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22. 一方、その頃レオンは…⑦【追放パーティ視点】

【Another View: レオン】


 ここは薄暗い鑑定士の館。

 鑑定士の館で俺様はこんなガキの発言を聞くハメになった。


 「ハッキリ言うよ、アンタは3年前から……全然強くなってない、間違ってもSランクの実力なんて備わってない」


 「……やっぱそうかよ」


 そんな気はしていた…。


 「……【大鑑定(だいかんてい)】は現状だけじゃなくて、過去のステータスも把握できる、アンタのステータスは微昇……ちゃんと自分より強い敵と戦ってる?修行はきちんとしてる?」


 訓練なんてここ数年していない。だって何もしなくても面白いくらい強くなっていったからだ。


 「悪いけど……努力が全然足りてない」


 納得がいかない。


 「お…おかしいだろうが…俺様は…本当にSランクの冒険を……したんだぞ?」


 「ねぇ…隠さずに教えてほしいの」



 「あなた達には……もうひとり旅を共にしたメンバーはいなかった?」


 俺様は汗が止まらなかった。


 リュック。


 またリュックかよ。


 でもなぜ。

 なぜそんな質問をするんだ!?


 「……他に強い人と旅をするとね、高いレベルのクエストを受けても、実戦経験が少なかったり、ステータスが上がらなかったりするの……ねぇいなかった?」


 ロッテは俺様の顔を見つめている。


 「……いたのね、だったら十中八九、その彼に要因があると思うわ」


 沈黙が流れた。

 一分ほど立っただろうか。沈黙を破ったのは……一応俺様だった。


 「アイツは……戦いに参加はしていなかった、戦ってるのは常に俺様だった…アイツは関係ねぇ…」


 そうだ、そうだ…リュックは関係ない。

 俺様は少し胸を撫で下ろした。

 しかし…。


 「本当にそうだと言い切れる?」


 「なんだと…?」


 「一見戦闘に参加してなくても、アイテムの使い所が絶妙だったり、実は能力底上げの術を使ってくれてたり、さりげなくフォーメーションを気遣ったりしてくれたり……そういうことがなかったって言い切れるのかなアンタらは」


 「アイツは本当に何もしてねぇ!!」

 

 俺様は声を荒げてしまった。



 「アイツはただの【荷物持ち】だ……アイテムをただ持つだけの雑用だ……」

 

 「…【荷物持ち】?」


 女は聞き返すと、考え込んだ。

 そしてこう言った。


 「……もしかしたら【亀の祝福】でアンタらは強化されてたのかもしれないわね」


 「【亀の祝福】……」



 ギルド長も言っていた。女によると、荷物を持てば持つほど、仲間の能力を強化されるスキル。というものだ。



 「……アンタ、その子と仲直りした方がいいんじゃない?」


 「仲直りぃ?ガキのケンカじゃねえ、俺たちはアイツが役立たずだったから別れたんだよ!!」


 俺様は机を叩く。


 「役立たずはどっちなのよ!」


 今度は女が叫んだ

 ……。

 俺様はこのうずまく感情をどうも処理できずにいた。


 

 「アイツ……俺らにこのスキルがあることを黙ってたんだ……」


 「そうとも限らないわよ、無自覚にスキルを発動することもある」


 確かに俺様はリュックに一切の鑑定を受けさせなかった。

 金がかかるから。

 いや、違う。

 雑用のリュックが下手に戦闘向けのスキルを覚えて、戦闘に参加したいとか言い出さないようにするために。


 「いや、リュックはこの強いスキルを持ってて、俺たちにずっと隠してたんだ!!こうやって…俺らを困らせるために!!性格の悪いやつだぜ!!畜生がよ!!」


 「人のせいにするんじゃないわよ!!これはアンタ達の素行の悪さと性格の悪さが生んだことなのよ!!」


 「うるせぇ!女!」


 俺様は女に剣を突きつけた。


 「……アンタ…本当に腐ってるわね」


 「腐ってるのはお前のスキルと目だよ、ガキがよぉ」



 女は大きなため息をつくと、続けて言った。


 「……あんたの目を見たらわかった使えないからってその子を追放したのね」

 

 「…!」


 女の目はもう冷めきっていた。


 「これは不幸な事故じゃない、そのリュックって子のいじわるでもない、アンタ達が全然状況を見えてなかったせいなの」


 「周りが見えてない、ちゃんと鑑定を受けさせてない、チームとしての体制の不備……実力以上に足りてないものが多すぎる」


 「うるせぇ!」


 俺様は、帰り際に、照明用のろうそくを地面に叩きつけて、館から出た。

 そして走った。

 走った。


 あんな恥を晒して俺は泣き叫びたくなった。

 なんでこんなみじめな気持ちにならなきゃいけねぇんだ。

 俺は英雄になる男なんだ!


 Sランクの依頼もこなした、それ相応のコネクションも構築した。

 王都の知り合いにも、冒険者ギルドの友人にも、家族にも

 絶対に英雄になってやるって言ってしまった!


 なのに実はDランクの強さしかないって…どうやって説明するんだよ!!

 恥を晒させやがって!!

 俺は明日からどうするんだよ!


 リュック…!

 リュックリュック!!!

 リュック許せねぇ!!


 俺を気持ち良くさせて……持ち上げるだけ持ち上げたところで俺を手放しやがった!!

 そもそも【強欲者の大包み】を取りにいこうと言ったとき、アイツは抵抗しなかった!

そうだ!

 それはアイツは追放されるチャンスを待っていたからだ!!

 

 リュック…なんて性格の悪いクズ野郎だ……。

 絶対……絶対……絶対!!


 八つ裂きにしてやる!!

 

 俺様は探す宛もなく、ただただ叫びながらハーゼルゾネットを駆けていった。

「面白かった!」

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