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09. 一方、その頃レオンは…② 【追放パーティ視点】

<<Another View:レオン>>


ここは宿のレストラン。


「おい!!メシがまずいぞ!!こんなので金取れると思ってんのか!?」


ハーゼルゾネット城下町の高級宿を借りたが期待はずれだった。

宿内レストランの内装はまぁいい。

だが朝食のソーセージの肉がスカスカだ。食えたもんじゃない。

俺様はイライラしている。



「まぁまぁ、レオンさん、機嫌を直して

 これから王都からのクエストです、ここで評価を上げれば我々の冒険者ランクが上がること間違いなしです」


白髪の回復術師のロレンスが俺をなだめる。


「そうよぉ、SランクからSSランクになれば国からの膨大な活動資金がもらえるわぁ、それに比べたら朝食がどうとか些細な問題よぉ」


胸元を開けた魔術師の衣装を着たレプティルは朝からワインを嗜む。

彼女のピンク色の髪は今日も一段と手入れされている。またお偉いさんとコネを作るつもりらしい。


「我々なら…楽勝…」


無口のモルゲンは自前の大槌をレストラン内で素振りしている。ウェイトレスはこちらを駆け寄ってくる。



「あの…お客様。宿内での武器の使用はご遠慮いただけませんか…?」


俺様は寄ってくる店員の女にガンを飛ばした。


「俺様の仲間が士気を高めてんだよ。今ここでやめて、それが原因でコイツが戦場で死んだらどうすんの?お前が責任とってくれんのかァ?」


女は怯えている。もう何も言ってこない。

そうだよな。それが賢い。

お前ら負け組はただ黙って俺らのサポートをしてればいいんだ。



俺様の視線は朝食の皿に戻る。


「……そうだな。今【獅子(しし)眼光(がんこう)】は大事な時期だ、Sランクの俺らがSSランクになる大チャンスなんだ、ランクを上げれば2ヶ月後の【王宮武道(おうきゅうぶどう)大会(たいかい)】で有利になる、それまでにランクを上げてやる」



【王宮武道大会】は各国の冒険者が集まる、1年に1度の最大の祭典。冒険者は互いの腕を競い合い、その年の最強の冒険者を決める大会だ。


冒険者同士が腕を見せあい、交流し、お互いを刺激し合う狙いがあるらしい。


名声を上げれば、巨額の富と地位が手に入る。

大会の参加資格は冒険者ランクA以上だがそれ以上のランクになると、一次試験免除など、待遇が良くなるらしい。冒険者ランクは高いに越したことはない。



レプティルはクエストの紙をペラっとめくる。


「えーっとぉ、今日の王都クエストはぁ、宮廷内の城壁修繕の警護ね」


「警護……くだらん」


「確かに城壁修繕中に魔物に襲われたら大変ですが…私達をわざわざ雇うほどですかねぇ?」


「まず、こういうどうでも良さそうな仕事を任せてみて俺らを試しているんだろうよ、全く…王都の奴らも小賢しいぜ」



今日は楽勝そうだ。俺様のスキル【雷刃(らいじん)】を使うほどでもなさそうだ。

皆朝食を食べ終わったようだな。


「……よし

 じゃあお前ら定例会議だ……


 俺の夢は、魔王を討伐し、英雄になることだ

 この夢を叶えるには、お前らの協力が必要だ

 俺らが魔王を討伐した後に……お前らもやりたいことがあるだろう


 さぁ夢を語れ!!」



「私は大臣になって国を動かしていきたいですねぇ」

「アタシはイケメンをたくさん集めて逆ハーレムを構築したいわぁ♪」

「世界一立派な……道場の師範……」


「いいぞ!!お前らは立派な夢を持っている、素晴らしいことだ、お前ら見ただろ、あの負け犬リュックの顔を!!」


俺様は息を大きく吸う。


「あいつこそが夢を持たない、野望のない雑魚の成れの果てだ!!

 夢のないやつは下等だ!!本当はなりたい自分があるのに実力やスキルがないから、夢を持たないフリをしてただ指を咥えてただ見ている!!努力をしない!!最初から諦めてやがる!!」


「そこの料理人もそこの皿洗いも夢に敗れた者の成れの果てだ!!お前らはあそこに立ってる奴らとは違う!!」



できる。

英雄になるのは夢じゃない。

俺様には無限の未来と可能性が待っている。

俺様はもっと羽ばたけるんだ。


 ・

 ・

 ・


王城の外壁に設置されていたドアが老朽化していた。

今日はこれを取り替えるまでの楽勝の仕事だった。

修繕士の2人は早速作業にとりかかる。

そして立派な甲冑を着た王宮兵士は俺らに軽く挨拶をすると、キョロキョロと見渡しだした。



「あれ…?今日はあの人はいないのかい?」


「…?」


「ほら大きなバッグを持った人だよ、一見気弱そうに見える」


「アイツなら俺らについて来れなくて出ていきましたよ」


番兵はどうしようと言った様子で考え込んでいる。


「うーん…そうだったかぁ、ちょっとマズイなぁ」


この男は何を悩んでいるんだ。


「いやね、ちょっと今日の魔物は手強いかもしれない、もし襲われたらと考えたら不安でね」


なんだ?この外壁の森は俺らの恰好の狩り場。魔物の強さも把握済みだ。


「どういうことですか?もしかして新種の凶暴な魔物でも?」


ロレンスは右手を胸に置き、紳士的に尋ねる。


「そういうわけじゃないんだ、すまないけど他の兵士を呼んできていいかい?」


なんだこいつ。俺らの力量が計れないのか?



