21. 一方、その頃レオンは…⑥ 【追放パーティ視点】
【Another View:レオン】
俺様は冒険者ギルドの前でうずくまっていた。
俺様が強かったのは……リュックに備わっていた…強化スキルのおかげ…?そんな馬鹿な……俺様は信じることができなかった。
実は……俺様は……弱い……。
なんだこの感覚は、世界から……仲間がいなくなった感覚は……。
「そうだ……俺様の…仲間は!?ロレンスは?レプティルは?モルゲンは!?」
目の前で腕を組んでいたギルド長は頭をポリポリと掻いていた。
「……ウチに来たよ、全員」
俺様に一筋の希望が見えた。
「じゃ…じゃあ……俺の味方をしてくれるよな!!そいつらは」
「お前さんは、見通しが甘いんだよ!」
「ヒッ」
俺は情けない声を出してしまった。
「もう……お前さんとはしばらく旅に出たくないだとよ……人を斬ったんだ、当たり前だな」
「嘘だ……3年間も一緒だった……仲間じゃねぇか!俺様とずっと付いてくるって言ってたのに!」
「世界が自分を中心に回ってると思うのもたいがいにしろ!!お前さんは取り返しのつかないことをしたんだよ!ここまでしてまだそんなことをわからないのか!」
「ぐっ……ふざけんな……」
「レオン、お前さんのカリスマは強さによって成り立っていた、しかしその強さはお前のものではなかったのだ、だから…他の仲間からも裏切られた、まぁ……先に【獅子の眼光】を裏切ったのは、お前の方だったんだけどな」
俺様は涙をこらえるために、下を向いていた。ギルド長は俺に背を向けてドアを締めた。
俺様は絶望に打ちひしがれた。
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ハーゼルゾネット城下町の商業地区をふらふらと歩いている。
俺様が全部悪いのか……本当にそうなのか?
俺様には一つ納得しきれてないことがあった。
「今の俺様のステータスはどうなっているんだ……?」
本当に弱くなっているのか……どうしてもそれが気になった。
俺様は……鑑定してもらうことに決めた。
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鑑定士の館はこの先だ。
石造りの商店街の中に異色なテントがぽつんと建っている。
その外観は真っ黒で悪趣味にもヤギの頭蓋骨などの装飾が施されている。
「おい、鑑定を頼む」
中に見えるのは10歳ほどの女のガキ。栗色の髪は長く、大きなローブと帽子がより身体の小ささを強調している。無愛想にこちらを見ている。
「……オイ!ガキじゃねえか、店の奴を出せ!」
「…………」
「急用なんだよ、子どもが店番なら看板をしまいな」
そうすると急に子どもは目を潤ませた。
「…おにいさん達こわぁい……」
ガキが泣き出しやがった。
「オイ、弱者、守ってもらいたければ一人になってんじゃねえぞ、こっちが慌てると思ったか、俺はそういう弱者の泣き落としが嫌いなんだよ」
グスグスと泣きやがる。
俺様は今緊急事態なんだよ!
俺様はガキの顎を人差し指と親指で掴むと、下を向く顔をこちらに向けた。
「顔を見ろ!」
「ひっ」
「お前も鑑定士の娘なら、俺の本質を見抜いてみろ……俺は英雄になる器だ、怯えてんじゃねぇ」
「悪いこと……しないで…」
悪いことってなんだ?俺を加害者のように扱いやがって。
俺様は怒りが湧いてきた。
「俺様が悪者だって言うのかよ!」
そうよ。
どこからともかくそんな声が聞こえた。
親が帰ってきやがったのか?
俺は周りを見渡す。
しかしそんな人影が見えない。
俺はガキを方を見ると。先程とは別人のようにこっちの顔を睨んでいた。
「無自覚が一番タチ悪いっての」
「ヒッ」
不覚にも、情けない声を出してしまった。
ガキは右手に持っていた本を開いて、詠唱を開始する。
――――【風の爪】
その本から下級魔法が飛び込んできた。
至近距離すぎて避けることができない。
風のかまいたちが俺を目掛けて飛んでくる。
「うわ…うわぁあああああ!!!」
しかし、風は俺の目の前でつむじを巻いて、消えて行った。
俺は尻もちをついていた。
「はぁ…はぁ…はぁ」
「少しは反省した?」
何だ……こいつが……このガキがこの店の鑑定士なのか!?
「うぇ~…不意な顎クイは鳥肌たつわぁ~!」
口調が急に陽気になる。
舌を出して、吐くジェスチャーのようなことをしている。
「こんな初級魔法でビビっておいて、英雄だなんて笑わせないで」
この少女は水晶の置かれていた机の上に立って、俺様を見下していた。
その目は氷のように冷たい。
「商売やってるとね、身体が小さくて得することもあんのよ、アンタらみたいなクズを見破りやすくするとかね」
「てめぇ……俺を試したな?」
「ごめんね、相手を見破る、それが鑑定士の本質なの、人格の方はどうやらFランク冒険者のようだね、強さはいかほどかな?」
食えない女だった。
見た目は10歳ほどではあるが実年齢は25歳だそうだ。
「アタシはロッテ、良かったらアンタ達の性根もお姉さんが叩き直してあげるけど?」
「なめやがって…!!」
俺様は踵を返して、そのまま出ていこうとしたが、女は食い止めた。
「待ちなさい」
「何だ?」
「おせっかいかもしれないけど、アンタ、このままだと死ぬと思うわ」
「死ぬ…?こうやって不安を煽って金儲けしてんのかぁ?」
「そうとも取れるわね、でも今だけは…10分だけアタシの言うこと聞きなさい、ちゃんと鑑定してあげるから」
屈辱的ではあったが、俺様達は皆の希望によって女の鑑定を受けることにした。
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ロッテは大きなため息をついた。
「……悪いけど、とてもSランクの冒険者だったとは思えない」
ロッテは首を横に振った。しかし馬鹿にする様子はなく、小さな手を口に当て、考えこんでいる。
「そんなわけねぇ……俺様はSランクの依頼をついこの間までこなしていた!」
「そこは見栄を張ってるわけないと思うけど……アンタ達の今の強さは…正直Cランクにも及ばない…せいぜいDランク冒険者だと思うわ」
「D!?」
それは俺様にとって、かなり屈辱的な言葉だった。
なぜなら3年前、俺が冒険者ギルドで【獅子の眼光】を立ち上げたときのパーティーランクもDランクだったからだ。
その3年前と……同じランク…!?
「ふざけんな!!そんなワケねぇだろ!!!」
俺は激昂して、襟首を掴む。
「アンタが信じたくないなら、それでもいいんじゃない?でもね、アンタにまだ冒険者になりたいって心があるなら聞きなさい、あと、触るんな、汚らわしい」
女は俺の手を払いのける。
「……今日、アンタにとって嫌な話をすると思う、けどちゃんと聞いて」
ロッテは俺様に呼びかける。
この女は一体何を口にするのだろうか。
俺様の肩は……震えていた。
「面白かった!」
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