01. 一方、その頃レオンは…⑥ 【追放パーティ視点】
ひとまず更新はここまでです。
現在2章の続きを執筆をしているので
続きのエピソードの執筆をお待ちください。
<<Another View:レオン>>
レプティルがいないぞ!!
宿周辺を探しても、行きつけの店のどこを探してもいなかった。
そしてもうひとつ不可解なことが起きた。
それは、Sランクアイテム…【強欲者の大包み】がなくなっていたことだ。
最初は信じなかったが、捜索から二時間。
俺様はレプティルがSランクアイテムを持って逃げたと判断した。
俺様を裏切ったのか……?
アイツは勝ち馬に懸け続けるタイプであることを俺様は把握していた。
つまり…アイツは……
俺様に価値を見いださなくなったということか!?
事態はこく一刻と深刻になっていった。
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昼下がりの宿の中。残ったのは俺様とロレンスとモルゲン。
俺達のレプティルへの悪口は止まらなかった。
あいつの無意識の見下しが腹立つだの、嫌な仕事に消極的なところとかが嫌いだだの、一度も口にしたことない悪口が次々と出てきたのだ。
しかし、俺様が一番腹を立てていたのはリュックに対してだった。
俺様はアイツに裏切られた。
穏便そうな顔して、一番弱そうな空気を出していたのに、
強いスキルを隠し持っていたからだ。
こうして俺様達が崩壊していくのを想像してほくそ笑んでいるのだ。
「いい…あんな奴ら不要だった!!俺様が英雄になるためには…要らなかったんだ!!」
俺様がひとしきり悪口を言い終わると誰かが呟いた。
「もう……少し疲れました…」
こんな弱気な発言をしたのは、ロレンスだった。
「限界……かもしれん……」
モルゲンも今日の素振りを欠かしたようだ。筋肉のハリがない。
「どういうことだ」
「気を悪くしてしまったら、すみません、ちょっと我々は焦りすぎているんじゃないですか、英雄という称号は我々にはまだ荷が重すぎるのではないかって…もっと実力をつけて、ゆっくり目指していけたらと」
「ロレンス!!そんなこと言ってる場合かよ!」
ロレンスはビクっと肩を震わせた。
「俺様達は……二人から裏切られたんだぞ!?あいつらは悪だ!!」
俺は息を吸い込んだ。
「英雄が悪を滅ぼさないでどうすんだよ!!」
俺はロレンスの肩を持った。その肩はプルプルと震えている。
しかし…何も言わなかった。
「俺はやるぞ」
「何をだ……レオン」
殺す……とはさすがに言えないし、するつもりはない。
俺様たちが手を汚さずに、確実にリュックに屈辱を与える方法……。
そうだ……。
「俺様はリュックの実家の場所を把握している」
今の発言に二人は目を見合わせた。
そして俺にはアイツに年頃の妹がいることも知っている。
田舎ののんびりとした農村で育った、穢れを知らない少女だそうだ。
「知りませんでした…あのリュックに妹がいたことなど」
「語りだしたら止まらない野郎だった、自制している節はあったんだろうな」
「まさか……レオンさん」
「何もしねぇよ…ただ、仲良しするだけだ」
俺の口角は上がりきっていた。
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馬車に乗ったのは、俺様とロレンスとモルゲンの3人だ。
【獅子の眼光】は多少躓いたかもしれない。
しかしそれは俺への試練であることを理解した。
俺様は悪を倒さなければならない。
そのためには悪に最も屈辱的な気持ちを味合わせる必要がある。
それが英雄ってやつだ。
馬車が揺れる。
リュック…俺様はお前みたいな卑怯な奴が大嫌いだ。
俺様はリュックと共に旅をしていた2年半のことを思い出していた。どうでもいい思い出も、アイツの陰謀のことを知ると見る目が変わってくる。
そう、これはアイツが【獅子の眼光】に加入したとき、積極的に俺様の荷物を持つと言い出したんだ。
