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新学期

世界が終わると聞いて人は何を想像するだろうか。温暖化による海面上昇で世界沈没?核戦争勃発?それともノストラダムスの復活だろうか?まあいずれにしろみんな死んでしまうし、ならいいや、と思う人もいるのだろうか。


でもこんなことが原因ならまだましな方だろう。なんせ、急なわけでもないし、心構えというものもできる。それどころか、うまくやれば回避もできるかもしれない。よってこの世にそんなたいそれたことが起きても、まず一応問題はない、と考えてもいいんじゃないだろうか?そう思うのも無理はないだろう。


でもまってくれ、じゃあ、もしも世界が誰も気づかない間に、何の前ぶりもなく、確実に終わりへと近づいていたとき、人はどうするのだろうか。そんなことは絶対ないといいきれるだろうか?もしくは、むしろ何の恐怖もないのでそっちの方がいいという人もいるのだろうか。そんな奴には言ってやれることがある。何の恐怖もない?そんなわけあるか、逆に大慌てじゃ、ボケ。それだけは自信を持っていえる。なぜならまさに今、この瞬間、俺がそんな状態に陥ってしまっているからだ。しかもそれはどうやら最悪のパターンのようだった。


時はさかのぼって、9月1日になる。ながい休み、いや、毎日5時間の塾通いから解放されて、始業式の日だ。


まだ夏の暑さが十分なまでに残っている。朝だというのに真っ青な空の東のほう、太陽が光を阻む雲がないことを喜ぶかのように輝いている。おかげで半そでの制服だというのに額から汗がたれてくる。でも不思議と悪い気はしない。ひさしぶりの通学路。少し落ち葉があったりしているのも秋も近いんだぜ、とだれかがいっているようで好感さえ覚える。


なんてアホなことを考えている内に学校はもう、すぐ目の前に見える位置まで来ていた。

「お〜い。遠野!」

後ろから俺のことを呼ぶ声が聞こえる。立ち止まって振り向くと、同じクラスの宮川だった。一応いっておくとする。宮川は、本名、宮川 和哉。なんの縁なのか、小学のときからずっと同じクラスだ。確か最初は、宮川がシャーペンを忘れて、それで俺が貸してやって・・・とかそんなんだったと思う。それからは何かと偶然が重なってか、同じ班だったり、同じ委員になったりして仲良くなった。まあいわゆる腐れ縁とでも思ってもらえれば十分だと思う。

「なんだ、宮川か。」

「なんだとはなんだよ。よう、ひさしぶりじゃねえか。元気だったか?」

何を言ってるのか。記憶でも飛んだのか?

「3日前までずっと塾であってたじゃねえか。久しぶりといえるほどの時間が経過してるとは思えけど。」

「まあそうだが、そんなんじゃねえだろよ。」

「なにがだよ。」

「いいか、なんでもな、はじめが大事なんだよ。人間常に初心に戻ってだな、新しい気持ちで・・・」

「はいはい、OKOK。おまえがハイになってんのはわかったから、少し落ち着け。」

「別にいつもとかわんねえよ。」

つまりいつもハイだったと、とっていいのか?それからも宮川の話を時にスルーを交えつつ聞きながら、俺たちは校舎に入った。なんで一番年長の3年が一番高い階にあるのかという不満を抱えつつ、階段を必死こいて上る。

「みんなおひさ〜!」

そんな宮川のハイテンションなあいさつで俺たちは教室にはいった。

「おはよ〜、二人とも。」

「元気だった?」

とか何人かの友達はあいさつを返してくれた。いや、やっぱ塾とは違ってなんかこう、気が和らぐ。

「遠野おっはよう。元気そうじゃん?ぜんぜんあわなかったから死んでるかとおもちゃったよ!」

俺が席について鞄の中身を出していると、そいつはやってきた。1学期の頃となんら変わらないにこやかな表情でな。

「ああ、相葉か。相変わらず元気そうじゃねえか。」

「あったりまえじゃん!元気は私のトレードマークだからね。だれにも譲れないのだよ!」そう言ってはっはっは!と笑い飛ばす。相葉 瑞紀、こいつの名前だ。俺はふつうは相葉と呼んでいるが、たまにふざけて瑞紀って呼んでみたりもする。まあ、そのたびに殴られるので最近は控えるようにしている。

「な〜にふぬけけた顔してるのかな?夏休みぼけ?」

「悪かったな。これが俺のふつうだよ。」

「はっはっは!まあそういうことにしとくよ。あっそうそう。長戸はどっちがいい?」

は?どっちがいいかって?相葉はなんのことを言っているんだ?

「いきなりなんだよ、まったく文脈がなってねえぞ。」

「あっれえ、長戸君はまだ知らないのかな?」

にたり、とした笑いを浮かべて相葉がこっちをみる。嫌な目しやがるぜ。

「だから、転校生だよ、転校生!」

転校生?そいつは初耳だった。

「へ、遠野知らなかったのかよ。俺はてっきりもう知ってるのかと思ってたぜ。」

ほらほら、お前が大きな声でしゃべるんで、宮川まで来ちまったじゃねえか。

「悪かったな、知らなくて。」

俺にすればおまえらの情報の早さに驚きが隠せないところだぜ。とくに宮川。お前は俺と同じ時間に登校してきたはずだぞ。

まあ、しかしそう言われてみれば、教室がやたらとザワザワとしている。聞くに、ほとんどが、転校生の話のようだ。どこからつかんでくるのかが知りたいぜ。

「職員室で、まっちゃんが話していたのよ。」

ちなみに、まっちゃんというのは、担任の松野先生のあだ名だ。まあ、先生もまんざらでもなさそうなのでみんなそう呼んでいる。

「なんで職員室の話を相葉がしってんだよ。」

「私にわからないことはない!というのは嘘で・・・、さっき日誌を取りに行ったときに聞いたのよ。」

そういって、相葉はペロッと舌をだした。

「どんなやつかなあ、女子なら大歓迎なんだがな。」

宮川の発言に相葉はため息。

「ふ〜、宮川はあいもかわらず成長しないねえ。やれやれだ。」

「うっせえ、美少女転校生は男の願望だ!」

おいおい、そんなに豪語するな。俺までそうだと思われる。まあでも確かに、宮川ほどじゃないにしても、少しは気になる。休み明けの転校なんてよくある話だけど。

チャイムが鳴った。みんな慌てた様子で席に戻っていく。いよいよ、その転校生との対面だ。


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