5,帝国最強(2)
「始め」
審判の合図と共に試合が始まった。
だが、この試合の結果は既に分かっている。
光琉がラインハルトに突撃する。
だが、ラインハルトは一歩も動かない。
次の瞬間。
光琉は遥か上空に吹き飛んだ。
観衆は何が起こったのか理解できずにざわめく。
そして、光琉が地面に激突する。
光琉は骨が何本も折れ、内臓も傷ついている。
その悲惨な光景に何人も目を逸らす。
だが、徐々に光琉の体が再生する。
これは光琉の持つ光剣と言う剣が原因だ。
これの効力は強い聖属性と身体強化、再生機能など計6種類ある。
この剣をなぜ光琉が持っているかと言うと、この剣は勇者と言う職業に対しての相性がとてもいいのだ。その相性の良さは聖剣の次にいい。
そうして、徐々に再生していく。
その間ラインハルトは微動だにしない。
再生が終わろうとした時、光琉の四肢が四散した。
この状況は先ほどよりもひどく、恐らく光剣でも再生は時間が掛かるだろう。
審判は慌てて、終了の合図を鳴らす。
そして、すぐに救護班が光琉を回収する。
観衆は何が起こったのか分からずに困惑している。
あれに勝つにはどうすればいいのか俺は考えていた。
恐らく、先ほどのあれはラインハルトの力の残滓ともいえる物が光琉に触れたことによるダメージだろう。
つまり、これを対処するには残滓に触れないか。残滓に耐えられるようになるしかない。
ただ、前者は不可能に近い。なぜなら、魔法の発動準備や呼吸でさえ残滓は発生するからだ。
それを全部防ぐなど人間の演算能力では不可能だ。
俺は今は勝てないと結論を出し、会場を後にする。
俺はエントランスにて、帝国軍の歓迎パーティーに出席していた。
理由は今回の目的が俺達転移者であることだ。
テーブルにある食事を皿に取りながら俺はそんなことを考える。
今日は立食式のパーティーなので、俺は立ちながら食事をしている。
俺が食事をしていると睦月がこちらに来た。
「影宮君。一緒にいいかな。」
「ああ、いいぞ。」
俺はそう返答した後、睦月と談笑していた。
「少しいいかな。」
俺たちが談笑していると、後ろから声を掛けられた。
俺は咄嗟に振り向く。全く気配がしなかった。
そして、そこにいたのはラインハルトだった。
「始めましてラインハルト中将。私は異世界から転移してきた転移者の鳴瀬 影宮と言います。こちらも転移者である私の友人の睦月です。それで要件とは何でしょう。」
俺は咄嗟にラインハルトに対して仮面を被る。
俺の反応にラインハルトは笑いながら。
「ふふ、すまない驚かせてしまったかな。なに別にそんなにかしこまらなくてもいい。私は君に用があってきたのだ。影宮君。」
俺はその威圧感に潰されそうになる。
そして、どうやら俺に用があるようだ。
しくじったな。睦月の情報まで流すんじゃなかった。
「それで私に何の用でしょうか。」
俺はそう問う。
「君を我が帝国に招待しようと思ってな。なにそんなに警戒しないでくれ、ちゃんとした理由があるのでな。理由は二つ、一つ我々も魔王対策の人員が欲しいということ、一つ私個人として君の実力を見込んで王国で腐らせるのは惜しいと思っただけだ。どうかな、検討してくれると嬉しい。別に断ってくれても構わないし、答えも急ぐつもりはない。」
そう言うと、ラインハルトは去っていった。
チッ、面倒くさいな。どうやら、ラインハルトには奥の手がばれているらしい。仕方がない切り替えよう。
まず帝国に行くメリットを考えよう。
一つ目は最高深度のダンジョンがあること。二つ目はうまくいけばアレが手に入ること。三つ目はあちら側には最高兵器があること。
次にデメリットだが、一つ現在の地位を捨てること。一つ恐らく今よりも監視を付けられること。一つ恐らく、今後戦争に参加しなければいけないこと。
最後にアリシアと会えなくなってしまうことだ。
正直言って最後以外のデメリットはあってないようなものだ。
そもそも当然の要求だしな。