リュックとのやり取りを思い出す。
「俺、それくらいしかやれることないから…レオンは剣を複数持ちたいんだろう?それだったら俺が持てばレオンのバッグの載積量を圧迫せずに済む」
「おお、すげぇ!お前のおかげで色んな武器を使えるぜ」
「俺、レオンの英雄になるって夢応援したいんだ、だってレオンは俺のことを強いって言ってくれたから」
今日の今日まで忘れていた記憶。
もちろん俺様はリュックに対して強いなどと思ったことはない。
全てはアイツを気分よくさせて乗せて、体の良いパシリにしたかっただけだ。
一見、理想的なパーティだった。だからこそ俺は許せなくなった。
アイツは俺様の英雄の夢を応援すると言いつつ、俺様の夢をずっと妨害しようとしていたから。
リュック。
お前の妹が大変なことになるぞ。
でもそれはお前のせいだ。
因果応報という言葉がある。
しかしそれは的確ではない。
因果は螺旋。
お前が悪いことをしたら、返ってくるのは別の弱き人間なんだ。
リュック。
お前は俺様の荷物を積極的に持とうとした。
リュック。
【獅子の眼光】が早くランクアップするためにお前は様々は雑用をした。
全ては俺様達の積み重ねを崩すために。
俺様達から成長する機会を奪い、その代わり地位を与え、そして台無しにする。
俺様はお前を絶対に許さない。
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数日後。
馬の脚が止まる。
着いた。
のどかな農村だった。
俺様は畑で収穫に勤しむ老人にリュックの友人であることを告げた。
「お~…あの親切のリュックかいな、元気にしとっか?」
「ああ、アイツは元気だ、ちょっと妹さんに伝えたいことがあって」
「妹…?ポーチちゃんのことかい?それならあそこに」
老人が指差した方向には、純朴な白衣のシスターがいた。
彼女は白く大きな帽子を被った三編みおさげで、髪の毛の色はリュックと同じで赤みがかった茶髪だった。
大きなパンを真っ白な修道服の長い裾部分をバスケット代わりにしていて、村の人に配給していた。
リュックの妹…聖職者だったのか。
意外だ。リュックに信心深いところなんて一つもなかったけどな。
「ポーチ、バスケットに入らなかった分は持ってこなくていいんじゃよ」
「レンジさんは最近食が細いんですから、もっと食べなきゃ、ある日ころっと死んじゃいます」
「ポーチが大食いなんじゃよ」
「おせっかいな子じゃのう、そういうところは兄譲りじゃわい」
そう言われると少女はすごく嬉しそうに微笑んだ。
「皆に神の祝福があらんことを」
その少女はこちらの姿に気付いた。
友人であることを告げると彼女はおそるおそると近づいてきた。
「おにい……いえ!兄に何か…ありましたか?」
「……君のお兄さんは……犯罪を犯し、捕まった」
「え…」
ロレンスとモルゲンは驚いていた。
もちろん嘘だ。この女を籠絡するための。
そして一番驚いていたのは目の前の女だ。
「え……兄のリュックが……ですか?」
ポーチというあの忌まわしいリュックの妹は案の定、たじろいでいた。
ぐぅ~~~……
「あ!」
こんなときに、この女はお腹を空かせていた。
緊張感がない。
「あははは……」
女はお腹を押さえて、恥ずかしがっていた。
リュックを彷彿させる能天気な顔だった。
「詳しい話がしたい。どこか落ち着ける場所はねぇか」
「ええ…それなら私と兄の家があそこに」
それは家というより、小屋というべき場所だった。
口ぶりからしても裕福でもなく、両親は健在ではないようだ。
少女は俺様たちを疑う様子もなく、
あろうことか男3人を家の中に招き入れてしまったのだ。
ドアを開ける。
ろうそくの明かりをつけてまわる少女の後ろで、
俺様は少女を睨み、ほくそ笑んでいた。
「面白かった!」
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