見る目がない。王宮の兵士とはいえ所詮下っ端。

夢を少しは叶えられたようだが、こいつはもう上を狙えないだろうな。



兵士を4人ほど連れて、ドア1つに対して警備が9人の大所帯になってしまった。

うぜェな。これじゃあ評価が上がらねぇじゃねぇか。

1時間もあれば終わる作業。

レプティルは朝に飲んだワインで少し酔っ払っているし、ロレンスはあくびをしている。モルゲンは大槌を素振りをしている。



立っているだけで退屈だ。しかし何だ今の。俺様を見くびりやがって。

俺様は番兵の見る目のなさに怒りを覚えていた。


そのとき、城壁外の森奥から奇妙な声が聞こえてきた。



キー……キキィィィィィー…


「来たな」


ウィンドイーグル3体が飛んできた。風を起こす大鷲だ。

城壁に纏う聖結界で雑魚魔物が空から攻めることは不可能だが、この修繕中のドアの周りは結界の効力が弱まっている。入り込んでくるかもしれない。


王宮兵士も槍や剣を構えていた。

残念ながらお前らに出番はない。


「いけ…レプティル」


「はいはぁい♡」


<<ユニークスキル発動…【(ジャ)()】>>


レプティルの目の虹彩は蛇のように縦に伸びる。

俺の指示通り、レプティルは兵士を見つめた。


「ちょっと…君!!相手が違うぞ!!」

「う…動かない!!」


目を見た相手は動けなくなる。

時間は対象によって違うがおよそ10秒から30秒。

拘束時間は対象の魔法耐性によって変動するが、いずれにせよ致命傷だろう。

【獅子の眼光】でも最強レベルのユニークスキルだ。


「なんのつもりだ!!」


俺様はわざとらしく、勇敢な背中を見せる。



「荒々しくてすみません。今日は俺たちを見てほしいんです」


ウィンドイーグルはこの森では強い魔物だ。しかし俺らは今まで何十匹もこいつらを狩ってきた。アピールにはもってこいだ。

ウィンドイーグルは獲物を捕食するようにその鋭い脚をこちらに向けて飛んでくる。


こいつらの爪は鋭いが、斬撃に弱いことを知っていた。

俺様は兵士に太刀筋がよく見えるようにロングソードを振るう。


ザシュ!


「…フン」


ウィンドイーグルを一刀両断した。


「バカ!!よく見ろ!!」


兵士は叫ぶ。視線は俺様の剣先にあった。


「は?」


一刀両断したハズのウィンドイーグルは俺様の剣先にガッツリとしがみついていた。

どこも切れてはなかった。


「な…なにぃ!?」


剣先から爪が離れたかと思ったそのとき、その爪先はこちらに向いた。

俺様は鋭い爪を胴体にくらう。鎧に3本の鉤爪の跡が刻まれている。


ザシュゥゥッ!


「レオンさん!!」


のけぞる俺様のもとにロレンスが駆けつけた。


「今回復します!!」


<<【治癒(ヒール)】…発動開始>>


ロレンスの回復は一級品だ。きっと傷は全快する。


………………。


しかし…


詠唱なげぇぞ!!まだか!?



「お…おせぇぞロレンス!!」


「おかしいですねぇ…いつもならとっくにもう」


ロレンスはいつになく焦っている。


「おかしい…!!【必中(ひっちゅう)】効かない…相手死なない!!」


モルゲンの必中必殺も!?どうなっているんだ!?




こいつらがモタモタしているうちに敵は仕掛けていた。

ウィンドイーグルは翼を扇いで竜巻を作る。

設置しようとしたドアはやすやすと吹っ飛んでしまう。


「さ…させないわよぉ!!」


<<【光の障壁(バリアー)】…!!発動>>


レプティルはバリアーを張る


「でかした!!これで竜巻を凌げる!!」




パリパリパリッ



しかしそのバリアーは卵の殻のように破れ、砕け散ってしまった


「嘘でしょ!?」


そしてレプティルは竜巻によって吹き飛ばされ壁に叩きつけられてしまった。


「がはっ!

 なぜだ…なぜ…今までは防げてたのに……

 王宮兵士の前だぞ!?お前ら!!手を抜くんじゃねぇええええええええ!!」


【蛇ノ眼】の効果から開放された王宮兵士は、先程の烈戦が嘘のようにあっさりウィンドイーグルを処理し、全員の命の無事を確認し合ったあと、こちらに駆けつけた。



俺様は笑ってみせた。


「こいつら調子がでなくて…きっと緊張しちゃったんですよ…ハハハ」


兵士は笑っちゃいなかった。


「……君は仲間が手を抜いていると言っていたね。

 アドバイスをしておくよ、自分の実力を大きく見積もるのはやめなさい、死んでしまうからね」


「ち…違う…本当に調子が悪くて…ほら…俺の【雷刃】まだ使ってないですよ……」


「違うのは君の方だ、これが君の実力だ」


兵士はため息をつく。そして哀れんだ目でこちらを見た。




「かわいそうに

 君たちはあの青年に見捨てられたんだね」




兵士達は報酬の入った袋だけを地面に投げ捨て、一度も振り向くことなく城へ帰っていった。



「な…何を言って……」


青年って誰だ…!?

まさかリュックのことか!?

俺様はあの兵士の言っている言葉の意味が理解できなかった。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


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[良い点] 追放側視点美味しい! [一言] あ〜こういうの大好きです!追放側視点大好物。みんな気付いてないけどリュックがパーティー底上げしていたのかな?気遣いの彼が、みんな戦いやすいようにきっとフォロ…
[良い点] 俺様レオンざまぁが素晴らしい
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