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26. 最強の処女決定戦!

 俺達一行は無事合流を果たし、濃い霧を抜けて、湖のほとりにたどり着いた。水は限りなく澄んでいる。


 「もしかしてあの方が、ユニコーンではありませんか?」

 

 キューンの指したのは、湖の上に立つ、一匹の白馬だった。

 その馬は明らかに異質な雰囲気を纏っており、角が生えているだけではなく、まるで宙に浮いてい るかのような浮遊感があった。


 (…人の仔よ)


 「脳に直接声が…!」


 (君が例の青年か…)


 「! 俺って有名なんですか?」


 (【広域感知(こういきかんち)】で見ておったが、むやみ森林を傷つけるのはやめなさい)


 「すみません」


 (しかし、君の活躍には目を見張るものがあった、仲間の女の子を守るため、あそこまで本気で戦える男がいるとはな)


 「……旦那様、怒ってくれたの……?」


 「あれ、リュックくん確か逃げてきたって」


 「リュック様は慎ましい方なんですね」


 先ほどの戦闘はミオ達には逃げてきたと説明した。仲間のために本気を出したなどと報告するのは照れくさかったからだ。


 それなのに暴露されてしまい俺の顔は赤くなった。


 「ふふリュックくん……かわいいね」


 ミオの小声を俺は聞き逃さなかった。にやにやしやがって、ミオめ。


 (人の仔よ、ともあれ用はこの我の角だろう?持っていくが良い)


 「こんなにもあっさりといいんですか?」

 

 (ああ、ただし条件が一つある)


 来た。


 (我に処女の抱擁をいただけないだろうか)


 「ん…?」


 (処女とは、ヴァージンのことだ)


 「は…はぁ」


 (我は清純な少女を好む、もちろん悪いようにはしない、必ず角はやろう、ただ少女の優しさの一部に触れたいのだ、やましい気持ちなど毛頭ない、ただ忘れられない思い出が欲しいだけなのだ、少女の体温を感じていたい。我を毛並みに沿って撫でていただきたい、いや、本当に、そんな後ずさりしないで欲しい、マジで大丈夫だから、信じて)


 ユニコーンの衝撃発言に動揺したが、ユニコーンと処女の関係性は有名だ。俺たちは平静を取り戻し、結局この中から1人の処女を選んで抱擁することになってしまった。


 しかし誰を選ぶのかというところがなかなか難しかった。


 「ミオ様は経験者でしょうね、リュック様との関係もありますし」

 

 「え…!? 私まだ…」


 「え…とはどういうことですか、まだ性行為に至ったことはないということですか?」


 キューンはきょとんとした口調で尋ねた。


 「あはは、まだ…かな?なんかねー…えっちはまだ雰囲気的に…えへへ」


 ミオはたどたどしい。当たり前だ。俺とミオが恋人関係というのは嘘だからだ。

 しかしキューンはお茶を濁らせてくれなかった。


 「いけませんよ!ミオ様!いくらプラトニックな関係でも男の人はどうしても身体の関係を求めてしまうものです!いずれはえっちしなくてはなりません!」


 キューンは恋愛スイッチが入ってしまっていた。鼻息が聞こえてきそうな勢いだ。


 「いやぁ…勇気がでなくて…あはは」


 「わかります…わかりますよ…!乙女たるものなかなか言い出すことはできません!しかし、昨今はきちんと言い寄る男性は希少です、こちらが勇気を出すことが大事なのです!こういうときは期限を決めておくといいでしょう!いつまでにリュック様をベッドに招き入れるか今決めるんです!!」


 1年後かな、とか言って話題をそらそうとしたが、キューンは逃してくれなかった。

 ミオの発言にダメ出しを繰り返し、期限はどんどん短くなっていく。そしてミオは恥ずかしそうにその言葉を口にした。


 「ら…来週末までにはリュックくんとえっちしたいとオモイマス…」


 キャー。

 キューンだけが目を輝かせて盛り上がっている。アリシアはよくわからない顔で手をパチパチしていた。


 俺はと言うと、正直すごくドキドキしたし期待が膨らみきっていた。

 しかし、このままでは冗談にならない雰囲気になっていたので、茶化すことにした。

 俺は顔を覆うミオに近づいて小声でさっきのお返しをした。


 「ミオ、今のかわいかった」


 「うるさいなぁ゛!」


 ミオは露出した背中まで汗がダラダラだった。



 「じゃあキューンちゃんはどうなの?処女?」


 ミオは問いただした。するとキューンは慌てだした。

 

 「れ…恋愛なんて、わ…私ごときには早すぎます…!」


 先ほどとはうってかわってキューンが慌てだしたがすぐに取り繕った。


 「私はメイドで騎士です。恋愛など身分不相応です、身も心も清純。ユニコーン様の相手をするのもきっと私になるでしょう」


 「……キューン……この前……お父様の書斎のえっちな小説読んでた」


 「アリシア様ぁ!!?」


 「持ち出して……部屋で読んでた」

 

 「し、し、知ってらしたんですか!?」


 「女密偵が……相手国の拷問官に……夢中……」


 「中身まで!!? か…勘弁してくださいよぉぉ」


 キューンの金髪は乱れてしまって、涙を浮かべていた。

 キューンもきっと処女なのだろう。しかしハードなプレイに興味があるようだった。


 「最後にアリシアちゃんは誰か男の子と抱き合ったことある?」


 「…………」


 アリシアは人差し指を口にあてて思い出している。


 「まぁ、ないよね、じゃあこの中でランダムで…」


 「……あるよ」


 「うん、そうだよね、じゃあくじを作るから……」


 「「「あるの!?!?」」」



 俺たちは驚いた。


 聞いてた話と違う。アリシアは男っ気がなく恋愛にも最近まで興味なかったハズ!アリシアが抱き合った相手…それはいったい!!


 「旦那様が………私……持ち上げてくれた…」

 アリシアの頬はぽうっと赤くなっていた。

 だよな。


 全員が安心した表情を浮かべた。

 これで皆が経験はないことがわかった。くじを作ろう。


 (待て……)

 「?」


 (人の仔よ……我は処女を求めたが、それは性行為を行っていなければいいと思っていないだろうか)

 

 「は?」

 

 (我は身体の処女と同様に精神的な処女性も求める、貴公らは、結局このリュックという男に気が向いているではないか、男と仲良さそうに話す女など、処女の風上にも置けないのではないか!!!!!!!!)


 「はぁ…」


 (貴公らの中に処女などおらぬ、立ち去っていただこう!!!!そして別の処女をここに連れてきて、我に抱擁させるのだ)


 「アリシア、お願いしていいかな」


 「はい、旦那様」


 (ぎゃあああああああああああああ)


 ゴキゴキゴキ


 アリシアはユニコーンに熱い抱擁をかました。

 すごい。ユニコーン相手に関節技。

 ユニコーンは前足でアリシアを抱きしめる腕を何度もトントンとタップしている。


 きっと忘れられない思い出になるだろう。

 俺たちの脳内にはユニコーンの叫び声が鳴り響いていた。




  ■



 ちなみに俺たちは無事にユニコーンの角をいただいた。

 親切なユニコーンありがとう。

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[一言] 親切なユニコーンありがとう!(笑)
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