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白菜は魔菜

私、長期連載はどうも苦手っぽいので、頭にある物語の一部分を切り取って、短編として出してみることにしました。なので、設定とかあまり気にせずにどうぞ。

登場人物と超絶簡略な紹介

咲夜(さや):人間/女性/高2/妖術師

とある理由で街の外からやってくる妖怪を締めたり、退治したりしている。

(たまき):人間/女性/高2/法術師

咲夜に付き添って妖怪を討伐している。というよりしすぎている。

那由多(なゆた):人間/女性/高2/一般人

咲夜と環の友人。なぜか家を拠点にされている。髪をツインテールにして(されて)いる。

ほまれ:人間且つ鬼/無性/見た目7歳くらい/妖術師

突然現れたり、消えたりとまさに神出鬼没。最近は那由多の近くに出没している。とある妖術師の成れの果ての姿の1つ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


白菜。それは人類を滅ぼしかねない魔菜だ。


咲夜「ほまれちゃん。急に何を言っているの?」

那由多「魔菜…?」

環「はふっはふっ。白菜うまっ。」


大きめの取り分け皿から生意気にもはみ出した白菜が邪気を発している!きけんだ。このままじゃこの部屋が汚染されてしまう!!


那由多「ほま。早く食べないと冷めるよ。」

咲夜「あつっ。お湯が跳ねたわ。少し鍋の火を弱めるわよ。」

環「ちょっと待って。追加の具材投入するから。」

ほまれ「ああ!たーちゃん!はくさいをいれないでよ~。」

環「何を言っているのちびのすけ。白菜のない鍋なんて鍋料理と言わないわ。」

ほまれ「そんなわけあるか~。」


なんていうことだ。友人の1人が白菜の支配下に置かれているなんて!

たーちゃんの持つザルが傾けられ生の白菜達が我先にと沸きだつお湯の中に飛び込んでいく。ああ、鍋の中から彼らの狂喜の声が聴こえてくる。ザルという檻に腐り消え去るまで封じ込められておけばいいものを!


ほまれ「ねぇー!だれかほまれのはくさいたべてーー!」

那由多「ほま。自分がよそったものはちゃんと食べな。」

ほまれ「ほまれがよそったんじゃないもんー!たーちゃんがかってにいれたんだもん。ほまれはじぶんでやりたかったのにーー!」

環「ちびのすけはちっこいから鍋に届かないでしょ?」

ほまれ「たてばとどくもん。」

環「食事中に不必要に立つなんて、お行儀が悪いわ。」

咲夜「貴女も人のこと言えないでしょ。」

環「私はやろうとすればやれるから。」

咲夜「じゃあやりなさいよ!」

那由多「…3人とも食事中に喧嘩すんなよ。」

ほまれ「は~い。」

環「別に喧嘩じゃないんだけど。」

咲夜「環、子供みたいなことを言って…。ほまれちゃん、白菜食べてあげるから、小皿をこちらに渡して。」

ほまれ「やったぁ!」

環「まったくちびのすけったら、白菜が鍋の主役なのに。」

ほまれ「しゅやくはねぎだもん!」

那由多「キノコじゃないんだ。いつもキノコキノコ言っているのに。」

咲夜「確かに!」

ほまれ「キノコがしゅやくなんてとんでもない!わきやくだからキノコはかがやくんだよ!」

咲夜「ほまれちゃん特有の理論があるのね。」


なにはともあれ、救世主サッヤーンにより、ほまれの器から邪悪なる魔菜が取り除かれた。出遅れた分、これからほまれの快進撃が始まる!いざ鍋へ突撃だぁ!


