25. 荷物持ちの脳筋無双#
惑わせの森の中層部。
ドスンドスンと地面が揺れる。
俺たちは何か大きなものがやってくると確信した。
「で…でかすぎないか?」
音のする方角を向くと、そこには2階の建物ほどのオーク3体がこちらの様子を覗いていた。
そのたくましい手には棍棒が握られている。
キューンは大盾を前に構えた。
「青い肌!?こいつらはA級モンスターのギガントオークです!!」
「くくく…!?こいつぁいい来客ダ…この辺りは良い女が集まるカラナァ…」
「人語を話すのか!」
言語を司るということは知能が高い証拠だ。そして身体の大きさは俺よりもアリシアよりも遥かに大きい!
……早急に終わらせよう。
俺はサイドステップでギガントオークの周りを回り込み、視界から消えると、ギガントオークの頭上に飛び上がり、ブロードソードで首を斬ろうとした。
サシュ…ガッ!!
しかし手で止められてしまった。
なぜだろう、この攻撃力なら手くらい切断できるハズ!
「おおっと…!知らないのかなァ…?ギガントオークの骨は鋼鉄よりも固いんだゼ…?てめェ如きに斬れるわけねえだろォよ!ガハハハハ」
周りのオークも下品に笑う。
オークは剣を引き抜こうとした俺を大きな手で握りしめた。
「く…」
「ココニ丁度3人の女がいるなァ?こいつらを俺らに捧げなァ…慰めものが欲しかったンダ…!」
「!」
俺はこの大きい女、俺はこの小さいが胸は大きな女、この可愛い服の女。と各々の希望を口にしている。
皆は気持ち悪がっていた。
俺も下品なオーク達の発言に嫌悪感を示していた。
「嫌だ……皆を渡すものか…」
「独り占めすんじゃネェヨ!!俺らにもわけロ!!」
オークは手の力を強める。
「ぐっ…!」
「抵抗はヨセ!!お前が抜け出せるワケナイダロ!」
いや。
実際のところ、力は強いが抜け出せないほどではない。
俺はこのオークに握られることによって、逆に相手の強さを把握しようとしていた。
この肉の厚み…筋肉量…
…よし。
俺はキューンに頼み事をする。
「キューン!ポータルを敷いてどこかで避難するんだ!ここではない!遥か遠くで!」
「しかし!それではリュック様が…!」
「旦那様……私……戦う!」
「いいから!」
アリシアは俺の顔を見ると、俺の意図を汲み取ってくれた。
キューンは釣られるように【En:Portals】を使ってくれた。
「リュックくん…!リュックくん……!」
ミオはアリシアに抱えられながら、空間に吸い込まれていった。
「何ぃ!?女どもが消えタ!?てめぇ!!やりやがったな!!」
「よし…皆安全な場所に行ったな……」
ギガントオークは俺を地面に叩きつけた。
「最期にかっこいいとこ見せようっテカ!?自分だけは囮になって逃がそうってか!?」
「小賢しいんだヨォ!!」
オークは俺を蹴りとばす。
俺は15メートルほど後ろに吹っ飛び、俺は地面に這いつくばる。
「おマエはチギッテコロス、知ってるカ?このモリのホントウのおそロシサ」
「ガハッ…この森のことを教えてくれるのか、最近のオークは親切なんだな」
この森のキノコの魔物や植物は、人間の死骸を速やかに隠してしまうそうだ。
惑わせの森において死体の発見は相手に警戒心を与えてしまう。それを防ぐために、それに順応した魔物が住み着いている。
「オマエのシタイは見つからない。そして戻ってきた女ドモはオマエは探してこの森をシヌまでサマヨウのだ、そのマエにオレたちがオカすがな」
ギャハハハハハ
俺は彼らの下品な発言に強い不快感を覚えた。
「オトリにふさわしい末路ダ!!ギャハハハ!!」
「囮…?誰がそんなこと言った?」
「ア……?」
水を差したことを言ったせいで、オークも同様の不快感を覚えたようだ。
「今から俺はお前を殺す」
「プッ…」
アーハハハハハ!オークの笑い声がこだまする。
オークは俺のブロードソードを遠くへ投げ捨て、口笛で周りの魔物を呼んだ。
人食いの木……マンドラゴラ……毒を振りまく大型の蛾。厄介な魔物ばかりだ。
「カッコつけてんじゃねーヨ!!」
「女を逃してむしゃくしゃしてんだヨ!お前の死体を皆でボロボロにして、ストレス解消してやるゼ!!」
「いいや、お前らはここで死ぬ」
俺は丈夫そうな木の枝を握ると
俺はゆっくりと立ち上がった。
これで充分だ。
「そんな棒っきれでどうすんだよォ!!」
オークは棍棒で勢いよく俺に叩きつけると、俺はその一撃を避けその腕に乗る。
「何ィィ!?」
俺はオークの腕をよじ登ると、俺はオークの胸に木の枝を突き刺した。
「グヴォ……」
オークは少し吐血する…しかし平気そうだった。
「ククク……心臓を外してるぜ……てめぇの枝は骨までトドいてるけど、オレサマはギガントオークだ!!骨には傷ひとつ与えらレネぇ!」
「そう」
「?」
オレは潜り込む。どこに?
