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その3

その1、2からお読みくださいませ。

短編小説 20XX年 はばぱ行党パッパラパー (5回連続) その3



 そして次の参院選でまたしても、はばぱ行党は、得票数を伸ばした。次の衆院選でも、また次の参院選でも、徐々にどころか躍進し、コロナ禍が収束し、一般名称コロナは無料診療対象とはならず、ワクチン投与もPCR検査も処方薬もインフルエンザ同様、有料となった。もちろん自分番号カードと健康保険者証は紐付けされて数年も経ていたので、医療機関や保健所がいちいち報告しなくとも全国感染者数は翌日には把握されていたが、メディアも、日々の感染者数を発表することはなくなっていた。


 その頃、はばぱ行党は野党の第一党となった。コロナで大騒ぎしていたあの頃、三密だ、クラスターの発生源だと世間が見捨てた業種、世間が批判した業種、正社員がどんどんテレワークするのを穴埋めしていた派遣、パート労働者、エッセンシャルワーカーとして、感染の危険を知りながらも使命感というよりも生活費のために働いていたブルーカラーの労働者、感染が怖いし後ろめたさを感じながらも生きるために需要に応えていたピンクカラーの労働者、失業保険も出ず、各種給付金も受け取る手続きの暇さえなく、暇があっても申請に足りる書類が集められず、今まで住んでいたネットカフェや漫画喫茶、事業所の寮を追い出された者たち、一日に三食まともに食えない人、学校給食でのみ子供の腹を満たしていた片親がいたことは、私の盲点だった。いや、話には出ていた。マスメディアも捉えてはいた。ある程度は救えたと思っていた。野党だって、そこまで言ってはいなかったじゃないか。コロナが収束するまでの、彼ら彼女らの積年の恨み、辛みをすくいあげたのが、はばぱ行党だった。


世間が下劣だ下等だ下品だと蔑ろにしていた、そのくせ、利用したい時だけ利用する業種や生活者をどんどん引きつけていったはばぱ行党は、さげずまれ、差別され、罵られ、馬鹿にされ、気味悪がられ、昔年の積もる恨みを抱える人々の票を勝ち取って行った。一方我が与党は、コロナ禍収束で議員数を減らして行った。当然と言えば当然。コロナ禍下で給付や支援やその他諸々のコロナ関連対策に予算の大半を投下していたので、民の身近な生活は、表向き穏やかで健全でも、裏に回れば道は凸凹、給与は上がらず、教育費は下がらず、店舗は生き残った大手系中心。母子家庭、父子家庭、パート、バイト、派遣、非常勤が増え、バーやパブ、パチンコ店は衰弱し、ホステス、ホスト、破廉恥業系、ポルノ系、ピンク系、プー太郎、ホームレス、浮浪者、使い勝手の良い安価で便利な労働力は切り捨てられ、生活保護を申請し、申請してもなかなか受理されない人々を惹きつけるはばぱ行党。最初は澄まして高みの見物銀座衆も背に腹は替えられない。歌舞伎町系に同調した。最初ははばぱ行の業種中心だった賛同者が、流行に敏感なパンク系芸能人やスポーツ選手にも広がり、人気は高まる一方。パートの多い保母、保父、儲かると思ったのにあぶれている弁護士や病院関係者、病弱者、自由業、ぼっちゃに引っ張られてパラスポーツ系が、ブラックに引っ張られてハーフが、ホワイトが、Bに引っ張られてLGTが、ばあちゃんに引っ張られてじいちゃんがってな具合。サービス業種は元々の母体だったが、サービス残業組が加わると、一般給与所得者も引っ張られてくる。職業、収入、就業形態、いろんなことで差別されている他業種、ならぬ他行種が、ノリのいいのに引っ張られ、いけいけゴーゴー。ノリノリ、ハッピー! 祭りだわっしょい。何が悪い。かっとばせ〜! けっとばせ〜! ごぉぉぉぉぉぉる。どうせ俺たちゃ恥知らず、下品で馬鹿でパッパラパー、投げキッス、ウッフゥ〜ン♡  



繁華街を抱える、はばぱ系労働者が多く居住する大都市圏から、はばぱ行党は票を伸ばす。地方議会でもはばぱ行党の議員が増え始めた。国政では、与党は会社更生や支援要請や生活保護を受理した分だけ国庫や自治体の予算は削られ、緊縮財政。人口はさらに減り、法人もなかなか元の水準まで回復せず、テレワークで都心の地価も下がり、コロナの頃からはばぱ行系の衰退でタバコ税や酒税でも減収。マイナススパイラルに陥って、予算のばらまきもできず、直接的にも間接的にも金で民の票をまとめることはできなくなり、とうとう、次の総選挙で、逆転した。つい最近まで野党第一党だったはばぱ行党が、与党になった。


小党乱立だった野党の中には、与党になった軽いノリのはばぱ行党と組むことをよしとしない党もあるにはあったが、元々の主張と一部は同じ路線だったこともあり、つい先日まで与党だった私の属する政党は、かろうじて野党の第一党ではあったものの、落ちぶれた。落武者には影が忍び寄る。


はばぱ行党は、賢かった。非常勤公務員は公務の裏を知り尽くしているし、接客業はしゃべりが上手い、色々な社会の秘密も知っている。パチンコ業界には金がある。その上、破廉恥には免疫がある。顔や名の売れている芸能人やスポーツ選手がいる。かつての真面目一方の野党や左翼系とは一線を画していた。パンデミックは確かにルネッサンスを産み出した。海外諸国も似たような状況だった。コロナで鬱々としていた中で差別や偏見に気付かされて、あちらこちらでSNSで差別や格差解消を訴える声が、あっというまに広がる。


日本と同じ様な状況で新しい政治形態に変わっていく諸国、主義主張で戦争するなんて馬鹿馬鹿しい、みんな平和に暮らしましょ、ってなもんで。そんなことあり得ない、ってここで目くじら立てる様では喧嘩になるんです、戦争になるんです、はい、笑って、チーズ、ピース、平和でしょ。パラダイス。首相となった党首は落語家。羽織袴で外国の首脳達と、ニッコリはいピース。 


はばぱ行党は、かつて私がいた与党と同じ。大雑把で適当で、寄り合い所帯、節操がない近所付き合いに抵抗がないから、拡大できる与党になる素質があった。厳密厳格で、糞真面目に口角泡飛ばす野党ではなかった。それまでの無党派というよりも、政治無関心層を引き寄せた。無党派や浮動票ですらなかった票田。休耕田。有権者のほぼ半数に達していた、投票していなかった者達が祭りにいく様に軽いノリで投票し始めた。盤石。


楽天ブログにも記載してあります。

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