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もう一度、名前をよんで。  作者: 七瀬かいり
4/25

空虚

今回はとてつもなく重いです汗

お母さんは、兄の死に対して、人一倍悲しみ、苦しんだ。

いや、過去形にするのは違う。今も苦しんでいる。


いや、それも違うかもしれない。


あの死から、母は家にこもりがちになった。

ご飯もあまり食べなくなった。

もともと母は専業主婦で、家にいることは多かったが、ご飯を作るために外には出ていたはずだ。


母がこもりがちになって家の中で変わったことがいくつもある。


ある日から、母はご飯を作らなくなった。

洗濯、掃除も徐々にやらなくなっていった。

温厚だった母が癇癪を起こすようになった。

私や父のことをいないものだとも言うふうに、母は、私や父と話さなくなった。


父と母が兄の学校から呼ばれて、学校に行ったあの日。

そして、父が帰ってこなくなったあの日。


母はよく、仏壇と向かい合い、兄に話しかけていた。

「俊一、俊一」

泣いているかのような声で、か細い小さな声で、

話しかけていた。


母は、兄の死を受け入れてないのではないか。


私は一回だけ、父と病院に行って、母の症状を話したことがある。


『うつ病』


そうでは無いかと医者には言われた。


違う。

違う。

違う。

私は、母を見る度こう思う。

母は、兄に取り憑かれているのだと。




ーーーー




私は、母にとってなんなのだろう。

家族にとって、なんなのだろう。


いつしか、そう思うようになった。

兄以外と話さなくなった母。

家に帰ってこなくなった父。

その時、私の家族は壊れたと実感した。





ーーーー





私はたまたまお母さんが兄に話しかけているのを聞いたことがある。


母は仏壇に向かって、確かにこう言っていた。


「俊一じゃなくて美華だったらよかったのに」


聞いた時、自分が、悲しいのか、怒っているのかすら分からなかった。ただ、何も思わず、その言葉の意味だけ理解した。


そして、私は、母のその言葉を聞いた日、こう思った。


「お兄ちゃんが死ななければこんなことにならなかった」


全部、全部、全部、兄が悪い。

そう確信した。


私の頭に後ろめたさは微塵も浮かばなかった。

次からは話もどります!

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつもは異世界系(リゼロとか)を読んでますが、初めて現代シリアス系に挑戦してみました! 挿入部はいい感じだと思います! 素人目線ですみません… これからも読みたいと思います。
2020/02/03 22:51 アクエルハルタ
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