「?…あいつはどこだァ!!」
オークの体内に。
きっとオークはキョロキョロと周りを見渡しているのだろう。
体内に異物が入ったことに気づくまでは。
「ン…」
「ンン…!?」
ズボズボズボ。
なんだ。内部は随分もろいじゃないか。
俺はオークの首を掴んだ。
それも内部から。
「せぇの!!!」
そして俺はそれを地面から根菜を引っこぬくように、思いっきり力を入れた。
ズボボボボボッ
その瞬間。
目の前のオークは頭と背骨だけになっていたのだ。
気づくと周りには大量の内臓と血が飛び散っている。
「ハ?」
視界がぐるっと一回転。
オレはオークの首の骨を逆手に持って、背骨で戦うことを選んだ。
「マ…マテ!?ドウイウコトダ!?オレノカラダハドコヘイッタ!!?」
「捌いた」
「ハ!?」
「ミオとお酒を飲んだとき、ヤキザカナってものを食べさせてもらったんだ。そこではね、魚の頭を丁寧に剥がすと、骨と身が綺麗にはがれたんだ。」
それをした。
「バ…バカなぁ!!そんな器用なマネがぁ!!」
俺は【技巧祈願】を5枚持っている。
器用さが上がると言っていた御守りだ。
この御守りの効果は想像以上で相手の身体の脆い部分が自然と理解できるようになったのである。
「胸を抉って、オレはその中に手を突っ込んだ。そして頸の骨を逆手で掴むと思いっきり引っ張ったんだ。そしたら丈夫な骨に耐えられなくて、身が綺麗に剥がれたってことだ。ちなみに腕と足の関節は外しておいた。この背骨だけで戦うよ。肋骨とか骨盤とかついてて邪魔だけど」
「そんなバカナァアアアア!!!」
「皆を逃した理由は2つ、1つは安全な場所に逃したかったから。……彼女達を俺の攻撃から、もうひとつはこの恐ろしい惨状を見せたくなかったからだ」
「…でも、死体はこの森が隠してくれるんだろう?」
「ふっざケンナハ…ハハハハ!」
「さぁ終わりにしよう」
俺は剣に見立てた背骨を振り回す。
複雑な形の背骨を突起が森の全てを切り刻む。
森がまるで巨大な打楽器になったかのように、大きな音を奏でる。
ひっかく。
抉る。
むしり取る。
骨にオークの肉が絡みつく。
ただそれを繰り返す。
刻め。
刻め!
刻め!!!
他のオークも骨に刻まれて絶命する。蛾も。木も。全て。全て切り刻む!!
・
・
・
気づけば、周りはあたかも巨大な猫が暴れたかのように、ひっかき傷だらけになっていた。
なのに…さすが丈夫な骨だ全く壊れる気配がない!
これはすごく良い武器の素材になるのでは!?
すごい!これは新しい武器として名を馳せるかもしれない!
この武器を【生首サーベル】と名付けよう!!
俺は周りの全ての魔物を狩り尽くしたのだ。
ハァハァハァ……
俺は森に転がる死屍累々を見て。少しだけ冷静になった。
「………」
「趣味悪っ……!」
俺はギガントオークの首をポイっと捨てた。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
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