だが、アリシアと会えなくなることはぜったいにだめだ。
ならどうする。もしこれを断れば王国帝国対魔王軍と言う今の構図が、王国対帝国対魔王軍と言う構図に変わる。そうなった場合帝国が勝つ未来が見える。そうなれば俺は捕虜として扱われるだろう。
最悪、アリシアと俺両方死ぬ。
だが、まあ何とかできると思う。まだ返答まで猶予があるのだ。
その間に対策を講じれば、間に合うはずだ。
俺はそう考えた。
そして、パーティーが終わり、俺はアリシアがいるであろう図書館に言った。
そこにアリシアは居た。
俺はアリシアの方に向かう。
アリシアはこちらに気づいたのか振り向く。
「今大丈夫か?」
俺はそう言葉を吐く。
俺の真剣な様子に驚いたのか。アリシアの表情が真剣なものになる。
「どうしたのですか、影宮君。」
「帝国から軍が来た。理由は転移者を見定めること。その軍の中にラインハルト中将がいた。だから、社交に出ていないアリシアに共有しようと思ってきた。もう少し詳細な話がしたい。」
俺がなんでこんなに焦っているかと言うと、ラインハルトはこの世界では有名な人物なのだ。この図書館で世界のことを調べればすぐに出てきた。
ラインハルト・アレクサンドリア・ナイトローズ中将は帝国最強と言われている。彼の功績はすさまじいもので、単独で魔族の軍1000体を無傷で殲滅。帝国内の裏切り者をすべて始末する。魔王軍幹部を計三名単独撃破など、上げればきりがない。
これほどの功績を立てているため彼は帝国最強であり、人類最終兵器と言われている。
俺が焦っているのはこれほどの戦力を王国に送ってきたということだ。
これが表すのは戦略的に見て、脅しもしくは王国を滅ぼそうとしていると思われる。
もし、王国が滅んだとしてもアリシアのだけは守るために逃がすために情報を共有しようと思ったのだ。
「あのラインハルト中将ですよね?」
アリシアは驚いた様子で、口を開いたまま呆けている。
その後は詳細な説明をして、俺はすぐに次の場所に向かった。
俺は人気のない町の路地裏に来ていた。
ここなら大丈夫だろう。俺は背後にいる気配の方を向く。
そう、俺はつけられていたのだ。
誰かと言うと、王国の恐らく暗部だろう。
こいつらは、俺たちが転移した後からずっとつけている。
しかし、まだこいつが俺の下から離れた痕跡も気配もない。
だが、恐らくこれからの俺の行動は王国側にとって不味いものだ。
だから、今この場でそいつをどうにかしないといけないわけだ。
「おい、出て来いよ。」
俺がそういうと一つの人影が現れた。
全身をローブで包んだ人物だ。
「お前に話がある。」
俺がそう問うと、そいつは口を開いた。
「いつから気づいていたのですか。」
どうやら、俺がいつからつけられていることに気づいたかのか気になるらしい。
だが、それに関しては不必要な情報だ。
ここで情報を漏らすリスクはとる必要はない。
「俺は話があると言ったんだ。そんなことはどうでもいい。」
俺がそういうとそいつは俺が口を割らないと思ったのか。姿を消した。
と言ってもただ気配を隠して、移動しただけだ。
別に知覚できないわけではない。
単純に身体能力が足りないのだ。
そいつは俺の背後に現れ、俺にナイフを突き刺そうとしてくる。
俺はそれをもろに食らう。
俺の肩から大量の血が流れだす。予想通りナイフには毒が塗られていたようで、俺の体がマヒする。ただ幸い魔力制御に影響は出ていないようだ。
静かにそいつが俺に告げる。
「もう一度聞きます。いつから気づいていましたか。」
「・・・・」
「はあ、話しませんか。仕方ありません。尋問をするしかないようです。」
次の瞬間、俺の足にナイフが刺される。
そいつは足、腕、背中、指とどんどんナイフで刺していく。
だが、俺は一言も発しない。
俺の負けは濃厚だ。
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