務を認識させているのだろう。
「二つ目は魔王への特効です。魔王は常に魔王因子を放ち続けています。その因子に当たると体が崩壊します。レベルの高いものならば耐えることはできますが、ほとんどの生物が絶えることができません。しかし、勇者様たちにはその因子は聞きません。これが勇者様たちの特異性です。」
確かに強力な攻撃を無効化できる存在を自分たちで育て上げて戦わせるのは合理的だ。
そして、この話でなぜ俺が「はずれ」と言われたのか理解した。
つまり、王国が持てめている人材は魔王特効がありいい職業についた転移者だ。
そう言う観点から見ると、俺は平凡な職業についているため強くない。
なら、今後どこかのタイミングで勇者たちに強さでついていけなくなる。
それが俺の死期だな。
ならば俺は死なないためにも他の人より強くならないといけない。
その後はこの国のルールやこの世界の通貨などの常識についての説明が行われた。
それが終わると、俺達は自由時間になった。
自由時間は本当に自由な時間で、町に行ってもいいし、城にいてもいい。町の外に行ってもいい。そして、そこで行う行動は自己責任である。
だから、俺は城の図書館に来ていた。
この世界の常識はなんとなくわかったが、詳細な国の位置や名前、物価・資格などは分からない。今後の行動が自己責任であるのなら自身の行動がどのような意味合いになるのか知らなければいけない。
そもそも、この国の王族は終わっていたが別にそこに暮らす住人がだめだというわけでもないからな。
俺はそんなことを考えながら、図書館で俺の知りたい情報に関する資料を探す。
俺はいくつか見つけた資料を手に取り、図書館内にある共用の閲覧室で資料を読み始める。
その時言語が違うので読むことができないと思ったが、どうやら召喚された影響でこの国の言語が脳内で変換される。慣れなかったがぎこちないが読むことはできた。
その中でも俺の興味を引くものがあった。
『職業・スキル一覧』
気になった俺はすぐにその本を読み始めた。
☆★☆
この本は現在判明している職業やスキルをまとめたものであり、それに対して独自の解釈を説明するものではない。
それではまず職業から、職業はだいたいの物が○○系と分類できる。
そして、同じ○○系の職業でも性能が高い職業がある。それを上級職と呼ぶ、そしてその反対の性能が低い方の職業を下級職と呼ぶ。
また、特異な職業がありそれを称号職や特殊職と言う。
それではまず剣士系の職業だが
・剣士
・大剣使い
・魔法剣士
・騎士
・上級剣士
・聖騎士
・侍
・剣聖
・剣神
次に魔法系の職業だが
・魔法使い
・大魔法使い
・賢者
・魔帝
・エンチャンター
・召喚術師
・錬金術師
・〇魔法使い(闇魔法使いや光魔法使い)
そして、僧侶系の職業は
・僧侶
・回復術師
・聖女
・聖人
・解呪師
戦士系は
・戦士
・大戦士
・狂戦士
探索系は
・盗賊
・シーク
・怪盗
・冒険者
・探索者
・罠師
・漁師
・狩人
・英雄
○○使い系は
・○○使い
・○○帝
・○○聖
・○○神
・○○士
etc・・・・・
・・・
・・・
・
その他は
・勇者
・英傑
などの称号職。
・鍛冶師
・魔道具技師
などの生産職だ。
上級職はいまだ謎が多く判明されていない物が多い。
そしてスキルだがスキルは特定の条件を満たせば入手が可能だが、その条件に職業が入っているため職業によりスキルはほぼ決まっている。
なので職業ごとのスキルを説明しよう。
・・・
・・・・・
・・・・・・・・
☆★☆
この本には今後の俺の方向性を決める情報がたくさんあった。
俺は今後の計画を立てる。
ふと、外を見ると夕方になっていた。
いつの間にそんなに時間がたっていたのだろう。
俺は図書館を出ようとする。