環「ほらほら危ないから。貸して。」

ほまれ「ほまっ!?ほまれのうつわがぁ~。」

環「葱と茸が好きなんだっけ?」

ほまれ「はくさいはぜったいにいれないでね!」

環「わかってる、わかってる。はいどうぞ。」

ほまれ「ありがとう………。ちっちゃいのがはいっているよ!」

環「いや、そのくらいは食べろ。」

ほまれ「やだ~。」

那由多「ほま。少しくらいは嫌いなものも食べな。」

咲夜「別に鍋ぐらい好きなもの食べていいんじゃない?私の右前に座っている奴はさっきから白菜しか食べてないし。」

環「白菜が無くなったら他のも食べるけど?」

咲夜「…。」

那由多「ていうか、ほまはなんで白菜がきらいなん?」

ほまれ「はごたえがいや~。」

那由多「はごたえ?」

ほまれ「くちのなかをじゃまするの。ほまれはむにゅむにゅしたいのに。」


ほまれはくたくたになるまで煮込まれた野菜達が好きだ。もやしはふにゃふにゃに、人参はほろほろに、大根はとろとろに。それらをまとめて口の中に入れて噛み締めた時にじゅわ~と味が口内に広がって行くのが好きなのだ。

しかし白菜という魔菜はいくら煮込もうが完全なるくたくたにならない。いつまでたってもしゃきしゃきとした歯ごたえを残す。他の具材と一緒に口の中に入れ噛み締めた時、他の具材がどれがどれなんだろうと分からなくなって1つになっているのに、白菜だけはしゃきっと『俺はここにいるぜ!』とばかりに主張をしてくる。ハーモニーを乱す奴。協調性のない奴。絶対に集団行動ができない奴。

それが白菜という魔菜である。


咲夜「す、すごい論調だったわね。」

那由多「一段と長い心の声だった。」

咲夜「白菜に対してここまで言う人初めてよ。」

環「ふむ。逆に言えば白菜は1人立つことができる逞しいヒーローな野菜ってことね。」

ほまれ「ヒーローじゃないあくだあく。」

咲夜「ああそうだ。ちょっとここらで灰汁取りするわよ。」

那由多「ん。」

ほまれ「じゃあほまれは、なべからはくさいをとりのぞくね~。」

たまき「じゃあたまきは、とりのぞかれたばいはくさいをいれるね~。」

咲夜「2人ともふざけないの。あと環は白菜だけじゃなくて他の具材も入れて。」

環「おけおけ、じゃあ牛肉入れるか。」

ほまれ「ああ、ほまれはうしよりもぶたかとりがいい~。」

環「なにいってんの。牛肉の方が旨いでしょ。」

ほまれ「ぎゅうはすきやきでしかみとめん!」

那由多「あー…あたしも鍋は牛より豚派。牛はちょっとポン酢に合わないから。」

ほまれ「だよね!だよね!」

環「残念。もう遅い。」

咲夜「ってなにそれ!?」

環「なにってステーキ肉。」

ほまれ「わっすごい!」

環「これ半額だったのよね。」

咲夜「ああ!ああ!色々言いたいけど!せめて切ってから入れなさいよ!あなた切るの好きでしょ!?」

環「生肉より火が入った肉を切る方が好きなのよ。」

咲夜「知るかあほー!」

那由多「…灰汁すご。」

ほまれ「とってもとってもでてくるよー。」

環「なんたってサーロインだから!」

咲夜「なんでよりにもよってサーロインのステーキなのよ!」

環「さっき安かったからって言ったでしょ。」

那由多「…焼いて食べたかった。」

ほまれ「ねー。でもぽんずにわさびまぜればおいしいかな?」

那由多「やってみよっか。冷蔵庫から山葵とってくる。」

ほまれ「ほまれもれいぞうこいくー!ジュースとるー!」


( 那由多ちゃんと2人でリビングを出る。後ろからは咲夜ちゃんと環ちゃんの声が聞こえた。)


咲夜「鍋の野菜が油まみれじゃない!環早く油を掬って。」

環「いいじゃない。逆にそのままの方が美味しいわよ。」

咲夜「私が嫌なの!」


(その声を聴きながらキッチンへと向かう。那由多ちゃんが少し笑って言う。)


那由多「鍋の具材に負けないくらい賑やかだね。」

ほまれ「ねー!」


( 鍋の具材のように、ほまれ達は出会った頃よりもくたくたに煮込まれて、1つの味になってきていると思う。)


ほまれ「あっ。あとみていておもったけど、なゆちゃんもぜんぜんはくさいたべてなかったよね?」

那由多「…ばれた?」


( 曲者揃いだから、どんな味になっているかわからないけどね。)


おわり。

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