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もう一度、名前をよんで。  作者: 七瀬かいり
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罪と迷い

いやぁ、戻ったはいいけど重い重い重い汗

2年ぶりだろうか。


手すりに手をかけ、下を見る。


(ああ、これだ。)


10階から見るこの景色が好きだった。

右のには駅ビル、真下には駐車場、目の前には五年前にはなかった大型商業施設。

この景色も変わったなぁと思いつつも、

懐かしさで胸がいっぱいになる。




ーーーー





目の前のおばあちゃんは、パンツのポケットに手を入れ、鍵を取り出した。


(この部屋、おばあちゃんが今住んでるのか)



改めて、部屋の前に立ち、ドアを見る。

気になる、

気になる、、

いや、違う。

でも今私の中にあるのは「恐怖」だ。

お兄ちゃんが自殺してから、すぐにこの部屋から引っ越した。


この家は、言わば、私たち家族の罪の証だから。

ここに来ると、無意識にでも頭を下げたくなる。


家族なのに、お兄ちゃんの異変に気付けなかった罪。


お兄ちゃんが死ぬのを、止められなかった罪。


お兄ちゃんは家族がまだ寝ている朝方に、一人でベランダに出て、飛び降りた。

でも一緒に住んでいるのなら止められたかも知れない。


罪悪感などでは言い表せないその感情がこの部屋に来るとどうしても湧き上がる。


家族に課せられたその罪は、精神的に、心をえぐるような罰だ。


父はその罪から、逃げた。


母はその罪を、受け入れられなかった。


私は、自分で、罪を受け入れたと思う。


だから私は辛いのだ。

逃げるにも逃げられない。受け入れてしまったこの罪を、どうしたらいいのか分からない。償うにも謝ることしか出来ない。


だから私は、兄を恨み、憎んだ。

それは、罪に言い訳をつけて逃れようとしただけなのに。



今、おばあちゃんがこの家に私を入れたら、、。



恐怖心。


今、私を襲っているのはそれ以外の何者でもない。



(引き返そうか)



そう思いながら、笑っているおばあちゃんを見る。


『私に出来ることは何だろう』


罪を目の前にし、その開かれるドアを見ながら、

私はそう考えた。


私に出来ることは、、、、、


答えは、、

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