すると背後で何かが地面に落ちる音が鳴る。
俺は振り向くとそこには、一人の少女がいた。
黄金の長髪に深紅の瞳、身長は160㎝ほど見た目十五歳くらいだった。
どうやら、その少女が本を落としてしまったらしい。
俺はただそこに立っていた。
少しも動いてはいなかった。
俺が振り返ったのに気付いたのか少女がこちらを見る。
数秒の静寂がこの場に流れた。
俺はその少女に向かって口を開いた。
「俺は君に惹かれてしまったらしい。君に恋をしたんだ。どうか俺と結婚してくれないか?」
俺は気づけばそのような言葉を放っていた。
そうだ。俺は彼女に恋をした。名前も知らない身分も分からない。正体すら知らないそんな少女に恋をしたのだ。俺はただただその美しい《ソレ》に魅了されていた。
だから俺はいきなり告発した。
すると少女は驚き、呆けていた。そしてその少女は口を開いた。
「えっといきなりなんですか?私はあなたのことを知らないし、会ったこともないですよね。」
「そうだ。ただ俺は君に一目惚れをしてしまった。」
俺は彼女に一目惚れをしていた。
彼女のその容姿や《ソレ》の美しさに心奪われてしまった。
「まずはお互い名前も分からないと会話になりません。自己紹介をしましょう。」
そう彼女がいった。
ならば、俺から名乗るべきだろう。
「俺の名前は鳴瀬 影宮 十五歳だ。俺は異世界から召喚された異世界人らしい。」
「私はグランド王国第二王女 アリシア・グランドと申します。年齢は十五、この国で『邪神に呪われた姫』と呼ばれています。」
俺は、衝撃を受けた。この国の第二王女である点もそうだけどそれよりも邪神に呪われていると言われていることだ。
この容姿で呪われていると言われるのはこの国の人間は見る目が無いんじゃないか?
俺は素直にそう思った。
俺は、そのことについて聞いた。
「邪神に呪われたって?どうしてそんな風に言われているのか教えれくれないか。」
アリシアは俺の問いかけに答えてくれた。
「それは生まれてすぐの時にこの王国にあった呪われた宝珠を私の誕生をよく思わない者たちに使われ、私は呪われてしましました。呪いの影響で私は18歳までしか生き残れません。そしてこの呪いは呪いの所持者が死ぬとその者と最も親しかった者に呪いが移るのです。この呪いを解くには、邪神を倒すかより強力な力で消し去るしかないのです。どうですかこれで恋も冷めたでしょう。」
彼女はそのように答えた。
だが、彼女の言葉は俺の癇に障った。
俺の超えてはいけない一線を越えてしまった。
俺は他の存在に自分のことを勝手に決められることが大嫌いだった。
俺は俺の物であり、俺のことは俺が決める。
俺の中には、そんな強いルールがあった。
しかし、彼女は私の恋の気持ち恋情を勝手に決めつけたのだ。
これは絶対に許せることではない。
「ふざけるなよ。」
俺は冷たい怒気を孕んだ声でそう言った。
その様子に彼女は冷めたからだと思ったのだろうわかりきったような顔をした。
その様子がさらに俺をイラつかせる。
「俺は絶対お前と結婚するし、その呪いだって解いてやるよ。」
俺はそう、彼女に言い放った。
彼女は先ほどと打って変わり、驚きと戸惑いの表情になった。
「なぜですか、私と結婚したら死ぬんですよ。それにこれは邪神の呪いですよ。解けるわけないでしょ。」
「いいや、解くね。俺はその程度で諦めたりしない。けどそもそもお前が俺のことが無理だというのなら俺はお前をその気にさせることを優先するね。」
俺はそう言い放った。
彼女は戸惑っているからか、情報を整理したいのか口を開いた。
「では、返事を考えますのでまた明日ここに来てください。」
「わかった。絶対振り向かせてやるからな。」
俺は、そう言って図書館から去るのだった。
ご朗読ありがとうございました。