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23. VS十選騎士その②

 俺とミオはファルマン領の客室で夜を明かした。

 

 「なんか…今日騒がしくないか?」



 朝食のために通った、ファルマン家騎士団訓練所では【零騎士】の噂で持ちきりだった。

 客室に戻った俺はミオと話していた。


 「リュックくんの噂ばっかりだ、すごい……」


 「キューンのおかげだよ。俺に剣術を叩き込んでくれた、これからもっと身体に覚えさせないと実戦でとっさに出ないだろうね」

 

 「…そうだあの、リュックくん、新しい御守り作ってみたの」


 ミオは急に改まってベッドの上で正座をしている。

 「え…!新作!?」

 「ほら」


 【病気平癒(びょうきへいゆ)祈願(きがん)】:A級の魔物から生成された御守り。

  ランクB。重量20。病気をかかりにくくしたり、症状を和らげる効力を持つ。


 「ありがとう…あれ?病気平癒って…俺健康だけど」


 「あれそうだっけ? リュックくんは女の子を見たら、股間が膨らんじゃう悪い病気にかかってるよね?」

 

 ミオはジト目でこちらを見つめている。明らかに何かしらの皮肉だった。


「……ないじゃん」


 ん?


 ミオは独り言を呟いたが、申し訳ないことに俺は聞き取ってしまった。

 大事な人なんだから健康でいて欲しいって素直に言えるわけないじゃん、と。


 俺はミオの頭を撫でて、ありがとうと言った。


 「ミオの御守りは絶品だ、病気に罹ったりするもんか」


 「もう…むやみに撫でない」



 ミオはそういいつつ目を瞑って俺のなでなでを堪能していた。

 


 ・

 ・

 ・


 もファルマン領の闘技場に訪れた。

 今日も【十選騎士(じゅっせんきし)】との戦いが待ち受けていた。闘技場に着いたとき、俺は異変に気づく。会場の熱気は異常だった。


 「きたぞー!!【零騎士】だぁ!!」

 

 「てめぇどこの流派だ!観念して教えろー!」


 「今まで通り倒せると思うな!」


 ファルマン騎士団の誇りにかけて負けるものかと、領内から騎士が押し寄せている。



 カンと目の前の男は鉄の靴をわざとらしく鳴らす。


 「すまないね…若い騎士達は異分子と反発してしまうのだ」


 ――【十選騎士】序列第7位、鮮血のアキレス……。

 甲冑は青色で落ち着いた印象を与える。

 お互いの持ち場につくと、戦いはすぐに始まった。


 俺は昨日の通りブロードソードを構えると、相手は剣ではなく弓を構えた。

 「どう来る!?」

 相手は弦を引く。


 <<ユニークスキル発動!!【必ちゅ…


 俺はアキレスのスキルが発動する前に顔を右手で掴んだ。

 

「昨日より……速ッ」


 そして思いっきり地面に叩きつけた。

 アキレスの頭はメキっと強く地面にめり込むと、パッタリと動かなくなってしまった。


 「勝負アリ!!」

 「は…はええ!やっぱり【俊敏(しゅんびん)】持ちじゃねえか!?」

 「あの距離を詰めれるのは絶対スピード系のスキルがあるハズだ!!」



 会場は歓声と阿鼻叫喚の声で溢れかえった。

 「危なかった…ミオに【俊敏祈願(しゅんびんきがん)】を追加で作ってもらってなかったらどうなっていたことやら」

 

