決心
「私」の感情が変化する回
決心する回
熱いですね〜
『私に出来ることは何だろう』
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父が出ていったのは、今のアパートに引っ越してから、二年くらい後の事だ。
母がこもりがちになり、食事も作らず、掃除洗濯もやらなくなった。
その代わりに父が洗濯をやった。食事は、外食や、弁当で済ませた。掃除は私が担当した。
それで回っていく、、はずだった。
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父は医者で、市の病院に勤めていた。そのお陰でお金に困ることはなかったが、夜勤の時も度々あり、その時は私が洗濯もやっていた。
父が忙しいのは分かっていたし、それでも家事をやってくれる父には感謝しかなかった。だから、私は独学で料理を学んだり、洗濯も積極的にやるようにした。
でもそんな父にもある日、限界が来た。
その日はいつにも増して、夫婦喧嘩が激しく、母が癇癪を起こしていた。
『うつ病』の症状。
そう頭では分かっていても、苛立ちはそう簡単には止められない。
「俊一はあんたのせいで死んだ」
「人殺し」「穢らわしい」
「目の前に現れるな」
そう母は父に向かって叫んだ。
私は思った。
前までの温厚な母はどこに行ったのか。
違う。母は、兄に取り憑かれた。
そして母は『狂った』のだと。
『狂った』母は私の言葉が聞こえないかのように、私が母を止めても、父への罵倒を止めなかった。
ダンッと音がした。
慌てて父の方を見ると、父は今まで私が見たことも無いような、冷たく、冷酷な目をしていた。
「もう、いい」
そう言って父は自分の部屋に帰った。
朝、起きてみると、父が作るはずの食事がなかった。
父の部屋に行くと、父はいなかった。そして、服、布団、書類。父の部屋にある物が減っていた。
(えっ、、、)
パニックではない、私は、焦った。
この家に私だけ置いていかれることに。
あれから父は帰ってこない。
私の家の駐車場に、車が帰ってくることも無い。
父に何度メールをしても、電話をしても返ってきたことはあれから1度もない。
平日の夜、帰ってくると、私の机の上に厚みのある茶封筒が置いてあることがある。
帰っては来てる、でも会おうとはしない。
生活費だけ与えればいい。それだけで私のことを放っておいていい理由になんかなるもんか。
『私に出来ることは何だろう』
私に出来ることは、この家族を立て直すことだ。
きっと今の私たち家族は、兄の望んだ家族じゃない。
兄が壊した家族なら、償いは、家族を再生することではないか。
遺族として、兄の家族として、私に出来ることはこの家族を再生することだ。
そのために、罪とは向き合う。
まずは、兄が自殺したところから向き合わなければ。
私はそう決心し、罪の中に足を踏み入れた。
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おばあちゃんが、私に変わるきっかけをくれた。
些細な彼女の一言が私たち家族再生の原点になったのだ。
部屋に入るまでに、ドアの前で、2話分使いました汗
すみません笑