最初の出会い
まっちゃんは、いつもチャイム5分経ってから教室に来る。なんの癖かは知らないけど、こう、何かを待っているときってのは、じれったくなってしまう。そしてまっちゃんが来た。ガラガラッと扉を引く音にみんな敏感に反応する。どんなやつなのか早くみてみたいってとこだろう。そして、まっちゃんの紹介でやっと転校生との初対面だ。
「え〜、みんなに今日はいい知らせがあるぞ。新しい仲間を紹介したいと思う。さっじゃあ入ってきて!」
まっちゃんが扉の外のほうをみてそういった。
「はい。」
そういって転校生が入ってきた。
まず、目についたのは、やや茶色を帯びていて、つやのありそうな肩まである長い髪だった。そして次にその顔。目にすこしかかるくらいの前髪。くっきりとした、輪郭のラインが印象的だった。目は、ぱっちり系で髪と同様に瞳も茶色がかかっていた。そして、初めてみるのに、ぜんぜん違和感なくうちの学校のブレザーをまとっている。
転校生は女子だった。
男子のなかからはオーー・・・という歓声も上がる。まあ、わからなくもないな。彼女は、パッと見たところ、かなり存在感にあふれる外見をしていた。
歩いてきて教卓のまえで立ち止まり、こちらの方を見て立ち止まった。
「じゃあ、自己紹介を。」
緊張の一瞬ではないだろうか。全員彼女の方ジッとを見ていた。
「早瀬 ミナハです。」
そう言って彼女はちょこっと頭を下げて礼をした。・・・えっもう終わり?ちょいと最初のあいさつにしちゃ、短すぎやしないか?出身地も、部活は〜です。みたいな自己データに関しては皆無だった。わかったのはただ、早瀬 ミナハという名前だけだ。しかし、我らが担任、まっちゃんはそんなことは気にしない。十分とでもいいたげな笑顔で拍手する。それにつられて俺たちもパチパチ・・・と拍手した。
「じゃあ、とりあえず・・・そうだな、遠野。」
急に名前を呼ばれた。
「はい?」
「お前の隣、今日休みだよな?」
俺のとなりは遅刻の常習犯のやつだったからわからないが、まあそれでいいだろう。
「ああ、はい。多分・・・。」
「じゃあ、早瀬、とりあえず席の準備ができるまでそこの席にいてくれ。」
「はい。」
そういって彼女がこっちの方に歩いてくる。横に来て思った。けっこうスラッとしてることもあってか背が高くみえる。
「よろしく。」
俺が気軽にそういっても、
「・・・」
何も言わず、ペコッと頭を下げてみせるだけ。早瀬 ミナハはそんな感じのやつだった。極度の恥ずかしがり屋か、ただの無口君。どちらもあまりおすすめできねえな。最初はそんな風に思っていた。まあそれが普通だろう。そして、まさか、この時からすでに世界が狂い始めていたとは気づけるはずもなかった。