 今日の俺のバッグの中身は


 【攻撃祈願(こうげききがん)】×4

 【俊敏祈願(しゅんびんきがん)】×8

 【必中祈願(ひっちゅうきがん)】×2

 【病気平癒(びょうきへいゆ)祈願(きがん)】×1の俊足構成になっていた。


 ミオの新作の効果は実感できないけど、力はどんどん湧いてくるそんな頼もしさがある。

 ところで、なるほど相手のユニークスキルは攻撃を必ず当てる【必中】だった。

 ならば防御面を無視することはできないぞ。



 ・

 ・

 ・


 そこから俺は快勝が続く。

 【序列第6位:シャディア戦】

 ユニークスキル【影縫い】が成功するも、先に投げた剣が相手に当たり勝利。



 【序列第5位:ベグー戦】

 ユニークスキル【氷結】。地面を凍らされて足元がおぼつかなかったが、足元の氷を急いで処理して足場を安定させて、剣を相手に当てて勝利。



 【序列第4位:ローウェン戦】

 ユニークスキル【バーサーク】。スキルによって上げられた攻撃力は非常に驚異的だった。彼の得意技の居合も厄介だったので、【バーサーク】の効果が切れるまで時間をなんとか稼ぎ、お互い疲れ切ったところでなんとか俺の投げた剣があたり辛勝。



 【序列第2・3位:ルルン&ロロン戦】

 なぜか二人で一人だと主張し勝負に参加してきた。ここの力は5位のベグーよりも弱く感じたので、各個撃破する作戦に出て苦戦はしなかった。ユニークスキルは不明。




「すげえ!【十選騎士】を10位から2位までやっつけちまったぞ!」

「残りは1位だけじゃねえか!誰かアイツを倒してくれぇ!」



 俺は騎士たちに紛れて観戦する領主のリリカブラを見つけた。ローブを被って姿をくらましているつもりのようだ。

 目が会うと彼はどこかで姿を隠してしまった。


  


  ◆


 【Another side:ミオ】

 リュックくんが序列第2位を倒したニュースを聞いたのは館の廊下の使用人の噂話だ。本当に館内ではリュックくんの話題で持ちきりになっていた。


 私はまるで自分まで偉くなったような気持ちになる。胸から……胸から何かが溢れ出しそう!


 こんな気持ちになったことは生まれて一度もなかった。


 私は御守りの素材を工面してくれたキューンを探していたが見当たらない。お礼を言おうとしたのだけれど。

 

 私が探し回り、謁見の間の前を通ったとき…不穏な言葉をききとった。



 「なぜですお父様!なぜ私を騎士にしていただけないのですか!?」


 リュックくんの次の対戦相手……クロエの声だ。


 私は興味を示してしまって耳を立てていた。

 きっとこれは領主との会話だろう。


 「諦めるのじゃ…お前にあの男には勝てん…ファルマン家の者は、どこの流派も会得しておらん部外者に対し、決して敗北してはならぬ、ましてやお前のスキルでは…決闘はワシが取りやめにする、うまく誤魔化してやろう、お前の評価は決して傷つけない。ワシが守ってやる」



 「そんな!この決闘はお父様が組んだものじゃありませんか!我は世間の評価を気にしているわけじゃない…ただ騎士の誉れを!」


 「クロエ……アリシアのように強い子に産んであげられなくて…すまなかった……」



 中からはもう何も聞こえてこなかった。私はもやもやとした気持ちを抱えることになった。



  ◆


 【Main side:リュック】

 残りは【十選騎士】序列第1位のみ。その騎士を倒せば、クロエと戦う準備が整う。

第1位が入場する。会場は湧く。


 「おい…第1位だぞ!」

 「生で戦いを見るだなんて初めてだ」


 カンカンと足音が鳴り響く。

 一体…どんな奴なんだ。


 「……!」

 

 俺は入場した少女の姿に驚いた。

 彼女は騎士の甲冑を最小限に纏い、かわいらしいメイド服姿が下から見え隠れしていた。


 「…なんだって!」

 なんと入場してきたのはキューンだったのだ。


 「見事でしたリュック様。それでは僭越ながら私如きが相手させていただきます!」


 言葉は弱気だったが、彼女の瞳からはほとばしる闘志を感じた。


「面白かった!」

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― 新着の感想 ―
◯◯を持っていないと力が出せないスキル、という事なら仕方ないね まあ、実際の描写見ないと分からんけど……というかポケットとか懐とかあちこちに持て!
[気になる点] 荷物持ちのバッグは亜空間的なスペースに繋がっており、実際にバッグに入ってるわけでは無い。 という説明があったように思います。 「所持するアイテムの取り出し口」でしかないのです。 とい…
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