傍観者
at home
家に帰ると、いつもと雰囲気が違っていた。
???
ビニールのガサガサという音。
流しにしたたる水の音。
急いで靴を脱ぎ、キッチンに行くと、そこには母が立っていた。
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兄の葬式が粛々と執り行われたあと、
家に帰るとマンションの前に一人の少年が立っていた。
彼は私たちのことを知っている風で、私たちがマンションに入ろうとするところを呼び止めた。
彼も一緒に家に入ると、彼は出されたお茶を一口飲み、「ごめんなさい」と謝罪を口にした。
彼が兄とクラスで仲がよかったこと。
クラスで流行ってたいじめのターゲットになった彼を兄が庇って、次の日から兄がクラスでいじめられたこと。
「僕は、あいつみたいに庇えなかった。怖くて。ただいじめられてる俊一を見ていることしか出来なかった。こんなことになるなんて思わなくて。いつも俊一は大丈夫って言って笑ってたから。本当にごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」
彼は土下座をする勢いで、頭を下げていた。
半分泣いているような、泣きじゃくっているような。
鼻をすする音が聞こえると同時に、母が、彼の後頭部を蹴った。そして叫んだ。
「早く出ていって!」
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母は人一倍、兄を可愛がっていた。
真面目で頭のよかった兄。
優しくて、私みたいに親に反抗しなかった兄。
母に今、必要なのは、兄の死を受け入れること。
でも、受け入れたからと言って、何になるのか?
でも、まずは兄の死を自覚させ、社会に復帰させなければならない。
そう思った。
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「ただいま」
こちらに、背を向けたままの母にそう声をかけた。
「・・・」
「何してるの?」
「・・・」
「ご飯作ってくれるの?」
(期待した。お母さんが何か変わってくれたかもしれない。きっかけは分からない。でも元に戻ろうとしてくれているのかもと。)
お母さん、、!?